英国がEUを離脱してから、2026年で6年が経ちました。2016年の国民投票で離脱が決まった当時は、英国経済の低迷やロンドンの金融街「シティ」の地位低下を懸念する声が相次ぎました。また、英国を欧州ビジネスの拠点としてきた日系企業にとっても、EU市場へのアクセスや事業拠点の見直しを迫られる大きな転機となりました。一方、EU法の影響を受けてきた英国の税制にも変化が生じています。EU離脱によって英国は何を得て、何を失ったのでしょうか。金融と税制、さらに海外領土との関係から、離脱後の英国について、矢内一好氏が解説します。

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英国のEU離脱までの経緯

英国国民の間では、東欧などからの移民の急増により雇用などが脅かされているという意識が高まり、2016年6月23日の国民投票で離脱支持が過半数を占めたことを受け、英国政府はEU離脱を決断しました。

 

2017年3月29日にEUへ離脱を通知し、当初の離脱期限とされていた2019年3月末を経て、その後の延期を経た2020年1月31日にEUを正式に離脱しました。英国の国内問題としては、スコットランドや北アイルランドにはEU残留派が多く、2018年末頃からこれらの地域の独立を求める動きが改めて出てきました。

 

当時、英国には日系企業が約1,000社進出しており、英国国内で製品を製造している企業もあり、日本からの出向者も多く、現地で多くの人を雇用していました。英国進出の日系企業は、EU離脱に伴い、欧州市場における拠点をどの国に移転するのかといった対応を迫られることになりました。

英国の強みとは何か

英国経済の強みの1つである金融分野、特にロンドンのシティの存在が今後どうなるのかが注目されました。

 

英国のEU離脱後、ドイツやフランスなどがシティの役割を引き継ぐのか、それともシティが従来の影響力を保持するのかが焦点となりましたが、結果として英国の金融分野の強みは維持されました。

 

もう1つの分野として、英国の海外領土には、タックスヘイブンであるケイマン諸島、英領バージン諸島、バミューダなどがあります。

 

また、英国の海外領土ではないものの、英国の法施行地外にある王室属領として、英国周辺に位置するマン島、ガーンジー、ジャージーがあります。これらもいずれもタックスヘイブンであり、英国税法は適用されず、EUにも加盟していません。

 

中央大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和50年東京国税局に勤務、平成2年退職。産能短期大学助教授、日本大学商学部助教授、教授を経て平成14年中央大学商学部教授(平成30年退職)。税務大学校講師、専修大学商学研究科非常勤講師、慶應義塾大学法学研究科非常勤講師、新潟産業大学経済学部非常勤講師、武蔵大学経済学部非常勤講師を歴任。

著書に『国際課税と租税条約』(ぎょうせい、第1回租税資料館賞受賞)、『租税条約の論点』(中央経済社、第26回日本公認会計士協会学術賞)、『移転価格税制の理論』(中央経済社) 、『詳解日米租税条約』(中央経済社)など。

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