2022年2月のロシアによる全面侵攻当初、混乱と残虐さが渦巻く中で多くのウクライナ人は、たとえ戦時下でも動物の面倒を見ようと決意を固めた。この姿勢は世界中の多くの人々の心を動かした。苛烈な戦争は5年目に突入したが、収束の兆しは全く見られない。

インガ・サカダ氏は、ウクライナ最大の動物保護団体の一つである「UAアニマルズ」の運営責任者を務める。同団体は、前線地域における数千頭の動物の避難、治療、保護活動に携わってきた。

「月に2回、我々の獣医師チームは最前線地域へ赴き、時には午前7時から午後10時まで休みなく働く。連れてこられたすべての動物には治療と予防接種、不妊手術を行っている」とサカダ氏は述べ、1回の獣医療活動で500~600頭もの動物を治療できることもあると付け加えた。

「避難する際に牛を連れて行けなかったという人たちがいた。飼い主から預かった手書きの手紙には、その牛の性格や、どんな風に過ごすのが好きか、何を食べるのが好きか、どれほどおとなしいかが書いてあった。話しかけてあげるととても喜ぶことなども綴(つづ)られていた」と、サカダ氏は振り返った。

リプカという名のその牛は現在、避難所で暮らしており、すでに多くのファンに愛されているとサカダ氏は付け加えた。

前線の村からUAアニマルズが救出した牛のリプカ。飼い主からは性格や好きな食べ物などの情報を記した手書きの手紙が寄せられていた/UA Animals
前線の村からUAアニマルズが救出した牛のリプカ。飼い主からは性格や好きな食べ物などの情報を記した手書きの手紙が寄せられていた/UA Animals

需要を満たそうと奮闘する中、UAアニマルズの活動には苦労が絶えないとサカダ氏は明かす。ボランティアが不足しており、保護施設の収容枠も足りない。迷子や捨てられたペットを引き取りたいという人も少ない。資金も十分ではない。

「前線地域に取り残された動物の数は膨大で、ピーク時には1日に約100件の依頼が寄せられるが、残念ながらすべてに対応することはできない」(サカダ氏)

救えなかった動物たちもいる。ウクライナ馬術連盟は昨年9月、ロシアのドローン攻撃が厩舎(きゅうしゃ)を直撃し、数頭のトップクラスの競走馬が死んだと発表した。同10月には、ハルキウの農場への攻撃が大規模な火災を引き起こし、最大1万3000頭の豚が死んでいる。そして今週、チョルノービリ(チェルノブイリ)隔離区域を管理するウクライナ政府機関の責任者は、22年に撤退したロシア軍が残した地雷が、絶滅危惧種の希少種であるプルゼワルスキー馬(モウコノウマ)を含む、同地域の野生動物を死に至らせていると警告した。

UAアニマルズのボランティアがウクライナ東部の村から避難させたミツバチの巣箱/UA Animals
UAアニマルズのボランティアがウクライナ東部の村から避難させたミツバチの巣箱/UA Animals

UAアニマルズによると、本格的な侵攻が始まって以来、避難させた動物は1万頭を超える。そこには猫や犬の他、トラ、ライオン、ラクダ、馬、牛、アライグマ、オオカミ、ロバ、ヤマアラシ、キツネザル、ヒツジ、ミツバチなどが含まれる。

ミツバチについては、解放されたばかりでまだ地雷の残るウクライナ東部の村から13個の巣箱を救出し、飼い主が避難しているリビウまで輸送することに成功した。UAアニマルズのチームは輸送中に何度も刺されたが、その苦労は報われた。ミツバチはもともとホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の生存者のもので、自身の孫に譲り渡されていた。サカダ氏によると、孫はミツバチと再会した時、涙を流したという。

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