中国が新型ロケット「長征10号B」の打ち上げに成功し、海上に展開した網のような機構で1段目を回収することに成功した。奇しくも同じ週に、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)も、将来の再使用ロケットに向けた実験機の飛行試験に成功しており、宇宙輸送をめぐる競争は新たな局面を迎えつつある。

長征10号Bは、海南商業宇宙発射場から現地時間の7月10日12時15分に打ち上げられた。1段目と2段目を切り離した6分後、1段目はそのまま洋上に動力降下。大型の回収船「領航者」が4本のケーブルを「井」の字型に広げた状態で待機し、この格子状の網に引っかけるようにして“捕獲”した。このような機構で1段目の回収に成功した事例は世界初だという。

長征10号Bは全長63m、直径5mの2段式ロケットで、打ち上げ時の質量は760トンになる。1段目はケロシンと液体酸素を用いたエンジン7基を搭載しており、合計890トンの推力を生み出す。再使用状態で地球低軌道に16トンのペイロードを運搬する能力をもつ。

垂直着陸とは異なる回収方式

これまで軌道打ち上げロケットの回収に成功していたのは、いずれも米国企業だった。垂直着陸という手法を確立した米国のスペースXの「ファルコン9」は、陸上や海上の台船に自力で降り立つための着陸脚を備えており、すでに600回以上の着陸実績を積み重ねている。ブルーオリジンの「ニューグレン」も着陸脚を用いる方式を採用しており、2025年11月に洋上の回収船へ1段目を初着陸させ、26年4月に再使用機体の着陸にも成功している。

長征10号Bが採用した網による捕獲方式は、この垂直着陸とは発想が異なる。1段目には着陸脚の代わりにフックのような機構が取り付けられており、海上の回収船が4本のケーブルを「井」の字型に張りめぐらせて待ち構える。そこに降下してきた1段目の位置に合わせてケーブルを調整しながら、フックごと受け止める仕組みだ。

1段目に着陸脚を装備する必要がないことから、機体の軽量化につながり、ペイロードの容量を圧迫しにくいという利点がある。一方で、ケーブルを張りめぐらせる大型の支柱や緩衝装置などを備えた巨大な回収船が必要になるデメリットがあるほか、降下してくる1段目と回収船は正確に協調制御しなければならない。

過去には中国でも、着陸脚を用いた垂直着陸に挑んだ例はある。「長征12号A」や、民間企業ランドスペース(藍箭航天)の「朱雀3号」は着陸脚を備えていたが、いずれも25年12月の初打ち上げで軌道投入こそ計画通りに成功したものの、第1段の着陸試験は降下中に失敗している。

中国が再使用技術を確立する意味

軌道打ち上げロケットの回収は、これまで米国企業の独壇場だった。スペースXが繰り返し着陸を成功させたことなどで打ち上げコストは大幅に下がり、米国は市場で常に優位に立ってきた。中国が網方式での回収技術を確立したことは、この分野に事実上の競争相手が現れたことを意味する。

中国航天科技集団(CASC)は、今回使用した1段目を年内に再使用する意向を示しており、「今後もロケットの性能を最適化し、再使用型ロケット技術の反復的なアップグレードを加速させていく」と表明している。

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