現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】今回はスナッパーロックス周辺で大規模な再整備計画。世界最大の女性参加型サーフフェスティバル「シーズ・ザ・デイ」が開催。オーストラリア政府がサーフィンに巨額の投資を発表。オーストラリアスポーツ界が掲げる「Win Well Strategy」とは。

 

取材、文、写真:菅野大典

 

 

6月のゴールドコースト。

 

日本とは季節が逆になる南半球では、6月は冬至を迎える時期であり、一年で最も日照時間が短くなる季節でもあります。日の出は遅くなりますが、晴れた日は澄んだ空気が広がり、海沿いの遊歩道には早朝から活動する人々の姿が多く見られます。

 

 朝早くから身体を動かすことが大好きなオージーは、夜明けとともにヨガやランニング、トレーニングなど、それぞれのスタイルで一日をスタート。運動後は近くのカフェに立ち寄るといったライフスタイルが、ゴールドコーストの海沿いに暮らす人々の日常風景となっています。

 

カランビンアーリーのポイント周辺では、現在大規模なビーチフロント整備工事が進められています。毎年のようにどこかしらで整備や改修が行われているゴールドコーストのビーチフロントですが、今回はその規模も大きく、風景そのものが変わろうとしている印象を受けます。

 

 

 スナッパーロックス周辺でも、レインボーベイサーフクラブを含む駐車場エリア一帯で、大規模な再整備計画(マスタープラン)が進められています。

 

レインボーベイサーフクラブ

 

スナッパーロックスからレインボーベイまでを見渡せるレインボーベイサーフクラブは、サーフィンや美しい夕焼けを楽しめる人気スポット。

 

長年にわたり多くのサーファーたちに親しまれてきた場所であり、スナッパーロックスの歴史とサーフカルチャーを感じられる特別な場所となっています。

 

 当初は地元サーファーや住民からも、レインボーベイ特有の雰囲気が失われるのではないかという懸念が強く、1万人を超える署名活動も行われるなど、反対の声も少なくありませんでした。

 

しかし現在ではマスタープランは承認されており、今後は詳細設計や州政府との協議を経て、段階的に進行していく見込みとなっています。

 

この計画は、人口増加や観光需要の拡大に対応しながら、地元住民と訪問者の双方が長く快適に利用できる環境づくりを目的としています。

 

駐車場についても「無くなる」というよりはむしろ増設される方向ですが、一方でこれまでのような“車を停めてそのまま波をチェックする”というスナッパー独特のスタイルは、大きく姿を変えていく可能性があります。

 

ゴールドコーストでは、2032年ブリスベン五輪も視野に入れながら、ビーチフロントのインフラ更新が着実に進められています。世界屈指のサーフスポットとして知られるこのエリアもまた、サーフカルチャーと都市開発の狭間で、ひとつの転換期を迎えようとしています。

 

 

 

ゴールドコーストの波の状況は、今年に入ってからずっと続いている波がようやくひと段落。と言っても、毎日遊べるサイズはあり、サーフィンを楽しめる日々が続いています。

 

先月下旬の特大スウェルにより、ポイントの地形は崩れワイドなブレイクに。レインボーベイではゆったりとした波に乗るロングボーダーがたくさん。

 

D-BAHでは、7月1日からスタートするグロメッツサーファーたちの一大イベント「オッキーズ・グロムコンプ」に向けて、多くのキッズサーファーたちが連日練習に励んでいます。

 

クイーンズランド州ではスクールホリデーも始まり、真冬を迎えたゴールドコーストとは思えないほど、ビーチには活気が溢れています。

 

中旬には、この時期としては珍しいうねりも到来し、今年は本当に波の当たり年と感じさせるシーズンとなっています。

 

今年は何度も見るグリーンマウントのパーフェクトな波。ワイドなポディションでは人も少なく綺麗なチューブもブレイク。鈴木亜麻。空いているチューブコンディションはゴールドコーストではなかなか味わえない。陸から見てても伝わってくるほど嬉しそうに何度もパドルバックしていました。

 

 

WSLのビッグイベントが先月で終わり、イベントごとは国内のイベントに。

6月12、13日にはクイーンズランド州のジュニア&グロメッツの州王者決定戦である「クイーンズランド・ジュニア&グロメッツ・ステート・サーフィン・タイトル・グランドファイナル」の試合がD-BAHで開催していました。

 

 

アンダー16のファイナルまで残り4位となった福田ロイとルーカス・デフェンチ。お互いにクイーンズランド・ステートチームに選出され11月30日からウエスタンオーストラリアで行われるナショナル・タイトルの出場権を得ました。

 

 

 

6月20、21日には今年で第4回目を迎える「シーズ・ザ・デイ」のイベントがキングスクリフで開催。

このイベントはサーフィンオーストラリアが主催する、世界最大の女性参加型サーフフェスティバルで、2日間で15,000人以上もの来場者を記録しました。

 

 

ビーチには各ボードライダーズクラブのテントが立ち並び、朝早くから多くの人々が集まっていました。

 

コンテストは通常の個人戦ではなく、3人1組によるリレー形式のチーム戦。オープンウィメン、アンダー18ガールズ、アンダー14ミニシュレッダーズ、ロングボード、パラサーフィンの5カテゴリーで争われました。

真剣勝負でありながらも、会場全体には終始リラックスした雰囲気が漂い、参加者たちの笑顔がとても印象的でした。

 

 

選手ブースにも、ホットバスやウォーミングアップ用のバイク、ライブモニターも設置され、プロコンテストさながらのセットアップにキッズ達のテンションも上がっているように見えました。

 

このイベントの特徴は、サーフィンコンテストだけではないところにあります。むしろ、サーフィン以外のプログラムも大きな魅力のひとつ。

 

ヨガや呼吸法などのウェルネスプログラム、トークショー、サーフィン体験会など、レベルや年齢、競技経験を問わず、あらゆる女性が参加できるコミュニティイベントとして開催されており、「つながり」「挑戦」「学び」をテーマに、多彩なプログラムが展開されていました。

 

 

 

会場には、オリンピアンのオーウェン・ライトをはじめ、ワールドジュニアチャンピオンのデーン・ヘンリーとアイラ・ハパッツ、さらにオーストラリア史上最多のオリンピックメダル獲得数を誇るエマ・マキオンも来場し、トークセッションなどに参加しました。

 

 

また、世界的な人気サーファーであるアラナ・ブランチャードも登壇。母親としての経験や、自分らしい人生の歩み方について語り、多くの来場者が耳を傾けていました。

さらに、女性ジャッジ育成プログラムも実施され、20名以上の女性と少女がサーフジャッジとしての知識や技術を学ぶ機会を得ました。

 

拡大し続けている「シーズ・ザ・デイ」。PHOTO:SURFING AUS

 

毎年規模を拡大し続けている「シーズ・ザ・デイ」。単なるサーフィンコンテストではなく、年齢やレベル、障害の有無を問わず、あらゆる女性サーファーが参加できるコミュニティイベントとして発展を続けています。

 

競技の結果だけではなく、人と人とのつながりや、新たな挑戦、そして次世代への経験の継承を大切にしている。その姿勢からは、現在のオーストラリアスポーツ界が目指している方向性が見えてくるように感じました。

 

 

 

オーストラリアでは、2023年の女子サッカーワールドカップ開催後のスポーツ投資が話題となりましたが、今年はさらに、オーストラリア政府が5億1300万豪ドル(約500億円規模)のハイパフォーマンススポーツへの投資を発表しました。

 

もちろんサーフィンもその対象に含まれており、サーフィンオーストラリアによると、これは選手、コーチ、チーム、そして各競技団体に対する大きな支援であると同時に、ロサンゼルス2028オリンピック、そしてブリスベン2032オリンピックに向けて、オーストラリアスポーツ界が掲げる「Win Well Strategy」への強い信頼と期待を示すものだとしています。

 

 

 

オーストラリアスポーツ界が掲げる「Win Well Strategy」とは、2022年から採用されている国家スポーツ戦略で、単純に「メダルをたくさん獲得する」ことだけを目的にした強化方針ではありません。その考え方は、「勝つこと(Win)と、正しい方法で勝つこと(Well)を両立する」というものです。

 

背景には、2000年代後半以降、勝利至上主義による選手への負担や、一部競技団体での問題が議論されるようになったことがあると言われています。

 

そこで2032年のブリスベン五輪を見据え、「世界トップレベルの競技力を目指しながらも、選手の人生や人間性を犠牲にしない」という考え方を重視した新たな国家スポーツ戦略として、このWin Well Strategyが掲げられるようになりました。

 

この考え方を現場レベルで具体化している取り組みの一つが、近年スタートしたサーフィンオーストラリアの「タレント・アンリーシュド(Talent UNLSHD)」です。

このプログラムは、女子ジュニアサーファーの才能を早い段階で発掘し、計画的に育成し、世界トップレベルへと繋げていくためのナショナル育成プログラムです。

そのために、選手だけではなく女性コーチも全国で育成し、共通の指導メソッドを共有。これまで地域や個人に依存していた育成を、サーフィンオーストラリアという組織を母体に、一貫性のあるシステムとして構築しています。

 

単に強化合宿を行うだけではなく、「コーチによって言っていることが違う」といった声にも向き合いながら、指導の体系化と標準化を進めているのも大きな特徴です。

 

 

タレント・アンリーシュドのコーチを務めるジェイド・ウィットリー。アンダー14〜18世代の才能を発掘し、国家レベルで育成していくこのプログラムは、国内合宿だけではなく、今年5月にはメンタワイでの強化キャンプも実施されるなど、そのスケールの大きさも特徴です。また、若い世代の育成だけでなく、女性コーチの育成にも積極的に取り組んでいます。

 

かつてのサーフィン界では、ローカルコミュニティや個人の経験に依存する部分も大きかった育成システムですが、現在のオーストラリアでは、サーフィンオーストラリアを母体とした一貫性のあるピラミッド構造の構築が進められています。

このタレントアンリーシュドはまさにオーストラリアスポーツ界が掲げるWin Well Strategyを体現しており、当然ながら、世界トップレベルの結果を目指すと同時に、良い人間を育てる、 良い環境を作る、結果がついてくる、という考え方が根底にあります。

才能のあるサーファーが、18歳、20歳、25歳になっても辞めずに成長し続けられる環境を国が作っています。

 

レイハニ・ゾリック PHOTO:SURFING AUS

 

先日発表されたISAワールドジュニア選手権のオーストラリア代表には、わずか13歳のレイハニ・ゾリックがアンダー18カテゴリーに選出されました。

 

どれだけ才能があっても、「このまま競技を続けていけるのか」という壁に直面する若い選手は少なくありません。しかし、このような育成システムが国家レベルで整備されていることで、選手たちはより安心して競技に打ち込むことができていると思います。

オーストラリアの競技サーフィンの強さは、単に才能のある選手を見つけることだけではありません。トップ選手が次世代に夢を与え、その次世代を組織が支え、育てていく。その循環が何十年にもわたって積み重ねられてきたことこそが、現在のオーストラリアサーフィンの強さを支えているように感じます。

 

今年もあっという間に半年が経ちました。

ずっと波に恵まれたゴールドコースト。その空気感を映像でもぜひ見てみてください。

 

 

 

 

菅野大典:オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして、サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、選手の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。

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