ここ10年ほどで、ジープというブランドは大きく様変わりした。それはアメリカのローカルモデルから、世界ブランドへの変貌といっても過言ではない。

【画像】ジープ アベンジャー 4xeハイブリッド

2014年にフィアットとクライスラーが合併したことにより、ジープ・ブランドの運命は大きく変わった。それまではアメリカやメキシコで作り、主としてアメリカを中心に販売をしていたブランドだったが、フィアット・サイドはより柔軟な対応を取り、新たなコンパクトモデル『レネゲード』を、イタリアのフィアット工場で生産し、しかもフィアット・ブランドのモデルと部品を共有した。それ以前の親会社だったダイムラー(メルセデスベンツ)は、ごく一部でそうした共有を図ったものの、ヨーロッパでの生産までには至らなかった。

そうした姿勢の変化は、主力モデルの『ラングラー』や『グランドチェロキー』などの良さを世界的に知らしめたのか、一時はブランド全体で100万台近くを販売したこともあった(今はだいぶ落ちているが)。

『アベンジャー』は、2023年に誕生したジープ史上最少のモデル。当初はBEVとしてデビューしたものである。プラットフォームなども、かつてのPSA(プジョー・シトロエングループ)が作り上げたCMPを使っている。それだけではなくて、生産はポーランドやブラジルなどで、仕向け地は主としてヨーロッパ市場。そしてなんと、ジープブランドにも関わらず、アメリカ市場は販売しないのである。

◆乗り心地のよさが光る
ジープ アベンジャー 4xeハイブリッドジープ アベンジャー 4xeハイブリッド

さて、新しい『アベンジャー 4xeハイブリッド』に話を戻そう。前述したように、プラットフォームはCMPである。ということは、つい最近試乗したプジョー『208』と同じ。基本的にはシトロエン『C3』とも縁戚関係にあるものだ。さらにメカニカルトレーンは1.2リットル3気筒エンジンに、モーターを組み込んだ6速DCTと、これはプジョー、シトロエンと全く共通している。ただ違うのは、このクルマがさすがにジープだけのことはあり、4WDであること。ただしメカニカルな4WDではなく、後輪をモーターで動かす電動四駆である。そのためか、リアサスペンションはマルチリンクを採用し、4輪独立懸架としている点も他のモデルとは異なる。

例によって、事前の知識なしにクルマに乗ってみると、プジョーやシトロエンとは明らかに挙動が異なる。端的に言うとサスペンションストロークが長く、路面の往なしがうまく、さらに上屋の動きがゆったりとして、明確に乗り心地が良い。

ジープ アベンジャー 4xeハイブリッドジープ アベンジャー 4xeハイブリッド

これだと、「プログレッシブハイドローリッククッション」を採用しているシトロエンC3が形無しだが、C3やプジョー208に対して500kg前後重い車重も、乗り心地には好影響を与えているようだ。サイズ的にはレネゲードよりもコンパクトなのだが、デザイン的にはジープらしさを感じさせて、個人的にはこちらの方が好みである。

シフトが、ピアノタッチの押しボタン式となる以外、操作的には他のある意味の兄弟車種と変わらない。ただ、ドライブモードはそれのないC3は別として、208に対し、スポーツは同じだが、ノーマルはオートとなり、さらにエコはなく、代わりにスノー/サンドというオフロードや滑りやすい路面で効力を発揮するモードが装備される。まあ、4WDであるから、その設定は当然だろうが、今回は試していない。

◆C3、208以上のバリューフォーマネー
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前述した通り車重は1755kgもあり、1270kgのC3や1230kgの208と比べると、性能的にかなりのハンデを負っている印象があるが、なぜかそれはほとんどというか、全く感じられなかった。

今回は新東名を使って静岡までの往復を走ってみたが、120km/hで走れる新東名を使っても、性能的なネガ要素は全く感じられず、どっしりとしたフラットライドは非常に好感が持てた。試乗車はオフロード走行から帰ったばかりらしく、ボディ下回りやサスペンションには、その痕跡が残っていた。今回はそのような場所での試乗はしていないが、過去のジープの例からして、オフロードはお手の物と想像する。

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例によって、いたるところにジープを想起させるアイコンがちりばめられているが、今回面白いと思ったギミックは、ウィンカーの音。まるでドラムを叩いているようなサウンドで、なかなか面白かった。さすがにボディがコンパクトなだけに、ラゲッジスペースには少々狭さを感じたものの、リアシートを倒せば必要十分。日常的にはリアシートを使ってもまあ、最低限荷物を積める印象である。

車両価格は本体が499万円。ドラレコやETCなどのオプションを追加しても512万1890円。シトロエンの374万円、プジョーの389万円(いずれも車両本体価格)に比べれば確かに高いが、こちらは4輪独立懸架の足回りに4WDである。しかも乗り心地が良い。となればバリューフォーマネーはこちらではないか? これは有りである。因みに高速を多用した影響もあって、燃費は15.6km/リットルとそこそこである。

佇まいも含めて、今やジープといってもその雰囲気はどことなくヨーロッパ調と感じてしまった。

ジープ アベンジャー 4xeハイブリッドジープ アベンジャー 4xeハイブリッド

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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