カナダでは生活に余裕がないと言う人が増えているらしいのです。しかし、ショッピングセンターの駐車場には大型SUVや高級車が並び、キッチンやバスルームを大幅にリノベーションする家庭も多いのも事実。カナダ人の懐具合はどうなっているのでしょう?
借金の総額と中身
Statistics Canadaによると、2026年第1四半期のカナダの家計の信用市場債務は約3.25兆カナダドルに達しました。そのうち、住宅ローン約2.439兆カナダドル、クレジットカード約1306億カナダドルなどで、住宅ローンの占める割合が大きいようです。家計の債務・可処分所得比率は179.6%で、可処分所得1ドルに対して約1.80ドルの債務を抱えている計算です。
一方、家計純資産は約18.6兆カナダドルもあり、一見資産の方が多く見えますが、その65%は上位20%の富裕層が占めています。特に下位40%が保有する割合はわずか3%にすぎず、住宅ローンや生活費の上昇によって家計に余裕がない世帯が存在します。
カナダ人はリノベ好き
ローンを組む大きな消費には住宅や車の購入が思い浮かびますが、カナダ人はキッチンやバスルームなどを新しくするリノベーションも大好きです。北米にはHome and Garden TV(HGTV)という有料チャンネルがあり、普通の家を素晴らしく生まれ変わらせる様子を追う番組が次々に流れ、リノベ熱を誘発しています。
2025年のCMHC(カナダ住宅金融公社)の調査では、住宅ローン利用者の74%が今後5年間にリノベーションを予定しています。費用は平均3万2200カナダドル。その資金調達方法は、貯蓄が55%、HELOC(Home Equity Line of Credit)や既存住宅ローンや借り換えが46%、クレジットカードが30%でした。つまり、多くの人が借金をしての改装を考えています。
HELOCとは、住宅を担保にした借り入れを指し、カナダでは借入手段として大きな位置を占めています。長年にわたって住宅価格が上がったため資産価値が上がり、それを担保に高額消費に充てていました。家は金の生る木だったのです。Equifaxによると、2025年第4四半期のHELOCの借り入れ残高は約2309億カナダドルで、年々増えています。
HELOCは住宅価格が上がっている間はいいですが、近年のようにカナダの住宅価値が下がった場合は問題が生じます。家を売っても借金が消えない可能性があるからです。
車購入や生活費もHELOC

トロントの街を走る車の多くは大きなSUVで、テスラなどの高級車もかなりあります。もちろん高級車がすべてローンで買われたわけではありませんが、住宅ローンを抱えながら、さらに数万ドルの自動車ローンを抱える家庭も珍しくありません。
Equifax Canadaによると、2025年第1四半期のカナダのオートローン残高は約1700億カナダドルでした。平均融資額は約3万7000カナダドルで、新車価格の上昇により融資額も高騰しています。車は全額いくらになるかよりも、月にいくら払えるかでローンを組むと高級車が買えてしまうのです。
車はオートローンだけではありません。HELOCを車の購入に充てている人もいます。また、車やリノベーション、旅行のような高級消費だけでなく、日常の生活費が足りない時にHELOCから借りる金額も上がっています。
「みんながやっているから」という心理
さて、「カナダ人は浪費家」なのでしょうか?周囲を見れば、大きな家に住み、キッチンをきれいにリノベーションし、大型SUVに乗り、外食や旅行を楽しんでいる人がいます。すると、自分も同じような生活をしたいと思うのは自然なことです。
問題は、ローンやクレジットカード、HELOCを使えば、実際の収入以上の生活水準を一時的には維持できてしまうことです。しかし、「買える」ことと「無理なく払える」ことは同じではありません。周囲に合わせて生活水準を上げれば、現在は豊かに見えても、貯蓄や老後資金にしわ寄せが来る可能性があります。
老後が心配なカナダ人
2025年にオンタリオヘルスプラン(HOOPP)がAbacus Dataと共同で行った調査では、まだ在職の労働者のうち、59%が「経済的にリタイアできるとは思わない」、66%が「リタイア後も働き続ける必要がある」、55%が「給与ギリギリの生活をしている」、49%が「前年に老後資金を貯蓄していない」と回答しています。カナダ人の半分ほどが老後を心配しているようです。
Statistics Canadaによれば、2024年度のカナダの家計貯蓄率(手取り収入のうち貯蓄に回した割合)は5%で、2026年第2四半期には生活費の高騰のため3.70%まで下がっています。富裕層はそれでも資産を増やしているとしています。
本当はあまり余裕がない生活
一見すると豊かに見えるカナダ人の生活ですが、必ずしも豊かな家計を意味していず、かなり借金も大きいようです。しかも現在は、物価上昇によって住宅、車、食費など、日常生活のさまざまな支出が増えています。Bank of Canadaの2026年第2四半期の消費者調査でも、カナダ人は家計が厳しいと感じていることが示されています。
そうはいっても、カナダは広大な国土を持ち、森林・鉱物・石油・天然ガスなどが豊富な資源大国です。あくまで個人の意見ですが、その資源の豊かさが、中東の産油国ほどではないにしろ、カナダ国民の欲しい物は今買いたいという気質に少しは影響しているかもしれません。
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ワーマン・カエデ
マルチリンガル子育てアドバイザー。バイリンガル教育理論を独学で勉強し、カナダ人夫の協力を得て2人の子どもの日英仏3か国語子育てに成功した。現在成人した子どもたちは3か国語すべてで話し読み書ける高度トライリンガル。「バイリンガル子育て相談」受付中!
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