10 – 浅沼稲次郎暗殺事件 – 1960

きみは森のなかの一人狼みたいに、
だんだんファナティックに、
過激になって行くようだ、
きみは独りぽっちで
自分のなかの気圧をあげている、
きみの躰のなかに
永久運動の発電機と充電体とをしまいこんでいて、
きみはつねに自分の内部の電圧をあげるばかりだ、
そしてきみは自分をゴム布でくるんで
外部から絶縁しているから、
電圧は無限にあがるばかりだ。
きみはほんとうに、
もの凄いエネルギイで
月にむかって跳ぼうと身がまえる一人狼だ

「政治少年死す」(セブンティーン第二部)
 大江健三郎

WACOCA: People, Life, Style.

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