JD.comの欧州における拡張戦略が加速している。イギリスのメディア報道によると、中国のEC大手であるJD.comが、イギリスの老舗オンライン小売プラットフォーム「The Very Group」を約20億ポンド(約4,000億円)で買収することを検討中である。情報筋によれば、現在同グループを支配下に置く米プライベート・エクイティ大手のカーライル・グループ(Carlyle Group)が売却手続きを開始しており、評価額は約20億ポンドに設定されているという。
これは、JD.comによるイギリス大手小売資産の買収に向けた3度目の試みとなる。同社は2024年にイギリスの家電量販店大手Currysの買収に乗り出し、2025年にはイギリスのスーパーマーケットチェーンであるセインズベリーズ(Sainsbury’s)が展開する百貨店ブランドArgosの買収交渉を行ったが、いずれも断念している。試行錯誤を経て、JD.comは欧州市場への浸透において、単なるテスト運用から資産取得および現地化運営という新たなフェーズに移行しようとしている。
5月22日付のスカイニュース(Sky News)が報じたところによると、世界第2位の小売業者であるJD.comが買収意向を表明した。The Very Groupはファッション、玩具、電子製品などを中心とする総合小売業者で、「Very」と「Littlewoods」という二大ブランドを運営しており、年間売上高は20億ポンド(約4,000億円)を超え、約440万人のアクティブ顧客を擁している。
一般的なオンライン小売業者と異なり、The Very Groupの最大の強みは、同社の小売事業と深く結びついた消費金融サービスにある。同グループは独自のプラットフォーム「Key Pay」を通じて「後払い(BNPL)」やリボルビング払いサービスを提供している。顧客獲得コストが高止まりし、現地でのEC競争が激化する欧州市場において、金融サービスに紐付いた440万人ものアクティブな顧客層を確保することは、JD.comが市場参入時の初期段階を飛び越え、即座に事業を軌道に乗せるための重要な戦略となる。
財務データによると、The Very Groupの2025会計年度におけるEBITDAは3億700万ユーロ(約520億円)に達した。1861年に設立され、世界初のカタログ通販を手掛けた同社は、2002年に7億5,000万ポンド(約1,500億円)で売却された後、20年以上にわたってバークレイ・ファミリーの管理下にあった。数ヶ月前、カーライル・グループが財務再編を完了させ、経営権を取得した経緯がある。
JD.comにとって、The Very Groupが保有するイギリス現地での消費金融ライセンスと運営ノウハウは、中国発の越境EC企業が現地で独自に構築することが極めて困難な稀少資産である。JD.comは既にイギリスで「Joybuy」を通じたオンラインショッピングサービスを展開しており、今回の買収が実現すれば、イギリスのEC市場における同社のシェアは大幅に拡大することになる。
本稿執筆時点において、JD.com側からこの買収報道に関する正式なコメントは発表されていない。

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