撮影:Business Insider Japan撮影:Business Insider Japan

4月下旬に開かれた東京都が手動するグローバルカンファレンス「SusHi Tech Tokyo 2026」で、世界的な「地政学リスク」の高まりを受け、これまであまり見られなかったようなカテゴリーの国内外スタートアップが集まっていたことはご存じだろうか。

イラン戦争で注目が集まる米パランティアに代表される、軍事・防衛分野のスタートアップ「防衛テック」分野の出展がそれだ。

そこでは、誰もが口にするのをためらってきた言葉が、あちこちで飛び交っていた。「防衛(ディフェンス)」、そして軍民両用を意味する「デュアルユース」だ。

ロシアによるウクライナ侵攻、泥沼化する中東情勢、そして先鋭化する米中覇権争い。世界を覆う地政学的な地殻変動が、日本のスタートアップエコシステムの底流を確実に変えようとしている。

最前線のリアル、祖国を守る「ロボット犬」

「我々のロボット犬は、兵士が自ら危険な森林地帯へ立ち入るリスクを回避し、人的被害を防ぐためのものだ」

東欧ラトビア発のAI・ロボティクス分野のスタートアップ・Asya(アシア)が語る現実は重い。実は同社の共同創業者兼CEOは、いまも祖国の軍隊であるナショナルガード(国防義勇軍)に身を置く現役の兵士だという。

ロシアやベラルーシと国境を接する小国にとって、防衛分野のイノベーションは明日の命をつなぐための現実だ。日本の技術力に熱い視線を送り、協業の道を探っている。ラトビアは国土の多くが森林であり、そうした環境下では従来の戦車やドローンが最適に機能しないという課題を抱えている。同じく森林が多い日本と知見を共有したいという。

東欧ラトビア発のAI・ロボティクス分野のスタートアップ「Asya(アシア)」。東欧ラトビア発のAI・ロボティクス分野のスタートアップ「Asya(アシア)」。筆者提供

国土防衛に対する危機感はバルト三国やウクライナに共通する。エストニアのリーサ・リー・パコスタ法務・デジタル担当大臣は、防衛予算をGDP比5.4%まで引き上げ、AI戦略の4つ目の柱に明確に「防衛」を据えた。戦火の只中にあるウクライナのナターリア・デニケエワ・デジタル変革省副大臣は「敵よりも早く意思決定を下すために、エージェンティックAIが極めて重要だ」と訴え、防衛スタートアップの育成を急いでいることを明かした。

欧米諸国も大きく舵を切った。フィンランド・エスポー市でスタートアップ支援などを担うエンター・エスポーのヤーナ・トゥオミCEOは、わずか1年の間に70社以上を集めた「ディフェンステック・ハブ」の熱気を語る。

エンター・エスポーのヤーナ・トゥオミCEOは、防衛テックを成長産業の一つに掲げた。エンター・エスポーのヤーナ・トゥオミCEOは、防衛テックを成長産業の一つに掲げた。筆者提供

カナダ政府は自国の防衛産業戦略に数十億ドルを投じ、「NATO DIANA」のハブを設置した。NATO DIANAはNATO(北大西洋条約機構)が2021年に設立した、新興・破壊的技術に関する官民協力を促進する組織だ。イスラエル・スペインのベンチャーキャピタル、Cardumen Capitalのスタン・ユー氏も、ディープテック投資の重点分野に「防衛」を据えていると明かす。

音なき主戦場、AIハッカーと民間防衛網の攻防

もう一つの主戦場は、音なきサイバー空間だ。

「AI主導のアクターによる攻撃スピードは、もはや人間のエリートハッカーでも太刀打ちできないレベルに達している」

警察庁出身で、国際刑事警察機構(ICPO)のサイバー犯罪対策のトップを務めた経験も持つNECの中谷昇最高セキュリティー責任者(CSO)は、国家支援型ハッカーと犯罪組織が複雑に融合する今の不気味な現実をそう喝破した。トレンドマイクロのエバ・チェン(Eva Chen)CEOも、ロシアのハッカーがAIを「ゴーストライター」として駆使し、サイバー攻撃を高度化させている実態を明かす。

もはや、民間テクノロジー企業のインテリジェンスなしに国家は守れない。米AI大手アンソロピック(Anthropic)日本法人の東條英俊社長は、自社の強力なAIモデル「Mythos(ミュトス)」が攻撃側に悪用されるのを防ぐため、まずは「防御側」へ先行提供するという方針を説明した。

気鋭の海外スタートアップたちも、自社技術の「防衛転用」をいまや隠そうとはしていない。

NATOに所属しないためか、スイスのスタートアップは、防衛産業への言及が目立った。NATOに所属しないためか、スイスのスタートアップは、防衛産業への言及が目立った。筆者提供

スイスのエッジAIスタートアップAvatronicsのジェイラン・ヘザベ(Jeyran Hezaveh) CEOは自社のノイズキャンセリング技術を「軍用ヘッドセット」に適用可能だと明言した。

同じくスイスのスタートアップで次世代イメージセンサーを開発するNovoVizの創業者兼CEOであるアンドラーダ・ムンティーン(Andrada Muntean)氏も応用分野に「防衛」を挙げている。

AI遠隔監視システムを手がけるイタリアTimelapse Labのダミアーノ・バウチェ(Damiano Bauce)CEOは「軍事的な理由」による画像の自動マスキング機能の利用を想定していると語った。

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「防衛・軍事」がタブーではなくなりはじめた

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