“食の未来” が変わる可能性を秘めた研究が、広島で進んでいます。きょうのテーマは、『脱・食物アレルギー 脱・食糧危機 未来の食を変える 広島大学 “ゲノム研究” 最前線!』。河村綾奈 キャスター
「アレルギーの原因食物である卵・乳・小麦・落花生・そば・エビ・カニの7品目は、健康被害の程度や頻度を考慮して、加工食品で表示が義務付けられています。こうしたアレルギーを除去する研究が広島大学で進んでいます。ノーベル賞の技術を使った研究です」

広島大学 生物生産学部(東広島市)

卵がふ化して、ひよこが誕生しています。ここは、広島大学 生物生産学部の研究室。これらのひよこ、実はある技術が施されています。広島大学 生物生産学部 堀内浩幸 教授
「このヒヨコがメスで卵を産むようになると、卵の中で一番やっかいなアレルギーを起こすタンパク質があるんですが、そのタンパク質がない卵を産んでくれるヒヨコです」卵アレルギーを引き起こすタンパク質は複数ありますが、中でも最もやっかいなのが、「オボムコイド」というタンパク質です。加熱してもアレルギーが出るからです。堀内教授は、約10年をかけてこのタンパク質を除去する研究を続けてきました。用いられた技術は…堀内浩幸 教授
「 “ゲノム編集” という技術になります」

― ゲノムって遺伝子ですよね、それを編集? 遺伝子組み換えの食品とかありますが、遺伝子組み換えとゲノム編集は違うんですか?
「ゲノム編集は遺伝子を組み替えません。狙ったところの遺伝子を切るだけ」“遺伝子組み換え” は別の遺伝子を加えますが、“ゲノム編集” は特定のDNA配列を切断するだけで、別の遺伝子は加えません。堀内教授は、ニワトリの生殖細胞をゲノム編集することによって世界で初めてアレルギーを起こすタンパク質オボムコイドのノックアウトに成功したのです。堀内浩幸 教授
「成分分析を進めていて、まだ公表していませんが、ざっくり言うと、(ゲノム編集しても成分は)何も変わりません。(通常の卵は)クッキーにしたり、加工食品、練り物に入れたりとかでもアレルギーが出ちゃうんですよ。しかし、われわれが作った卵の安全性がきっちりと確認されれば、ほぼ卵アレルギーの人は全部、食べられるようになる」今年度、安全性の臨床試験を実施し、2年後の大阪万博で「未来の食」として発表。その後、商品化につなげたい考えです。商品化されれば、“世界初のアレルギーのない卵” になります。広島大学 生物生産学部 堀内浩幸 教授
「医薬品などでも卵はよく使われている。カゼ薬の注意書きには卵アレルギーの人は気をつけてくださいと書いてある。それから、季節性のインフルエンザワクチンも打てない人がいる。そういう人にもこの(ゲノム編集した)卵が利用できないか」広島大学のゲノム研究は、卵だけではありません。

広島大学 ゲノム編集イノベーションセンター

河村綾奈 キャスター
「ゲノムを研究するための拠点が、こちら広島大学のイノベーションプラザに集まっているということです」4年前に設立された広島大学 ゲノム編集イノーベーションセンター。約20人の研究者の中心にいるのが、ゲノム編集学会も立ち上げた第一人者・山本卓 教授です。広島大学 ゲノム編集イノベーションセンター 山本卓 センター長
「ゲノム編集とは、わかりやすく言うと、自然に起きる変化を効率よく生み出すことができる技術です。いい性質を自然の変化と同じような形で起こすことができるバイオテクノロジーなので、研究者にとってみると、ゲノム編集が2020年にノーベル賞を受賞したんですけど、当たり前」ノーベル賞を受賞したアメリカの研究者のゲノム編集技術は、広島大学でも活用されています。山本卓 センター長
「これは、食糧問題を考えたときには必ず利用しなくてはいけない技術になると思っています。例えば、食品廃棄の問題を考えると、腐りにくいトマトを作るとか、ジャガイモも芽が出ると食中毒になるが、その毒が作られないようなジャガイモも開発されています」こうした研究をさらに進めていくために先月、導入されたのが、ゲノム解析の最新の実験装置です。西日本では初めての稼働となります。広島大学 総合生命科学研究科 坊農秀雅 特任教授
― こちらではどういった研究を?
「このような機械でDNAの配列を読む(=ゲノム解析)ということをしています」さまざまな遺伝情報を調べる中におなじみの食品もありました。坊農秀雅 特任教授
「われわれが一番、共同研究をしているのは、『ゆかり』ですね」― ゆかり、ふりかけですか? ゆかりをゲノム解析したということですか?
「そういうことです(三島食品から依頼を受けて解析)。こういうデータに…」

― ゆかりの赤シソのゲノムですか?
「ゲノムです」― (映画の)『マトリックス』みたい。
「ふりかけの中は『赤シソ』なんですが、その赤シソを変えて、よりおいしいゆかりが出るように、健康になるというものを設計していきたいというものを今、始めています」

広島大学発ベンチャー企業「プラチナバイオ」

広島大学では、ゲノム研究をビジネスにつなげるため、大学発のベンチャー企業も立ち上げました。広島大学発ベンチャー企業「プラチナバイオ」 奥原啓輔 CEO
「2025年の大阪関西万博っていうのが、日本の技術を世界に見せるという場になるし、世界中の人にどんどん問いかけていくという場にしたいと思います。広島にいるということが大事だと思っていて、研究成果を目指す研究者たちが集まっているというのが、事業するうえでの競争力の源泉になっているのは間違いないので、広島から世界にビジネスを打って出ることができると思う」広島大学発、世界へ…。研究者らの思いは、日に日に高まっています。― 今回は食の面から伝えましたが、広島大学のゲノム研究は自動車メーカー「マツダ」と組んだバイオ燃料の開発や医療分野での研究にも及んでいます。広島から世界への挑戦にこれからも期待したいと思います。

詳細は NEWS DIG でも!↓
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rcc/441374

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