2026年4月27日から、東京国立博物館で、特別企画「アイルランド チェスター・ビーティー・コレクション 絵巻と絵本のたからばこ」が開催されます。本展は、アイルランド・ダブリンにある文化施設、チェスター・ビーティー・ライブラリーが所蔵する日本美術コレクションの中から、選りすぐりの物語絵を紹介するものです。これらの作品がまとまって日本で公開されるのは、実に38年ぶりとなります。
アイルランド チェスター・ビーティー・コレクション 絵巻と絵本のたからばこ
会場:東京国立博物館 本館(東京都台東区上野公園13-9)
会期:2026年4月27日(月)~7月20日(月・祝)
※会期中、一部展示替えがあります
開館時間:9:30~17:00
※入館は閉館の30分前まで
※金曜・土曜、5月3日(日)~ 5月5日(火・祝)、7月19日(日)は20:00まで開館
休館日:月曜日
※4月27日(月)、5月4日(月・祝)は開館
入館料:一般1,000円、⼤学⽣500円
問い合わせ先 050-5541-8600(ハローダイヤル)
詳しくは公式サイト へ
Images Courtesy of the Trustees of the Chester Beatty Library, Dublin.
日本の物語絵を6つのテーマで紹介
ヨーロッパの北西部に位置するアイルランドの首都ダブリンには、チェスター・ビーティーという文化施設があります。ここには、アメリカの鉱山開発で成功し、世界の様々な美術作品を収集したアルフレッド・チェスター・ビーティー卿(1875–1968)のコレクションが収蔵されています。彼は1917年に来日した際、日本の絵巻や絵本に強い関心を寄せ、収集を開始します。そのコレクションは、ヨーロッパにおいて随一ともいわれ、日本の物語絵の魅力を今に伝えています。
本展では、チェスター・ビーティー・コレクションに含まれる絵巻や絵本を、「王朝物語」「説話・軍記」「異類・異界」「芸能」など、6つのテーマに分けて紹介します。なかでも注目されるのが、狩野山雪による《長恨歌絵巻》。玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋を描いた豪華な作品で、同コレクションを代表する名品のひとつです。また、『源氏物語』をはじめとする王朝物語の絵巻では、和歌を基盤とした繊細な恋愛表現や、華やかな宮廷文化の一端をうかがうことができます。これらの作品は、日本文学と美術がそ密接に結びついて発展してきたことを実感させてくれるでしょう。
チェスター・ビーティー卿
狩野山雪筆 長恨歌絵巻(巻上、部分) 江戸時代・17世紀 絹本着色 4月27日(月)~6月7日(日) チェスター・ビーティー蔵
源氏物語絵巻(巻一、部分) 江戸時代・元禄元年(1688)頃 紙本着色 チェスター・ビーティー蔵
異界や英雄譚 広がる物語世界の魅力
説話や軍記を題材とした作品群も見どころのひとつです。武蔵坊弁慶や源義経といった英雄たちの物語は、当時の人々にとって教訓や理想像を伝える重要な役割を担っていました。
さらに、御伽草子に描かれる異類や異界の物語も紹介されます。鬼や動物といった存在との交流や、地獄・異国をめぐる幻想的な世界は、現代の私たちにとってもなお新鮮な驚きに満ちています。 こうしたテーマは、妖精や神話が息づくアイルランド文化ともどこか響き合うものであり、ビーティー卿がこれらの作品に惹かれた理由の一端を感じることができるでしょう。
武蔵坊縁起絵巻(巻中、部分) 室町時代・16世紀 紙本着色 チェスター・ビーティー蔵
酒呑童子絵巻(巻下、部分) 江戸時代・17世紀 紙本着色 チェスター・ビーティー蔵
絵巻が生み出す「語り」の世界
中世以降に発展した芸能と結びついた物語絵も紹介されます。語り物として楽しまれた物語は、視覚化されることで、より豊かな想像力を喚起する装置となりました。
《義経地獄破り》や《村松物語絵巻》といった作品では、当時の社会背景や価値観までもが巧みに表現されています。絵巻は単なる絵画ではなく、物語を伝える総合的なメディアであったことが実感できるでしょう。
義経地獄破り(上、部分) 江戸時代・17世紀 紙本着色 チェスター・ビーティー蔵
海外に渡った日本美術、そして再び日本へ
チェスター・ビーティー・コレクションは、日本国内では確認されていない作品も含むなど、質・量ともに極めて充実した内容を誇ります。海外に渡った日本美術がどのように保存され、評価されてきたのかを知る貴重な機会でもあります。
近年、日本とアイルランドの文化交流はますます活発化しています。本展は、美術を通じた両国のつながりに思いを馳せる場ともなるはずです。絵巻や絵本の中には、一見すると物語が描かれていないように見えながらも、その背後に豊かな世界が広がっている作品も少なくありません。画面の細部に目を凝らし、想像力を働かせることで、より深く作品を味わうことができるはず。38年ぶりに日本で紹介される珠玉のコレクション。物語とともに広がる多彩な世界を、会場でじっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)
伊藤若冲筆 乗興舟(部分) 江戸時代・明和4年(1767)頃 紙本拓版 チェスター・ビーティー蔵

WACOCA: People, Life, Style.