
岐阜県の旅館市場では、2026年10月の三連休初日にあたる10月10日(土)の推定OCC(OTA掲載在庫ベース)が、宿泊日の45日前の時点ですでに92.1%に達していた。同じ10月の通常週末である10月3日(土)は45日前が79.1%。同じ「土曜」でも、45日前の出発点に13.0ポイントの差がついている。直近(2026年9月19日観測)では10月10日が95.6%、10月3日が89.1%となり、両日の距離は6.5ポイントまで縮まった。つまり10月3日は45日前からの1か月強で+10.0ポイントを積み増したのに対し、10月10日は+3.5ポイントしか動いていない。三連休初日は「45日前にほぼ決着していた日」、通常週末は「45日前以降に積み上がった日」である。本記事では岐阜県の旅館145施設の固定コホートを対象に、10月の主要宿泊日をリードタイム45日以内で定点観測し、T-45/T-30/T-14の逆算カレンダーに落とす。
本記事のデータについて|対象: 岐阜県・旅館カテゴリ N=145施設/客室3,545室(主要予約サイト掲載ベースの固定コホート)。本記事の価格指標は推定成約ADR(OTA等の販売データから推定される成約価格水準・税抜相当)、稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値。いずれも定義は記事末尾。データ時点: 2026年9月20日。
Key Takeaways
— 三連休初日は45日前に推定OCC92.1%。通常週末の10月3日(土)は79.1%で、同じ土曜でも出発点に13.0ポイントの差がついていた。
— T-45の序列は直近まで一度も入れ替わらない。初日92.1%・中日84.2%・通常週末79.1%・最終日74.4%という45日前の格付けがそのまま残る。
— 伸びしろは低い出発点の日に残る。観測窓を揃えたT-45→T-30の15日間で、10月3日+6.0ポイントに対し10月10日は+1.8ポイント。
— 連休最終日は別枠で設計する。10月12日(月・祝)の完売施設率は45日前32.4%→直近33.6%とほぼ動かず、曜日別の月曜平均84.3%も下回る。
— 価格の物差しは月次で持つ。岐阜県旅館の推定成約ADRは2026年8月16,491円(N=234施設)、10月は現時点推定17,214円(N=219施設)と年内の高水準帯。
三連休4日間の定点観測 — 初日92.1%、中日84.2%、最終日74.4%で45日前を迎えた
2026年10月12日(月)は「スポーツの日」(内閣府「国民の祝日」)であり、10月10日(土)・11日(日)・12日(月・祝)が三連休を構成する。この3日間と、その1週間前の通常週末である10月3日(土)を、宿泊日の45日前から直近まで同一の施設集合(固定コホート)で追跡した結果が次表である。
2026年10月の三連休3日間と直前の通常週末について、宿泊日の45日前・30日前・直近の推定OCCと完売施設率を固定コホートで比較した表
宿泊日
対象施設
T-45
T-30
直近
T-45→直近
完売施設率
T-45→直近
10/03(土)通常週末145施設
3,545室79.1%85.1%89.1%
(T-14)+10.0pt35.2% → 49.7%
10/10(土)連休初日145施設
3,542室92.1%93.9%95.6%
(T-21)+3.5pt63.9% → 75.9%
10/11(日)連休中日143施設
3,526室84.2%88.2%90.6%
(T-22)+6.4pt52.1% → 65.0%
10/12(月・祝)連休最終日143施設
3,524室74.4%79.3%80.1%
(T-23)+5.7pt32.4% → 33.6%
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定OCC=OTA掲載在庫ベース。宿泊日の45日前から直近までの観測に基づく)
三連休の3日間は、45日前の出発点が初日92.1%・中日84.2%・最終日74.4%と、17.7ポイントの幅で階段状に並んでいる。連休の需要が初日に集中し、最終日に向かって細っていく形が、45日前という早い段階ですでに完成しているということだ。しかもこの序列は直近まで一度も入れ替わっていない。連休内の序列が早い段階で固まる形は10月に限った話ではなく、同じ岐阜県の旅館で9月のシルバーウィーク5連休を同じ物差しで追った岐阜の秋5連休の逆算カレンダーでも、連休初日が45日前に93.7%へ達し、最終日だけが76.3%にとどまる形が観測されている。
動き方には差がある。完売施設率(OTA等で掲載在庫が確認できない施設の割合・推定)を見ると、10月10日は45日前の63.9%から直近75.9%へ12.0ポイント上昇し、直近時点で対象施設の4分の3が掲載在庫を確認できない状態にある。一方で10月12日(月・祝)は32.4%→33.6%とほぼ横ばいで、45日前以降の1か月で完売施設がほとんど増えていない。推定OCCも74.4%→80.1%の+5.7ポイントにとどまる。連休最終日は、45日前時点の「低い出発点」がそのまま残っているのが実態である。この「祝日側に谷が残る」形は岐阜県固有のものではなく、静岡・伊豆熱海の10月三連休を3定点で読んだ分析でも、旅館の土曜83.1%に対し祝日61.5%という形で確認されている。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
ただし上表の「直近」は宿泊日ごとに観測リードタイムが異なる(10/03はT-14、10/10はT-21、10/11はT-22、10/12はT-23)。窓の長さを揃えて T-45→T-30 の15日間だけで比べると、10月3日(土)+6.0ポイント、10月11日(日)+4.0ポイント、10月12日(月・祝)+4.9ポイント、10月10日(土)+1.8ポイントとなる。観測窓を同一にしても三連休初日の伸びが最も小さい点は変わらず、「45日前にほぼ決着していた」という読みは窓の違いによる見かけの差ではない。
カーブの形を見ると、10月10日の線は45日前から一貫して天井近くを横ばいに走る。他の3日は右肩上がりの傾きを持つが、傾きの大きさは10月3日(通常週末)が最も急である。10月3日は45日前から直近までの31日間で+10.0ポイント、1日あたり約0.32ポイントのペースで積み上がった。三連休初日の+3.5ポイント(24日間)と比べると、後半の伸びしろを残していたのは三連休ではなく通常週末のほうだった、という構図になる。
10月の土曜は45日前の時点ですでに序列が決まっている
同じ物差しを10月の他の土曜と、11月最初の祝日にも当てはめる。T-45(各宿泊日の45日前)という共通の定点で並べると、10月の土曜は次のようになる。
2026年10月の各土曜日と11月3日(火・祝)について、T-45時点と直近時点の推定OCC・完売施設率を並べた表
宿泊日
対象施設
T-45の推定OCC
直近の推定OCC
(9/19観測)
直近の完売施設率
10/03(土)145施設79.1%89.1%(T-14)49.7%
10/10(土・連休初日)145施設92.1%95.6%(T-21)75.9%
10/17(土)147施設84.4%89.0%(T-28)51.0%
10/24(土)143施設87.3%90.6%(T-35)58.7%
10/31(土)147施設87.7%88.2%(T-42)53.7%
11/03(火・祝)146施設73.8%—27.4%
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(11/03はT-45時点の観測のみ)
T-45の列だけを縦に読むと、10月の土曜は79.1%(10/03)→92.1%(10/10)→84.4%(10/17)→87.3%(10/24)→87.7%(10/31)と推移する。月初の10月3日が最も低く、三連休初日が突出し、月の後半に向けて再び87%台まで持ち上がる。岐阜県の旅館は飛騨・奥飛騨・下呂・郡上といった山間部の温泉地が主力であり、紅葉シーズンにあたる10月下旬の土曜が、45日前という早い段階で三連休以外の週末より高い水準を確保していることが読み取れる。
10月10日が突出する背景には、三連休初日であることに加えて、秋の高山祭(八幡祭)が2026年10月9日・10日に開催される点がある(岐阜県観光公式サイト「岐阜の旅ガイド」)。高山市周辺の宿泊需要が、連休初日という曜日要因と重なって前倒しで消化される形になっている。一方、11月3日(火・祝)はT-45時点で73.8%・完売施設率27.4%と、10月のどの土曜よりも低い出発点にある。祝日であっても平日単独の祝日は週末と同じカーブを描かない、という違いがここに出ている。
曜日別に見た岐阜県旅館の推定OCC — 土曜94.9%、水曜83.7%
逆算カレンダーを組むには、そもそも自館が属する市場の曜日構造を把握しておく必要がある。直近の経過月である2026年6月〜8月の日別実績(同カテゴリ・岐阜県)を曜日で束ねると、次のような分布になる。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年6〜8月の経過月実績・各曜日13〜14日分)
土曜が94.9%で突出し、金曜88.8%・日曜88.5%が続く。月曜から木曜は83.7〜84.3%の狭いレンジに収まり、曜日間の差はほとんどない。土曜と水曜の差は11.2ポイントで、岐阜県の旅館市場が「週末一点集中型」であることを示す。月平均で見ると2026年6月82.9%、7月86.0%、8月91.8%と夏に向けて水準が上がっている。
この構造を踏まえると、冒頭の10月3日(土)の直近89.1%は、6〜8月の土曜平均94.9%を5.8ポイント下回る位置にある。逆に10月10日(土)の95.6%は土曜平均をわずかに上回る。10月12日(月・祝)の80.1%は、月曜平均84.3%を4.2ポイント下回っており、祝日でありながら平日並みか、それ以下の消化状況にとどまっている。
価格の物差し — 岐阜県旅館の推定成約ADRは10月に年内の高水準帯へ
曜日別の価格差には踏み込まないが、月次の価格水準は逆算カレンダーの前提になる。岐阜県の旅館カテゴリの推定成約ADR(税抜相当)を年重ねで見ると、次のような季節形状を描く。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(実線=確定値、点線=現時点の販売状況に基づく推定値)
確定値同士で比較できる直近月は2026年8月で、16,491円(N=234施設)。前年同月の16,368円(N=230施設)に対して+0.8%と、ほぼ横ばいである。2026年1〜8月の確定値の平均は約14,700円で、2025年同期の約14,300円に対して+2.7%。年間を通じた水準は緩やかに切り上がっているが、夏場のピーク水準そのものは前年並みで頭打ちになっている。
2026年10月は17,214円(N=219施設)だが、これは現時点の販売状況に基づく推定値であり、月末までに変動し得る。前年10月の確定値15,056円(N=219施設)との単純比較は、月末の確定を待つ必要がある。確定値ベースで言えることは、2025年の岐阜県旅館の推定成約ADRは10月に15,056円、11月16,432円、12月17,259円と秋から冬にかけて水準が切り上がる形状を持っていた、という事実である。10月は年内でも高い価格帯に入る月であり、その入口の需要形成が45日前にどこまで進んでいるかが、この形状を実現できるかどうかを左右する。なお県内でも単価の山が立つ月は一様ではなく、高山は10月・下呂は11月という市町村別のピーク月の分かれ方については別稿で分解している。
岐阜県で旅館を運営するレベニューマネージャーへ — 示唆とアクションプラン
(1)「T-45の出発点」が日付の格付けになる。三連休初日92.1%・中日84.2%・通常週末79.1%・連休最終日74.4%という45日前のスコアは、直近まで一度も順位が入れ替わっていない。自館でも、各宿泊日の45日前時点のOTB(受注残)を記録し、その一枚の数字を「この日付をどう扱うか」の分岐に使いたい。45日前で市場の同水準帯を上回っているか下回っているかで、その後の打ち手が変わってくる。
(2)伸びしろの大きさは45日前の水準と逆相関する。10月3日は45日前からの31日間で+10.0ポイント積み上げた一方、10月10日は24日間で+3.5ポイントしか動いていない。市場全体として、高い出発点の日はその後ほとんど伸びず、低い出発点の日が後から追い上げる。自館の通常週末が45日前に80%前後であれば、そこから10ポイント近く積み上がる余地が市場には存在した、という読み方ができる。
(3)連休最終日は別枠で設計する。10月12日(月・祝)は完売施設率が45日前32.4%→直近33.6%とほぼ動かず、推定OCCも80.1%にとどまる。曜日別で見た月曜平均84.3%も下回る。連休を「3日間まとめて強い」と扱うと、最終日の在庫が最後まで残る。連泊での取り込みか、最終日単体での訴求かを、連休の中で分けて考える必要がある。
(4)価格の物差しは月次で持つ。2026年8月の推定成約ADRは16,491円で前年同月比+0.8%。10月の現時点推定は17,214円と年内でも高い帯にある。曜日ごとの細かな価格差ではなく、「自館の10月の設定が市場の月次水準に対してどの位置にあるか」という粗い物差しで点検するほうが、45日前という早い段階の意思決定には向いている。
リードタイムT-45/T-30/T-14ごとの打ち手・判断トリガー・狙いを整理した逆算カレンダー
時間軸
打ち手
判断トリガー
狙い
T-45
在庫と料金レンジの確定対象日の45日前時点のOTBを記録し、「強い日/普通の日/弱い日」の3分類に仕分ける市場の三連休初日は45日前で92.1%、通常週末は79.1%。自館の当該日が連休初日でありながら市場の通常週末水準に近いなら仕分けを見直す日付ごとの料金レンジ上限・下限を45日前に固定し、以降の値動きの幅を限定する
T-4510月の月次価格帯を自館の設定と突き合わせる自館10月の設定が、市場の10月の現時点推定17,214円という帯に対して著しく低い位置のまま動いていないなら、上限側の見直し余地を検討する10月が年内の高水準帯に入る月であることを、価格レンジの設計段階で織り込む
T-30
プラン露出と連泊条件の見直し連休初日に寄った需要を、中日・最終日へ連泊で引き伸ばす条件を整える市場では10/10が30日前で93.9%に達する一方、10/12は79.3%。自館でも初日と最終日の差が10ポイント以上開いているなら連泊条件の対象日に入れる連休3日間の消化を平準化し、最終日の残枠を早めに動かす
T-30通常週末のプラン露出を点検し、積み上げ余地を取りに行く市場の10/03は30日前85.1%から直近89.1%まで伸びた。自館の同種の週末が30日前で市場より低い位置にあるなら、露出面の点検を優先する後半で積み上がる日を取りこぼさず、値下げ以外の手段で消化を進める
T-14
残室の出し切り直前2週間で動く残枠を、部屋タイプ単位で棚卸しする市場の10/03は14日前で完売施設率49.7%。自館の同日がこれを大きく下回り、かつ推定OCC89.1%相当に届いていないなら出し切りの対象日とする直前期に残る在庫を、価格帯を崩さない範囲で消化しきる
T-14曜日構造に合わせて平日側の販売資源を確認する市場の月〜木は83.7〜84.3%と横ばい。自館の平日がこのレンジを大きく下回るなら、週末偏重の配分を平日側に振り向ける余地がある週末一点集中型の市場構造の中で、平日の底上げ余地を取りに行く
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
まとめ — 3つの物差し
第一に、45日前のスコアは日付の格付けである。岐阜県の旅館市場では、10月の三連休初日92.1%・中日84.2%・通常週末79.1%・連休最終日74.4%という45日前の序列が、直近まで維持された。45日前に測った一枚の数字が、その日付の性格をほぼ言い当てている。
第二に、伸びしろは低い出発点の日に残る。通常週末の10月3日は45日前から+10.0ポイント積み上げ、三連休初日の10月10日は+3.5ポイントにとどまった。高い日は守り、低い日は取りに行く、という配分の根拠がここにある。
第三に、連休は日単位で分解する。10月12日(月・祝)の完売施設率は45日前32.4%から直近33.6%へほとんど動かなかった。連休という括りではなく、初日・中日・最終日それぞれに別のカーブと別の打ち手を用意することが、10月という年内でも高い価格帯に入る月の成果を左右する。
データについて
推定OCCの定義:OTA掲載在庫ベース稼働率 = 100 − 100 × OTA掲載残室数 ÷ 総客室数。対象は総客室の30%以上をOTAに掲載する施設で構成した固定コホート(各宿泊日で同じ施設集合。本文・表に記載した対象施設数がこれにあたる)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、実客室稼働率とは定義が異なる(掲載外の客室を消化済み側に数えるため高めに出る)。
ブッキングカーブ:宿泊日の45日前から直近までの観測に基づく。
推定成約ADRの定義:OTA等の販売データ(最安プラン水準×業態別係数・複数チャネルのアンサンブル)から推定した成約価格水準(税抜相当)。過去月は確定値、現在・未来月は現時点の販売状況に基づく推定値。公表運営実績との照合で誤差中央値6.6%。
対象Nの内訳:ブッキングカーブは岐阜県・旅館カテゴリの固定コホートで、2026年10月3日=145施設/3,545室、10月10日=145施設/3,542室、10月11日=143施設/3,526室、10月12日=143施設/3,524室、10月17日=147施設/3,612室、10月24日=143施設/3,568室、10月31日=147施設/3,606室、11月3日=146施設/3,596室(いずれも主要予約サイト掲載ベース、2名1室条件)。曜日別集計は2026年6〜8月の同カテゴリ日別実績(各曜日13〜14日分)。推定成約ADRは岐阜県・旅館カテゴリで、2025年8月=230施設、2026年8月=234施設、2025年10月=219施設、2026年10月=219施設。完売施設率はOTA等で掲載在庫が確認できない施設の割合の推定値。
データ時点: 2026年9月20日。販売状況・在庫は日々変動するため、本記事の数値は取得時点のスナップショットである。
参考資料・出典一覧
・内閣府「国民の祝日について(syukujitsu.csv)」 https://www8.cao.go.jp/chosei/shukujitsu/syukujitsu.csv
・岐阜県観光公式サイト「岐阜の旅ガイド」秋の高山祭(八幡祭) https://www.kankou-gifu.jp/event/detail_1074.html
・高山屋台保存会「秋の高山祭」 https://www.takayama-yatai.jp/about/autumn-festival.html

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