岐阜大学、刃物学で「切れ味」見える化 感覚とらえる試験機開発

岐阜県関市は刃物の世界3大産地に数えられる。「地域活性化の中核拠点」を目指す岐阜大学は、刃物製造の協同組合である岐阜関刃物会館と2023年8月に包括連携協定を結んだ。24年4月には産学連携による研究拠点「関の刃物サステナブル技術革新拠点」(刃物拠点)を開設。「刃物学」として感覚的な「切れ味」を科学的に解明して数値的な「見える化」を図るとともに、製造法や素材の革新も目指している。

刃物拠点では主に、①品質管理②製造過程の機械化・自動化③新素材開発뗙を共同研究テーマに掲げる。拠点長の畝田道雄工学部教授が最初に研究テーマに選んだのが「包丁の切れ味」だ。「いい刃物」を研究する上で、まず「よいモノサシ」を手に入れる戦略だ。

刃物業界では、紙の束を刃先に載せて何枚切れるかを試す「本多式切れ味試験機」が長年使用されてきた。しかしこれは切断の物理的な性能や耐久性を調べる装置だ。「スパッと切れた」という人の感覚まではとらえられなかった。

そこで畝田教授は、包丁でものを切る一連の動作中に加わる力がどう変化するのかに着目した。岐阜大学に着任した24年9月に研究を始め、26年3月に包丁の切れ味試験機を完成した。はさみの切れ味試験機も完成しており、26年度にはカミソリの切れ味試験機を開発する。

この“モノサシ”を使って、26年度はさらに研究を進める。「よく切れるということはどういうことか。計測した荷重曲線を分析する」と畝田教授は次のステップを説く。一例が6軸の力覚センサーを包丁の柄に装着する研究だ。料理人や主婦、包丁に不慣れな人らの包丁の動きをそれぞれ数値化。感覚的な切れ味との相関関係も分析する。

二つ目の研究テーマである機械化・自動化では、協働ロボットを使った自動研磨による包丁の最終仕上げも研究テーマに挙がっている。畝田教授は半導体研磨などを含む超精密工学が専門で、その知見も応用する。AI(人工知能)活用も課題とする。

もう一つの重要テーマである新素材開発の中心は工学部の吉田佳典教授だ。「地域連携スマート金型技術研究センター」のセンター長も務める吉田教授は特殊鋼メーカーの協力を得て、レーザーによる3次元積層造形で刃物を成形する研究を進めている。

用いるのは刃物用の鋼材を直径50マイクロメートル(マイクロは100万分の1)にした微細金属粉末だ。「粉末床選択的レーザー溶融法」と呼ぶ手法でレーザーの強度や走らせるピッチを変え最適条件を探る。

1年研究を続け「レシピ(作り方)で切れ味が異なることが分かってきた」と吉田教授。畝田式切れ味試験機で計測し、加工条件と切れ味の関係を包丁、カミソリ、はさみでそれぞれ究明中だ。今後は原料の配合を変え、刃物材料以外も試す。「関刃物のオリジナル材料も開発したい」と吉田教授は展望する。

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