「読むたびに涙していた物語」

Xでは28万人、インスタグラムでは15.5万のフォロワーを持つ看護師で漫画家の中山有香里さんの『天国での暮らしはどうですか』(KADOKAWA)がついに書籍化した。

Xに「天国シリーズ」として投稿されていた頃から多くのファンが待ち望んでいただけに、8月5日に出版されると、「読むたびに涙していた物語が書籍化された。手元に置いておきたかったので即買った」「最初から最後まで泣きっぱなしになっちゃうから、家でひとりで読まないとダメ」「あの子に会いたくなった」「ペットを飼っている方、飼っていた方に読んで欲しい! 下半身付随で12年間介護したあの子に会いたい」などといった感想が相次いだ。

中山さんと言えば、2022年『泣きたい夜の甘味処』で料理レシピ本大賞 in Japan コミック賞を受賞し、翌年もまた『疲れた人に夜食を届ける出前店』で、2年連続受賞を果たしており、シズル感たっぷりの料理レシピ漫画で定評がある。が、今回は動物や人間の死をテーマにしている。なぜ、このテーマで描こうと思ったのだろうか。

中山さんの過去の記事を読む。    
1話 毎日ご飯を作るって実はつらい…疲れた人が癒される「夜食レシピ」の効果    
2話 「明日会社行きたくない」日曜日の夜届いた出前は…心が癒される「夜食」のヒミツ    
3話 カップ麺でもお茶漬けの素でもいい! 「何もしたくない日」に届く出前夜食のレシピ本    
4話 「焼き芋にはバニラアイスをトッピングして」疲れた心と体に効く甘やかしの夜食屋台    
5話 「何も作りたくない」日も食べたい夜食1位は「ラーメン」でも理性の働くときはアノ定番メシ  
6話 「深夜のラーメン」は罪か…わたしたちが高カロリー夜食を求める理由 

「もともと食べ物を描くのが好きで、『泣きたい夜の甘味処』や『疲れた人に夜食を届ける出前店』シリーズを描いたのですが、その中に、妻に先立たれたおじいさんを死神が励ます話があります。「天国でどうしているかな」というおじいさんに、亡くなった奥さんが天国で楽しく暮らしている姿を見せてくれる、というものだったのですが、SNSの反響がとても大きくて。

身近な方を失くした人から、「そういう考え方もあるんですね、救われました」というメッセージをいただき、もう少し掘り下げて描いてみたいな、と思ったのが、きっかけとなっています」(中山さん)。

『天国での暮らしはどうですか』(中山有香里著/KADOKAWA)ペットの死に後悔を残す飼い主

本のあとがきでも、犬や猫などの動物たちが天国で再び暮らす姿を描いたストーリーは、これまで経験したたくさんの別れの中で、亡くなったことをどこか受け入れられず、ふとした時に「あの人たちはどこに行ってしまったのだろう」「死後の世界なんてあるのか」と思いながら、今あの人たちのいる場所が「とてもあたたかい場所でありますように」と願って描いたのだとある。

優しく、あたたかな、幸せの話なのに、多くの読者が涙を流すのは、ペットとの別れは、生前どれだけ大切にしていたとしても、何らかの後悔が残るからだろう。

FRaU web連載でもおなじみの動物行動学の高倉はるか先生によれば、飼い犬や猫を失った飼い主さんの多くは、病院で手を尽くしても「最後まで苦しい思いをさせてごめんね」「助からないのなら、もっと楽に看取ってあげればよかった」などと自分を責め、反対に急な死で亡くした時も、「気づいてあげられなくてごめんね」「もっとよく見てあげればよかった」と後悔を残すのだという。

中山さんの作品が支持される背景には、動物の命を人間と同じように悼み、ともに過ごした時間を大切に思い続ける人が、いかにたくさんいるということだろう。

著者の中山さんは現役の看護師であり、漫画家、イラストレーターと両立させている。本書は、SNSに連載されている「天国シリーズ」に書下ろし「Another Story」を加えたもので、天国での動物たちの生活が、まるで現実の続きのように描かれている。

Write A Comment

Exit mobile version