※現在、クラウドファンディング実施中のため、活動報告を転載いたします。

 

当団体は、保護犬の「譲渡会」は行いません。

 

そのかわり、ドッグトレーナーが面談し、里親希望者のライフスタイルや飼育経験を踏まえた上で、里親さんに合うと思われる保護犬を対面させ、最終的に犬が里親を選ぶ「マッチング譲渡」を行っています。

 

今回紹介するのは、「マッチング譲渡だからこそ幸せになった」そんなお話です。

 

当団体が大事にしていること、譲渡会ではなくマッチング譲渡をしている理由を感じ取っていただけたら幸いです。

 

 

アル中の飼い主から虐待。
生きてるのが奇跡なほどガリガリな体に

ビションフリーゼとシュナウザーのMIXであるタクは、アルコール依存症の飼い主のもとで、親犬と暮らしていました。

 

飼い主となる奥さんは、旦那さんが出張ばかりでいない淋しさからなのかアルコール依存症となり、2日間まるまる飲んで、2日間睡眠薬を飲んで寝る、酒を飲んでいるときは暴れて犬にも乱暴してしまう、をくり返す日々だったそうです。

 

その結果、奥さんは早くに亡くなり、その知人が、一緒に暮らしていた犬が心配になり当団体に相談し、2018年の8月に保護しました。

(最初のクラウドファンディングでもご紹介しています)

 

その中でも、一緒に暮らしていたビションフリーゼとシュナウザーとの間に生まれたタクは、保護時には恐怖心からかブルブル震えていました。

 

アバラ骨がクッキリ見えるほどやせ、栄養失調で毛もほとんど生えていない子でした。

 

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保護した時のタク骨と皮の状態で、毛もほとんどありませんでした

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後ろ脚は血管が透けて見えるほどで、ほとんど骨と皮だけの状態です

 

骨格から考えて体重が3.5キロくらいが理想なのに2キロしかなく、また、極度の貧血と、皮膚も赤く腫れています。

ガリガリの子は何頭も見て来ましたが、これだけひどい子は見たことがなく、保護後にすぐ診察してくれた、もりやま犬猫病院の淺井医院長も「よく生きていた。人間なら死んでる」と言われるような健康状態でした。

 

さらに、人の手が上に来るだけで目をつぶって震えてたり、オモチャの笛のような高い音を極度に怖がるため、飼い主が叫びながら体罰をしていたことも考えられました。

 

 

飼い主によって作られた
心の傷が大きく、安心できる場所を探す

とにかく栄養を、ということで高カロリーのフードと栄養食を与え、少しずつ体重も増え、毛並みも戻って来ましたが、それでもまだまだ健康的とは言えない状態。

 

通常、当団体では保護時に去勢・避妊手術を行いますが、タクの場合は手術ができるまでも時間がかかるくらいでしたので、ゆっくり体調をベストな状態にして行くことにしました。

 

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保護して一週間後。一時保護していたチワワと

 

タクは警戒心が強く、歩くことも躊躇するときがあります。

恐怖心に包まれた生活を送ってきたからだと思われます。

それでも、愛情を持って接し続けることで、スタッフやボランティアさんなど、相手を理解できればいつもほふく前進のようにして寄って行くようになりました。

 

ただ、外も怖がり、歩けなくなる。
飼い主がアル中でずっと家にいたということですから、散歩もロクに行っていなかったのでしょう。

 

何もかもが怖い、不安という状態で、興味はあるけれど、行きたいけど「怖い」という気持ちが強く出て、腰が抜けてしまう感じです。

 

施設での定位置は、妻の膝の上。

 

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保護して1年後。妻のひざの上で

 

妻は僕と正反対なタイプで、僕がドッグトレーナーと言うこともあるせいか元気一杯な子は私にビシッと従うのですが、心に傷を負っているような子は僕よりも妻を頼ります。

 

僕みたいな引っぱるタイプと真逆な人間のため、タクにとっては安心できるのでしょう。

 

タクは人に対しては誰でも平気というわけではなく、「相手によって」という状態が続きました。

そのため、タクは妻にベッタリで、いつも膝の上にいました。

 

 

マッチングをするものの、
「この人じゃない!」

そんなタクも保護して2年が経ち、健康状態もだいぶよくなりました。

 

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2年が経ち、少しずつ毛も揃ってきました

 

ただ、ここに来るまでの環境が環境だっただけに、里親をお願いする人は、病気治療など飼育経験がしっかりあり、犬に対して、弱い者に対しての想いの強い方にしかお願いできないなと思っていたため、ムリに里親を、という気持ちもありませんでした。

 

タクと会ってもらって、タクがダメなら譲渡しない。

 

そのため、里親希望者がやってきて、「この方たちならどうだろう?」と里親希望者さんにタクとマッチングして会ってもらったことが2組ありますが、いずれもタクは吠えて逃げていきました。

 

自分が望んでいるものががあるかないかを見ているようでした。

 

マッチングが決まらなくても、タクがそれを望むのであれば最期までここで暮らせばいい。

 

僕たちも、そう思っていました。

 

 

新たな家族と出逢い、
自分で自分の未来を切り開く

それからしばらくして、クリスマス間近の2020年12月23日。

 

タクを保護してから2年4ヶ月が経っていました。

 

里親希望者として先住トイプードルのミルクちゃんと一緒に来られたご夫婦は、亡くされた愛犬マートンとの思い出を大事にしており、不幸なワンちゃんのためになんとかしたい、という想いを強く持たれていた方でした。

 

この方たちなら、どんな子でも大丈夫と思い、別の2頭のトイプードルを紹介したのですが、里親さん的にマートンへの想いからか、マッチング即決とは至りませんでした。

 

そこで、

 

「待てよ? この方たちならひょっとして…」

 

と思い、タクと引き合わせてみることに。

 

すると、これまでの里親希望者の方には寄りもしなかったのに、タクの方から近づいていったのです!

 

タクは、この方たちであれば、自分が穏やかに、幸せにしてもらえるとわかっていたのでしょう。

 

「新しい家族が迎えに来たから行くね」と言っているようでもありました。

 

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初対面なのに撫でさせていました

 

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初対面なのに安心しきった表情です

 

里親さんも「この子であれば」と即決し、そのままDUCAを卒業して行きました。

 

「たくましく育ってほしい」と思って名づけた「タク」でしたが、たくましく育ってくれたので、里親さんは新たな名前として、神様からの贈り物という意味の「マシュー」と名づけ、新しい生活が始まりました。

 

 

そして後日、1本の動画が送られて来ました。

 

大草原の中、先住犬のミルクと一緒にタク(マシュー)が里親さんを追っかけて走っているのです!

 

あれだけ不安いっぱいだったタクが!!

 

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画像クリックで動画にジャンプします

 

ここでは常時保護犬が40頭前いるため、旅行にも連れて行けませんが、新たな居場所を見つけたマシューは、犬本来の幸せをかみしめて生活できているのでしょう。

 

 

素晴らしい生命のかけ橋ができ、理想的なあたたかい里親さんとマッチングできたことに安堵するとともに、「いいことだけど、さみしい」と妻。

 

僕たちはどの子に対しても、「ここにいたければここにいていい、できる限りの愛情をかけてあげる」としているだけに、ここ以上に幸せになれる場所があれば、それはものすごくすごいこと。

 

タクは自分の力で、幸せになれる場所を見つけたんだと思います。

 

「マッチング譲渡」は、人間の都合で不幸になった犬が、自分で幸せを見つける譲渡なのです。

 

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里親さんに密着して眠るマシュー

※本記事は転載です。
現在、2025/9/26までREADYFORにてクラウドファンディングを実施中です。
目標達成に向け、ご支援よろしくお願いいたします。

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