「武装した休戦」はこのまま長期化、“面子”を保つ出口をどう作るか

松本 太

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2026.4.30(木)

【本記事のポイント】

・米・イスラエルとイランの戦争は停戦が延長されても和平条件が固まらない「停戦なき停戦」の状態である。表面上の静けさの裏で相互不信と軍事圧力が続き、米国とイランはトーマス・シェリングが表現した「互いに拳銃を向け合い、撃ちたくはないが先に銃を下ろせない2人」に等しい。

・争点の核心はホルムズ海峡であり、米国とイランの双方にとって経済・安全保障上の「銃口」そのものとなっている。加えて、イスラエル、ヒズボッラーなど第3、第4の主体が危機を不安定化させ、偶発的エスカレーションの危険を高めている。

・「武装した休戦」はこのまま長期化し、危機は管理されても解決には至らないおそれが高い。打開には、双方が面子を保ちながら、同時かつ検証可能な形で緊張を下げる「同時に銃を下ろす手順」を設計することが不可欠である。そのためには紛争当事国のみならず、国際社会の関与と圧力が重要となる。

ホルムズ海峡を通過し、原油の積み込みのためにイラク南部バスラ近郊の海上石油ターミナルに係留されているコモロ船籍の石油タンカー「ヘルガ」(資料写真、2026年4月24日、写真:ロイター/アフロ)

極めて不安定な膠着状態

 米国・イスラエルとイランの戦争(以下、「イラン戦争」)が始まってすでに8週間が過ぎた。米国とイランの停戦協議をめぐる現状は、表面上は戦火の拡大が下火になり、外交が機能しているようにも見える。

 だが実態は、停戦が延長されても和平の条件は固まらず、相互不信と軍事的圧力だけが残る、極めて不安定な膠着にある。そして、戦争の人質となったホルムズ海峡は開かず、グローバル経済を深刻に侵食しつつある。

 本稿では、米国の経済学者トーマス・シェリングの紛争理論やゲーム理論を手がかりに、この危機を「2人の敵が互いに拳銃を向け合い、どちらも撃ちたくないが、先に銃を下ろすこともできない」状況と読み解きつつ、現状を評価してみたい。そこから見えてくるのは、いま米国とイランの間で進んでいることは、決して和平への道ではなく、「停戦なき停戦」の脆弱な管理にすぎないという冷厳な現実である。

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