旅先で忘れられないのは、名所探索よりも「感動体験」ではないか。
もちろん景色のいい名所めぐりは心躍らせるものだ。
だが、日本一深い湖の真ん中に立ったり、秋田犬と一緒に山をのぼったり、青いアジサイが咲き乱れる参道を歩き、夜はなまはげが奏でる太鼓の音に酔いしれる……。

秋田には、ただ見るだけでは終わらない、感動の体験がたくさんあった。
前編「ピエール・エルメが惚れ込んだ酒蔵も…秋田の食が『わざわざ行く価値あり』と言われる理由」をよむ。
エンターテインメント性抜群の絶景「あじさい寺」
男鹿の新たな見どころとして注目されているのが、北浦の雲昌寺(うんしょうじ)。
現在は「あじさい寺」とも呼ばれ、2000株以上もあるあじさいが咲き誇るが、これは20年前にたった1株を、副住職 古仲宗雲さんが挿し木によって増やしてきたもの。2017年には絶景プロデューサーの詩歩(しほ)氏の「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」第1位にも選ばれるほど注目の景色だ。ただし、あじさいの庭だけ見て帰るのでは、もったいない。

眺めがよく、通る風も気持ちのいい本殿では、ドライフラワーで作った立体天井絵が飾られ、ライトアップされている。斜め下に設置された盥の水面をそっとのぞきこむと、その絵が幻想のように浮かび上がる。心が落ち着いていないと、絵が乱れるのだそう。
筆者の心はいかに……。


ほかにも、ひとつひとつの絵柄が異なる唯一無二の「お守り」や、境内のどこかに隠れた7つのハートの石探し(全部見つけると願いが成就する《かもしれない》)など、参拝だけでは終わらせない、宗雲さんの遊び心とエンタメ性が具象化した寺なのだ。

温かく穏やか、それでいてどこかユーモラスな宗雲さんは、寺に祭られているお地蔵さんに似てはいないだろうか。


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