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世界の温泉を楽しむことができる大阪市浪速区の「スパワールドホテル&リゾート(スパワールド)」で3月14日、サウナでパフォーマンスするアウフグースのイベントが行われ、延べ約1300人が参加した。イベントをプロデュースした日本サウナ・スパ協会「サウナ大使」である「マンガ家、タナカカツキ氏」は「サウナは単なる流行でなく、身体感覚を取り戻す社会的な動きだ」と説く。
サウナについて熱弁するタナカ氏(杉浦美香撮影)
サウナはデジタル・デトックス
タナカ氏は、サウナ好きが高じて自身の体験をユーモラスに描いた「マンガ サ道」で、サウナブームの火付け役となった。そんなタナカ氏にサウナの魅力について聞いた。
人間は自然の中で寒暖差を日常的に体験してきた。内風呂がない時代、銭湯の道中は冷気を浴びていた。しかし、風呂がどの家庭にも備えられるようになり、内風呂で血管が開き、風呂から出ても温かい部屋で過ごすことで血管は開きっぱなしになってしまうようになった。熱中症なども、昔より増えている。生理機能が崩れる中、デジタル・デトックスを求め、キャンプやサウナが流行るようになった。
「情報過多な外的ストレスから離れる希少な時間を与えてくれるのがサウナだ」とタナカ氏は話す。
「ととのう」を生んだ日本のサウナ文化
日本のサウナ文化は、歴史的な入浴習慣とも深く結びついている。
タナカ氏によると、仏教伝来(約6世紀)とともに温浴が伝わった。その頃は基本的に蒸し風呂で、湯に庶民がつかるようになったのは江戸時代だった。「湯屋は外に設けられており、(現代のサウナのように)水に入らなくても自然と冷やされていた」という。
イベント告知のタナカ氏のイラスト。赤やオレンジではなく、水風呂の青でサウナのイメージチェンジをはかっている
「温めて冷やす」というリズムが、現代のサウナと重なる。サウナ発祥はフィンランドとされるが、日本も長らく「蒸し風呂」を楽しんできた。つまりそれはサウナ浴のことである。
サウナ室→水風呂→休憩。この繰り返しで、自律神経の働きがよくなり、リラックスすることを「ととのう」と表現する。この「ととのう」が、サウナが愛される大きな理由だ。
「当初、私は温(サウナ室)と冷(水風呂)の後、風に吹かれるような心地よくなる状態をサウナトランスとかサウナ中毒といった言葉で表現していたが、『マンガ サ道』を描き始めたとき、トランスや中毒といった言葉は印象がよくないため、愛好家の間で使われていた『ととのう』という表現をひらがなで使い始めた」と説明する。

独自の日本流のサウナ
日本のサウナは欧州と異なり、独自の発展を遂げてきた。
「欧州は健康産業がサウナを扱っているが、日本はレジャー産業がサウナを手がけている」とタナカ氏。
日本はアニメ然り、コンテンツを作る国。そこで、風呂のコンテンツを作っていった。だから、サウナ室にテレビがあり、施設にはゲームコーナーがあり漫画本を備えている。一方、ヨーロッパは健康産業、ウェルネスカルチャーとして発展し、静かで人工物を持ち込まない。
笑いあり、音楽ありのパフォーマンス。SPAのスタッフ㊧も出演した(杉浦美香撮影)
「欧州から見ると、サウナにテレビがある日本はまさにクレイジーに思える」とタナカ氏。
一方、日本も最近は、新しいサウナは欧州型の静かな自然回帰に変化しているという。
ところが、この日本のクレイジーさを求め、海外から訪れるサウナ愛好家もいるという。
「日本にしかないレジャー型サウナは海外客を惹きつけるよいコンテンツでもある」と話す。
アウフグースマスターと熱波師の違いは?
イベントでは、世界大会にも出場した日本でも有数のアウフグースマスターらが集結した。しかし、日本では、熱波師の方が一般的だ。違いは何なのか?
「熱波師は、温浴施設のスタッフがエンタメ的に始めた日本固有のものだ。タオルを上下し、熱々の蒸気を客に個別に送る。一方、アウフグースマスターは、管理人(マスター)として部屋にアプローチし、温湿度や香りを管理し、最適な環境を作りあげる。マスターになるには講習を受けなければならない」とタナカ氏は説明する。
アウフグースはドイツで始まった。ショーパフォーマンスとしてはイタリアで花開いたという。
参加者らがアウフグースマスターらを携帯で撮影していた(杉浦美香撮影)
「(熱波師、アウフグースマスターの)どちらがいい、というのではなく両方が盛り上がればいい」とタナカ氏。
最近は、バルト三国発祥の白樺やオークなどの枝葉を束ねたウィスクを使って、蒸気と植物の香りでリラクゼーションさせるウィスキングを行う施設も増えてきた。イベントでもウィスキングが行われ、人気だった。
ウィスキングのハーバルリトリートを受ける参加者(杉浦美香撮影)
タナカ氏と武内祐美さん(杉浦美香撮影)

「びっくりさせたれ」のスピリット
スパワールドが約13億5000万円かけ、140人を収容できるサウナシアターを含む大規模リニューアルしたのは昨年11月のことだ。
140人を収容できるサウナシアター。広々としている(杉浦美香撮影)
「(いろんな国の温泉がある)世界の大温泉など、ここは『びっくりさせたれ』が原動力。ふつうはいきなり140人収容できるサウナ室を作らない。部屋が大きくなると、管理するソフトが必要になるが、それをおいといてまずハードを作ったのはすごい」とタナカ氏は評価する。ハードがあれば、ソフトは後から生まれる。「まつり」企画はその一つだった。
サウナシアターを出ると8度、16度、20度の3種類の温度の水風呂が楽しめる(杉浦美香撮影)
イベントには北海道から「推し」のマスター目当てに駆け付けた人や、フランスへの帰国日を延期して参加したエンジニアもいた。
スパワールドを運営する阪神住建社長、岩崎圭祐氏は「笑いとノリ、盛り上がりが大阪のサウナならではだ。日本の文化として広めたい」と話す。
岩崎社長(左)とタナカ氏(杉浦美香撮影)
サウナの行方
タナカ氏によると、日本のサウナブームは2014年頃から始まった。日本サウナ・スパ協会が熱したサウナ・ストーブに水をかけて蒸気を作るロウリュの導入を推進、乾式サウナから蒸気で温まるサウナへと転換が進んでいる。情報も充実しており、今はサウナの内容を一括で検索できるようになった。
推しの演者のグッズを手に記念撮影するファン(中央)(杉浦美香撮影)
それでは今後、サウナはどこへ向かうのか。
タナカ氏は「情報化社会が進み、デジタル社会が巨大化していくにつれ、置いてきぼりになってしまった身体感覚がさらに求められる」と指摘。そのうえで「レジャー型の従来の日本式サウナは淘汰され残念ながら減る。その代わり、エンターテイメントに徹した、例えば遊園地やサファリパークといった人のにぎわいがある所にサウナが入ってくるのではないか」と予測する。
サウナは、日本の温泉文化と共に自然回帰、レジャーコンテンツ、身体感覚の回復という三つの要素が交差した日本版ウェルビーイングに発展しそうだ。
筆者:杉浦美香(Japan 2 Earth編集長)
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