ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア軍ですが、「動きが停滞している」とも伝えられています。ロシア軍が直面する現実と、今後の見通しについて、アメリカ陸軍の元幹部に話を聞きました。(取材:3月2日)

--ロシア軍が直面している現実は?

米シンクタンクFDDシニアディレクター 元アメリカ陸軍部隊幹部
ブラッドリー・ボウマン氏:

(ロシア兵たちは)単なる軍事訓練だと聞かされていた。もし、ウクライナ外相の国連総会における演説を見ていないならば、ぜひ見ていただきたい。正直なところ、心が痛んだ。いかにロシア兵たちが、実際に起こっていることを知らされず、自分たちのリーダに騙されていたのかが分かる。

ロシア兵はとても驚いた。彼らはウクライナに行けば人々に歓迎されると聞かされていた。しかし現実は歓迎されるどころか、ウクライナの市民や子どもたちが戦車を止め、反撃を食らうことになった。この現実は多くの兵士を驚かせ、士気に影響を与えた。

我々が目にしているのは、ロシア側の問題に加え、自由な(ウクライナ)市民が自国を守っているということだ。私が歴史から学んだことは、自分たちの国を守る一般市民の力と強い意志を決して侮ってはいけないということだ。ロシアが侵攻する前にも言ったが、現在の状況がそれを示しており、長い目で見ればプーチン大統領がウクライナで失敗する理由である。

--ロシア軍の侵攻の今後は?

(プーチン大統領は)これから攻勢を強め、戦いをエスカレートさせるだろう。すでにハリコフやキエフでは、一般市民やインフラに対する攻撃が増えている。もし彼がウクライナを「わがままな従兄弟(いとこ)」としてやさしく扱うことをやめ、侵略者とみなせば、すぐに敵としてさらに強硬な手段を使い、ミサイル攻撃を増やし、市民に対しても無差別なテロ攻撃をしかけるだろう。

--「核」をちらつかせる狙いは?

テレビという公の場で、プーチン大統領は国防担当のトップに対し、核兵器抑止力部隊の特別警戒態勢を命じた。それがロシアの核兵器にとって、どのような意味を持つかは定かではないが、偶発的な発射を防ぐための安全機能を下げるということは確実である。核兵器の抑止に即座に対応するために安全機能を下げることは、明らかに悪い状況である。

この点において、私は日本人が強い声を発していかなければならないと思う。核兵器の問題に関して日本人は信頼、そして権威を持って、プーチン大統領が行っていることはおかしい、間違っていると声をあげるべきである。アメリカ人も日本人も、そして良識のある人々は、核の脅威をエスカレートさせることは受け入れられるべきものではないと、声をあげなければならないと思う。プーチン大統領は核兵器を使用することはないと思う。なぜなら、彼にとっては自分の立場を守るのが最も重要なことで、もし核攻撃を実行したのならば、彼自身どころか、彼の政権自体も無くなってしまうからだ。
(04日17:30)

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