監督/吉田 恵輔(よしだ けいすけ)
サイコな殺人犯と高校の同級生を描いた漫画原作の「ヒメアノ~ル」の監督
出演/古田新太、松坂桃李
田畑智子、寺島しのぶ
藤原 季節(ふじわら きせつ)ほか
1)娘を亡くした父親の
暴走ともいえる行動の数々
2)古田新太の凄みある演技
3)TVメディアの下品さのアンチテーゼ
冒頭 漁師の日常が描かれる
そこは添田(古田新太)の船で、傍らには野木(藤原季節)がいたが、優しい声ではなく、厳しい怒号で命令を出していた。
家では一人娘で中学生の花音(伊東 蒼/いとう あおい)と暮らしていたが娘は父親に気を使いながら生活をしていたし、添田は娘に実質無関心だった。
スーパーアオヤギの青柳(松坂桃李)は化粧品コーナーで万引をしていた中学生を捕まえるそれは花音だった。彼女を事務所に連れて行くが、逃げ出す花音。追いかける青柳だったが、すんでのところで道路に飛び出した花音は通ってきたクルマに跳ね飛ばされてしまう。さらに大型トラックに巻き込まれる2重事故になってしまう
事故は世間のワイドショーを賑わせる。しかし面白おかしく歪曲した情報を流すテレビによって、青柳にも、添田にも大きな影響が出てくる。
そんな中、添田は「娘が万引をするはずない!」という信念のもと、娘を追いかけた青柳をはじめ、事故の関係者に厳しく追求を続けるのだった。
なんと言っても古田新太の演技の凄み
娘の無実を信じて行動する姿はまさにモンスターペアレント
他人の言葉には耳を貸さない、頑固な親父を見事に演じている
劇団好きなら、誰もが知っていると言っていいほどの俳優だが、今作で改めて多くの人に知られたと思う
凄みのある演技であり続けたからこそ、あるところからの変化に深みがあるとも言える。
古田新太のといえば、やはり「オールナイトニッポン」
下品さ全開の内容で、覚えてるのは、シモネタとロック音楽がかかっていたことだけ
そして松坂桃李の演技の幅の広さ
「孤狼の血LEVEL2」で魅せていた、ワイルドな約と全く違う
180度違う役どころを見事に演じきっている。
事故を起こしてしまった側、巻き込まれた側、原因となった側それぞれの苦悩と葛藤があることを、もがき苦しむことがあることを描いている作品。こういう重たくも考えさせられる部分がとても生々しい
その中に、古田新太の演じる娘を亡くした父親の暴走モンスターと対局にあるのが寺島しのぶ演じる、スーパーのパートの女性の草加部
上辺はなにかとおせっかい焼きのようだが、その内側は自分が正しいことをしていると信じ切っているが故に、他人を巻き込むことも正しいと信じているモンスターっぷりにも注目
さらに古田新太演じる、添田の船に乗っている若者・野木藤原 季節(ふじわら きせつ)がとてもいい形で中和をしてくれる。
ただ、事件にしても事故にしてもだが、加害者側が謝罪をする必要性はさておき、被害者側が謝罪を受け入れるのも勇気だし、許すということも勇気だと教えてくれる作品。
それを大きく感じさせてくれるのが、最初に花音を引いてしまった女性の母親(片岡礼子)が嗚咽混じりに添田に、母として、保護者として、娘絵の思いと責任を受け止めた言葉を投げかけるシーンの演技には引き込まれる。
他人に対してどこまで寛容になれるのか?どこから謝罪を受け入れればよいのか?その線引は当事者でなければ決められない見えないラインだからこそ難しいところだろう
万引から始まるにしては、とても重すぎる内容だが、現実でも似たような案件は実際に起きている。
川崎の本屋
この映画でいちばん気分が悪くなるのは、ワイドショーのくだりだろう
編集で良いように切り取られて報道されることで2人には、匿名からの嫌がらせや山のように押し寄せてくる
例えば、
会見取材時に青柳が行った回答が
自身が置かれている環境と事実と謝罪を行っているにもかかわらず、編集後OAされたものは、観ている側を不快にさせる「言い訳会見」になっている というもので、ネットなどの匿名ゆえの身勝手な発言と行動にも釘を刺すようにも感じられる
この映画を観たひとは、ワイドショーがどれだけ真実を伝えていない可能性があるのか?を明確に観ることになる
ラストには一筋の光を見せてくれるので、安心して観てください
2003年の神奈川県川崎市で、本屋で万引をした少年を本屋の店長が呼び止め警察を呼んだ結果、任意同行をするところで少年が逃げてしまい、京浜急行の踏切に突入しはねられて亡くなった事件が合った。
本屋への誹謗中傷がかなりひどく合ったが、それがモチーフ担っているのかもしれない
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