「人生二度目のインスタライブで浮かれているのはどこのどいつだ~い。あたしだよっ」

こんなお決まりの言葉から、にしおかすみこさんがインスタライブを始めたのは7月10日のこと。人生二度目でインスタライブをしたのは以下の理由だった。

「わかっていらっしゃると思いますが、結婚とかそういう方面ではありませんで、『ポンコツ一家』という連載をFRaUwebでやってるんですが、それをまとめた書籍が出ておりまして。『ポンコツ一家』『ポンコツ一家2年目』が発売されているんです。そして9月16日に3冊目、『ポンコツ一家 最後の2年』が出ます!」

2026年9月16日発売の『ポンコツ一家 最後の2年』のカバーは現在絶賛作成中! 鈴木久美さんデザイン、西淑さん装画でこの写真は西淑さんのイラストを用いた仮書影となります。2023年1月に発売となった1冊目2024年9月に刊行された2冊目

そもそも「ポンコツ一家」とは、認知症の母、ダウン症の姉、酔っぱらいの父と暮らし始めた2020年からの生活を、2021年9月からつづっている連載だ。コロナ禍に実家に久々に帰ったところ、家がゴミ屋敷のようになっており、大黒柱である母の様子が明らかにおかしくなっていた。認知症だった。

「最後の2年」と題されたのは理由がある。

「2025年の11月に母が亡くなりまして。老衰だったんですけれど」

7月10日のインスタライブより

1年前のことをつづっている連載でも、不在となった中では、天国に旅立ったことがなかったかのように書くことはできない。本書は執筆時も、執筆の内容も「母が存命だったかけがえのない日々」の最後の記録なのだ。しかし書籍を作っている今はその事実がある。つまり母を亡くしたにしおかさんと、存命中だったときのにしおかさんの共著でもあるのだ。

2025年12月の連載からは、にしおかさんは「母の不在」とともに、母が元気だった1年前について執筆している。今回の「ポンコツ一家」は2025年7月のこと。母が憤っていることとは……。

憤った「ビッグすぎる相手」

母を振り返ると、何だかしょっちゅう憤っていたなと思う。例えば。

2025年の7月、とある日の朝5時。

私は台所で朝食を作っていた。仕切りカーテン一枚隔てた居間から、ババアがせっせとぶつくさ罵る声が聞こえてくる。ご近所さん。かかりつけのお医者さん。姉の通う作業所――。思いつくかぎりの名前を並べて、誰彼構わず文句をつけていく。

何度も繰り返すうちに、粗悪な寿限無みたいなものができあがる。

母自身、根っこでは皆に深く感謝しているというのにだ。

それでも収まらず、今度はテレビに矛先が向く。タレント、政治家、挙げ句は「クソ! またオータニめ! 毎日毎日、朝からオータニ、オータニってうるさいんだよ! まったく! ……ええい! どこのチャンネルも! いい加減にしろ、オータニめ!」と吐き捨てる。

……オータニって、大谷さんでしょ。世界のスーパースターを?

テレビに何度も映るのはご本人のせいではない。

私は居間に顔を出し、つい口を挟む。「ねえ、あんなできた人の悪口言うなんて、もう世も末だよ。ママ、好きじゃなかったっけ?」

「あん? 好きなもんか! 隙あらばホームラン打って、いい嫁さんもらって、大金持ちで、小学校かどっかにグローブ寄付してんだろ? いい加減にしろってんだ!」

悪口が見当たらない。純度100%のやっかみだ。

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