著者は古今東西の名文を検索できるネットサイト「Quotenik.com」を主宰する編集者で、本書は著名人の「ペット」への愛ある言葉を集めたもの。自身のペットロス経験から、回復のための指南書の必要性を感じたという。
物言わぬ友を失うのは、かなりこたえる。飼っている動物は家族であり親友で、ときに、人間以上に強い絆で結ばれているからだ。しかし、人間よりも短命なため、必然的に別れが訪れる。犬は詩人のエミリー・ディキンソンの良き話し相手であり、政治家チャーチルの側近だった。ヘレン・ケラーはもしも自分が一瞬でも眼(め)が見えるのならば愛犬を見たいと願ったという。
愛情深い毛むくじゃらの友との日々は楽しいが、その死後には大きな喪失感がやってくる。作家ジョン・スタインベックは、プードルのチャーリーをお供にアメリカ横断の旅に出た。相棒の死後、ぽっかり空いた穴は容易には埋まらない。「チャーリーはもういない。最近ようやく、夜中に彼の気配を感じることもなくなった」という言葉はリアルで、妙に心に刺さった。佐藤弥生、茂木靖枝訳。(フィルムアート社、2200円)
2025年7月11日 掲載
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