スタンランの代表作《シャ・ノワールの巡業》(1896年、写真手前)と歌川国芳の浮世絵(いずれも中村大地コレクション蔵)=10月16日、東京都港区の荏原 畠山美術館(櫟原千寿帆撮影)
19世紀末のパリで活躍した画家テオフィル=アレクサンドル・スタンラン(1859~1923年)の作品を中心に、同時代の西洋の版画や日本の浮世絵など約100点を紹介する展覧会「スタンランと猫のジャポニスム―マネからシャ・ノワール(黒猫)、アール・ヌーヴォーの時代へ」が、東京都港区の荏原畠山美術館で開催中だ。スタンランが繰り返し描いたネコを軸に、日本と西洋美術が交差し発展した新たな大衆芸術の世界が見えてくる。
スタンランが手掛けた、日本を題材とするバレエ「夢」の公演ポスター(1890年・中村大地コレクション蔵、写真右)=10月16日、東京都港区の荏原 畠山美術館(櫟原千寿帆撮影)
浮世絵などの日本美術への関心から西洋で興った「ジャポニスム」と、その影響を受けた19世紀末の芸術様式「アール・ヌーヴォー」のポスター芸術に焦点を当てる本展。監修した同館の岡部昌幸館長は、「スタンランはジャポニスムやアール・ヌーヴォーを具現化する一人だが、展覧会ではあまり紹介されず盲点だった。中でも彼の描いたネコは鍵を握る存在」と話す。
ミルクをねだるネコたちが愛らしいスタンランの「ヴァンジャンヌの牛乳」宣伝ポスター(1894年・中村大地コレクション蔵、写真中央)。少女のモデルは彼の娘のコレット=10月16日、東京都港区の荏原 畠山美術館(櫟原千寿帆撮影)
パリ・モンマルトルのキャバレー「シャ・ノワール(黒猫)」のために制作されたポスター《シャ・ノワールの巡業》は、スタンランの代表作。シンプルな輪郭と色彩で描かれた堂々と胸を張る黒猫が印象的だ。西洋では黒猫が魔女の化身として長らくタブー視されてきたが、本作では「赤い光輪を背負った孤高の黒猫に、権威におもねることなく生きる姿、芸術の自由や反戦、ヒューマニズムといった思想が重ねられており、黒猫への憧れが感じられる」と岡部館長。ネコの生態にも通じた巧みな描写だという。
スタンランにも影響を与えたエドゥアール・マネの《猫のランデブー》(1868年・中村大地コレクション蔵)=10月16日、東京都港区の荏原 畠山美術館(櫟原千寿帆撮影)
本作の隣には江戸後期の浮世絵師・歌川国芳が描くネコが並び、東西の「愛猫家」が競演する。また近代芸術を革新した画家エドゥアール・マネによるネコの版画は、形の大胆な簡略化に浮世絵の影響が見られ、スタンランのネコの源流として紹介される。
ネコの絵の先駆者で「猫のラファエロ」と呼ばれたゴットフリート・ミントの《家猫》(1824年、写真手前)=10月16日、東京都港区の荏原 畠山美術館(櫟原千寿帆撮影)
12月13日まで。
(櫟原千寿帆)
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