
2025年10月、訪日を終えたトランプ米大統領の出発に備え、日本と米国の国旗が掲げられた羽田空港で警備にあたる警備担当者。REUTERS/Evelyn Hockstein
[東京 21日 ロイター] – すべての武器を輸出可能にする日本の防衛装備移転三原則の運用指針見直しは、今後具体的な案件を判断していく中で唯一の同盟国である米国への輸出が論点となる可能性がある。 改定した指針は、殺傷能力を持つ装備の輸出先を「自衛権の行使目的のみに使用する国」に限定したが、イランとベネズエラへの攻撃が示すように、米国による最近の武力行使を国際法違反とみる声は根強い。
<2つの制約>
米国は今年1月にベネズエラに軍事介入し、2月にはイランを攻撃した。イランへの攻撃についてトランプ米大統領は国際法上認められない「先制攻撃」と表現した。これに対しイェール大学やスタンフォード大学、ジョンズ・ホプキンズ大学などの米国の国際法専門家100人以上が4月13日、「国連憲章に対する明確な違反」との共同声明をウェブサイトに掲載した。
関連記事:殺傷能力ある武器の輸出可能に、政府が移転装備三原則の運用指針見直し
ニューヨーク大学法科大学院が運営する電子版ジャーナルに載った同声明は「他国に対する武力行使は、現実に発生している、または差し迫った武力攻撃に対する自衛の場合、もしくは国連安全保障理事会の承認がある場合にのみ認められる」とし、米国とイスラエルを批判した。
日本政府はミサイルや戦闘機などにまで輸出品目を拡大するに当たり、運用指針に2つの制約を盛り込んだ。1)自衛権の行使のみに使用することを日本と約束した国に限定する、2)「武力紛争の一環として現に戦闘が行われていると判断される国」に対しては原則として認めない──の2点だ。
<あいまいな可否>
では、「先制攻撃」を辞さない米国からミサイルなどの輸出を要請された場合はどうなるのか。米国とイランの紛争は現在も続いており、新指針の下で許可できるのか。
ロイターの問い合わせに対し、武器輸出の審査を主導する内閣官房の国家安全保障局(NSS)は「日本政府として、米国の行為が国際法上どう評価されるかについて判断していない」と回答した。「個別の移転の可否を判断する際には、武力紛争の一環として現に戦闘が行われていると判断されるかどうかを検討する。イラン情勢は流動的で、現時点では答えられない」とした。
そもそも、「現に戦闘が行われていると判断される国」という表現自体があいまいだ。戦闘が行われているのはイランとその周辺地域であり、米国本土ではないことから、形式的には輸出が可能と解釈し得る。NSSに確認したところ、米国国内は「現に戦闘が行われていない」ことから輸出は可との整理だった。一方で、「国際的な平和や安全への影響などもこれまでも考慮しており、より広い文脈では判断材料となる」とも述べ、可否はいずれにも転び得るとの認識を示す。
<制約抵触に例外規定>
仮に2つの制約に抵触しても、改定指針は例外規定を設けている。「わが国の安全保障上の必要性を考慮して特段の事情がある場合」には輸出を認めるとする内容だ。NSSは具体例として「日本の防衛義務を持つ米国が、武力紛争の一環として現に戦闘が行われていると判断される国になった場合でも、日本の防衛と直結するインド太平洋地域の体制維持のために米国が必要とするケースは、概念的にはあり得る」と説明した。
政府は新指針の下で許可した個別案件について、国会に事後通知するにとどめる方針で、事前承認や十分な国会論戦は想定していない。自民党との連立を昨年解消した公明党は、殺傷能力の高い武器の輸出や前例のない案件については閣議決定を行うよう提言している。立憲民主党や、同党と公明党の衆院議員が合流して発足した中道改革連合も、国連憲章順守の堅持を求めている。日本共産党は、国会の事前承認が不要とされている点を批判している。
高市早苗首相は運用指針を改定した21日午前、「国際的な輸出管理の枠組みを順守し、案件ごとに一層厳格に審査します」とソーシャルメディアのXに投稿した。「移転先での適正な管理もしっかり確保します。 さらに、移転先は、国連憲章に適合した使用を約束する国に限定します」とした。
ウクライナへの軍事支援などでミサイル不足に直面した米国は、自国の在庫向けとして日本に迎撃ミサイル「パトリオット」の輸出を要請し、日本は2025年に移転を実施した。米国内の防衛産業は、人件費の上昇や移民規制強化などでサプライチェーンがひっ迫しており、今後も不足するミサイルなどの供給を日本に求める可能性がある。
武器輸出に関与してきた防衛省関係者は「米国への武器輸出をどう位置づけるかは、政府内で以前から議論になってきた」と明かす。「日本の安全保障を米国に依存する以上、いかなる状況でも輸出を認めないという選択肢は現実的ではない」
(久保信博 編集:石田仁志)
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

WACOCA: People, Life, Style.