まるで長年のパートナーだったように
4人目のパートナー・佐久間裕子さん(仮名)とミック(「さくらの里山科」で)
そんな寂しそうにしているミックを見かねた職員が、ミックをココというワンちゃんと飼い主の橋本幸代さん(仮名、当時80歳代、女性)の部屋へ連れていきました。ミックはココと元々、仲が良く、ココの部屋に遊びに行くことが多かったので、ココと一緒なら寂しくないのではと考えたのです。職員の狙いは当たり、ミックはココと橋本さんと一緒に落ち着いて暮らすようになりました。
ところが、その1年後の昨年夏に橋本さんも亡くなってしまいました。ミックは2人目のパートナーも亡くしてしまったのです。その時ミックは、自分で新しいパートナーを選びました。自ら山崎文さん(仮名、90歳代、女性)の部屋に行き、そこで暮らし始めたのです。山崎さんのベッドに上がり、いつも寄り添うようになりました。
山崎さんは「ミックが来てくれてうれしい」と大喜びでした。見違えるように生き生きとされていました。
しかし、山崎さんも逝去されてしまいます。先月のことです。人生の最期の数か月間、大好きな犬と一緒に暮らせて幸せだったことと思います。
山崎さんが亡くなった時、同じユニット(区画)の別の部屋も空いており、そこに佐久間裕子さん(仮名、80歳代、女性)が入居することが決まっていました。そこで職員は、佐久間さん(正確には佐久間さんのご家族)に、ミックと一緒に暮らすことを提案すると、快諾してもらえました。こうして、ミックの4人目のパートナーとの暮らしが始まったのです。
犬と暮らすユニットの入居条件は、大の犬好きであることです。もちろん、佐久間さんは犬が大好きなのですが、これまで犬と暮らしたことはありませんでした。初めて犬と一緒に暮らすことになり、新鮮な喜びを感じておられるようでした。「あなた、かわいいわね~」と、いつもミックに話しかけています。ミックも常に佐久間さんに寄り添い、まるで長年パートナーだったようです。
「ここに来たら、最初からこの子が待っていてくれていたの」「初めて会ったのに、こんなに懐いてくれるなんて信じられない」「犬がこんなにもかわいいなんて」――。
佐久間さんは、毎日、笑顔で話してくださっています。佐久間さんとミック、2人の笑顔を見ることが、職員たちの大きな喜びになっています。
次々と新しいパートナーさんとすぐに仲良くなるミックを皆さんは薄情だと思いますか? 私には、大好きなパートナーさんを失うつらさを乗り越えて、けなげに頑張っているように思えます。きっと瀬川さんも、橋本さんも、山崎さんも、ミックが佐久間さんに寄り添って幸せそうにしている姿を見て、喜んでくださっているに違いありません。
【写真3枚】ミックと入居者と文福
(若山三千彦 特別養護老人ホーム「さくらの里山科」施設長)
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