東京オリンピックの聖火リレーが25日午前、福島県から始まりました。“復興五輪”を掲げるなか、福島県の『Jヴィレッジ』で行われた出発セレモニー。聖火リレーの公式アンバサダーを務めるお笑い芸人・サンドウィッチマンが、聖火の灯るランタンを手に壇上に上がり、あいさつしました。
サンドウィッチマン・伊達みきおさん:「きょう、こうやって聖火リレー出発式ということだから、もう五輪をやるということだから。世界中の方に感謝の気持ちを込めて、我々は被災地を走りたいなと思う」
最初の聖火ランナーは、2011年サッカー女子ワールドカップで優勝した日本代表『なでしこジャパン』の当時のメンバーら16人です。感染防止対策からセレモニーは無観客で行われ、沿道の観客もまばら。ランナーの周囲を警察やスタッフが囲み、物々しい雰囲気のなか、リレーは粛々と進んでいきました。
25日の最終区間、南相馬市を走る上野敬幸さん(48)。沿道では、妻・貴保さん(44)と、震災の年に生まれた次女の倖吏生さん(9)が見守ります。上野さんは、「辞退は一切考えなかった」といいます。そこには“走りたい理由”がありました。
上野敬幸さん:「倖吏生にも見せたいし、亡くなった人たちにも見せたいものもある。限られた区間で自分ができることは、笑顔で走って、親父、お袋、永吏可、倖太郎に安心してもらうこと」
上野さんは、両親と長女・永吏可ちゃん、長男・倖太郎くんを津波で失いました。父親と倖太郎くんは、まだ見つかっていません。福島では、原発事故とともに津波の被害も深刻でした。沿岸部で、地震や津波で直接亡くなった人は、1500人以上に上ります。福島県のルートで沿岸部を走るのは、26日の第3区間となっている新地町だけです。
上野敬幸さん:「ルートで沿岸部を走ってくれる市町村が、新地町だけだというのが、すごく残念に感じる。福島は、原発事故からの復興を優先してしまったのだろうなとは思うが、もうちょっと沿岸部を見せる部分があってもよかったと思う」
今回、走ることで上野さんが伝えたいのは、風化する震災の記憶や、失った家族のことだけではありません。
上野敬幸さん:「“東北を忘れないで”といろんな方が言うけれど、忘れないから命が助かるわけではなく、それを一歩先に行った教訓“今ある命をどうやって、みんなが守っていくのか”というところまで、10年経って、本当にみんながどこまで自分のこととして考えて、家族と話したり、友だちと話したりしたことがあるのかが本当に気になる。全くそれができていないと思う。生かせていない」
上野さんは、笑顔で走り終えました。
上野敬幸さん:「(天国の家族に)自分が走る姿を見せることができたし、笑顔で走ることもできたし、楽しませてもらったし、すごくよかった」
福島県での聖火リレーは、27日までで、26市町村、約50キロで行われます。
オリンピック開催に向かう一方、今回の聖火リレーでは、有名人やアスリートの辞退者が相次いでいます。ロンドン・パラリンピック競泳の金メダリストの秋山里奈さん(33)も、その1人です。現在は引退していることもあり、晴れ舞台となる聖火リレーを楽しみにしていましたが、辞退を決めました。
秋山里奈さん:「練習環境も国によっても差があると思う。ロックダウンが続いている国もあるし、外出制限がある国もたくさんある。平等であるオリンピック、パラリンピックに不平等が生まれてしまうのではないか。そういう意味でも疑問を感じたので辞退した。大会を実施するのだったら、多くの国民が開催を歓迎するようなムードを醸成してほしい」
聖火リレーは、25日から121日間、約1万人のランナーが参加して、47都道府県を巡ります。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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