今日は当院スタッフと1匹の猫のおはなし。
当院のスタッフでKさんという人がいます。
ずっと野良猫に餌をやりながら、その周辺を全部で300匹TNRした人物です。
TNRは、手術をしたら元の場所に戻すのが基本。
戻さなきゃいけないルールはないけど、手術した猫をどんどんお持ち帰りしていては、おうちがパンクしてしまいます。
だから元の場所に戻す。
苦肉の策ですが、現代の野良猫の数を思えば他に選択肢はありません。

マロンはそうやって、手術後元の場所に戻りました。
それから3年。
餌やりは毎日続きます。

晴れて気持ちのいい日も。

雨でずぶぬれの日も。
野良猫って、外で暮らすのが幸せなんでしょうか。
時々SNSで見かけます。
「外で自由に暮らす方がいいじゃないか。野良猫はその暮らしを謳歌している」
猫に聞かなきゃわからないので何ともです。
でも、気持ちよく日向ぼっこしている、その一瞬だけを切り取って「猫はずっと幸せだ」と勘違いしていないでしょうか。
飢えず、乾かず、快適で幸せな日が、彼らの3年とも5年ともいわれる短い一生の中で、何日あるでしょうか。
考え方は色々あるけれど、私たち猫ボラは「家の中で快適に長生きしてもらうこと」を目指したいと思っています。
元の場所に戻す、という苦肉の策を継続している中でも、そう思っています。
そして、ついにその日がやってきました。

マロンを保護する、その日です。
3年間、マロンはずっと外で待っていました。毎日餌をもらって、少し撫でてもらって、そうやって生きていた3年間でした。
スタッフKさん宅の保護頭数に空きが出るまで、長い間の順番待ちが終わった日。

マロンをケージに入れて、連れて帰ります。

マロンは保護当初、あまり水を飲みませんでした。
吹き曝しの海辺で、水分と言えば塩水が混ざっているものがおおく、もしかすると自然と自衛のために飲まないようにしていたのかもしれません。
少しずつ水を飲むようになり、そうして最後のバトン。
里親さんのおうちに行きました。

TNRは、手術をして現場に戻したら終わり、ではありません。
Kさんが3年間通い続けたように、戻した先にも物語は続いています。
餌をあげて、帰って、また来る。その繰り返しの中で、いつかバトンを渡せる日を待っている。
保護して、治療して、次の家族へ渡す。
私たちにできるのは、その橋渡しだけです。でも、その橋を渡った先に、マロンのような物語が生まれるなら、これほど誇らしいことはありません。
外で待ち続けたマロンに、順番が回ってきた日のことを、私たちはきっとずっと忘れません。
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