「ペットの保護活動は心身ともに負担をかけます。多頭飼育崩壊の現場、衰弱した動物などを目の当たりにして、心が傷つくことも多いです。そういう負担を家族が理解しない場合、家庭の中で亀裂が入ることもあります」こう語るのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。

山村さん連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにしていったのかも含め、さまざまな事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。

今回山村さんのところに相談に来たのは、39歳で大手会社に勤務する健太郎さん(仮名)だ。「妻(33歳)が夜中に出かける。保護猫活動をしているのだが、浮気もしていると思う。調べてほしい」と相談に訪れた。

33歳と28歳で結婚

健太郎さんと妻が出会ったのは6年前。妻は健太郎さんの通う歯科クリニックで衛生士をしており、健太郎さんの周囲にもファンが多かったとか。アプローチを続けている中コロナ禍の自粛期間中に急速に距離を縮め、交際半年でプロポーズ。健太郎さんが33歳、妻が28歳のときに結婚します。以降、旅行や友人との交流、趣味のテニスを楽しむなど、充実した結婚生活を送っていました。

「35歳までに子供を作ろう」という計画に従って妊活を始め、妻は妊娠します。しかし半年前、妊娠6週目で流産してしまいます。これを境に夫婦関係は一変しました。落胆して悲しむ妻に対し、「人生は常に前に向くべきだ」と考える健太郎さんは、流産を「自然淘汰」と割り切り「また次がある」などと声をかけます。しかし、このころから妻から拒否されるようになりました。

そんなある日、妻は近所で衰弱した子猫を発見し、動物病院へ駆け込みます。妻は熱心に看病し、猫は回復し、保護猫活動をしている個人を経て、里親の下へいきました。この猫を飼いたいと熱望しましたが、動物嫌いの健太郎さんは大反対。その後妻は保護猫活動を手伝うようになります。そして3ヵ月前、長年勤めた歯科クリニックを退職してバイト勤務に切り替え、保護活動と両立させるようになりました。

しかし、猫の保護活動は過酷です。一方で妻はどんどん綺麗になり、夜中に出かけたり誰かと通話したりする様子から、健太郎さんは浮気を疑い始めます。自身も妻の流産直後に元彼女と浮気していた健太郎さんは、「浮気はおあいこ」といい、世間体や将来の妊活のために離婚は拒否。「相手と別れさせたい」という目的で、調査に入りました。

保護猫活動の日に調査開始

妻が歯科医院に出勤する日は動きがないとのことだったので、それ以外の平日に調査に入りました。23区郊外にある、大きなファミリータイプの自宅マンション前で張り込みをスタートします。このマンションは健太郎さんが結婚と同時に、実家の援助を受け購入したもので、2人分の子供部屋が確保できる広さがあるそうです。健太郎さんの名義の物件で、住宅ローンは健太郎さんが払っています。

「男が家を買ってこそ一人前でしょう。妻に金や住むところで不安にさせたくないですから」とサラッと言っていました。健太郎さんは責任感もあるのでしょうが「男はこうせねば」という思いが強いのでしょう。それも悪いことではけっしてありませんが、はたからどう見られるかに縛られないといいなと感じるところもあります。

カウンセリング中から、健太郎さんが、子供を早く作りたいという思いが強いことがわかりました。「僕は長男で、下の妹や弟には子供がいる。早く家族を持ちたいんです。40歳までに父になりたいんです」と何度も言っていました。おそらく、健太郎さんは、結婚も子供を持つことも、人生のクリアすべきミッションと考えているのでしょう。

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