際限なくスクロールしてしまう衝動は、オーストラリアが16歳未満による主要ソーシャルメディアの利用を禁止した理由の1つだ

際限なくスクロールしてしまう衝動は、オーストラリアが16歳未満による主要ソーシャルメディアの利用を禁止した理由の1つだ

Keystone / Christof Schuerpf

オーストラリアを皮切りに、子どものソーシャルメディア利用を制限する動きが各国に広がっている。スイスでも規制に向けた議論が進むなか、専門家や市民団体は、年齢制限だけで問題は解決しないと指摘する。議論は、アルゴリズムや収益モデルを含めた、より包括的な規制にも及んでいる。

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2026/04/20 08:00

人工知能が社会や日常生活に与えるリスクや機会、具体的な影響について分析。2020年にSWI swissinfo.chに入社。科学技術の複雑さを世界中の読者にわかりやすく伝える。
ミラノでイタリア系エジプト人の家庭に生まれ、子供の頃から知識と文章を書くことに情熱を注ぐ。ミラノとパリでテクノロジー雑誌の多言語編集者として働いた後、SWI swissinfo.chで国際ジャーナリズムに転身。

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ソーシャルメディアの年齢制限をめぐる議論は、世界各国で長年続いてきた。その中で、いち早く具体策に踏み切ったのがオーストラリアだ。2025年12月、同国は16歳未満の子どもによるTikTok、Instagram、YouTubeなど大手10社のプラットフォームへのアクセスを遮断した。同国のアンソニー・アルバニージー首相はこの措置について、「オーストラリアの家庭がビッグテックから主導権を取り戻した日だ」と発言外部リンクした。

大手テック企業のプラットフォームに対する監視の動きは、他の地域にも広がっている。アメリカでは先日、Meta(Facebook、Instagram、WhatsAppを運営)やGoogle傘下のYouTubeが、 児童の性的搾取外部リンク、メンタルヘルスの悪化、SNS依存外部リンクを助長したとして、裁判で責任を問われる事例が相次いだ。

オーストラリアの動きは、他国にも波及している。スペインやフランス、イギリスでも、同様の規制の導入を検討中だ。

スイスでも対応が慎重に議論されているが、専門家や市民社会団体は、利用者の属性だけでなく、プラットフォームやアルゴリズムの仕組みと、それが利用者に与える影響にも着目すべきだと指摘する。

スイスでは、通信プラットフォームや検索エンジンを規制する新法外部リンクの制定が長年先送りされてきたが、最近、政党や民間企業、関連団体を対象とした意見募集が始まった。この法案は、悪用行為を通報する仕組みの整備をプラットフォームに求めている。一方で、有害コンテンツの排除や若者の保護を義務付ける規定はなく、大手テック企業が違反した場合の罰則も盛り込まれていない。

特に問題視されているのは、利用者が閲覧するコンテンツや利用時間を左右する人工知能(AI)を活用したチャットボットやシステムが、規制対象からほとんど外れている点だ。

これを重大な欠陥だと指摘するのが、オーストラリア出身でクイーンズランド工科大学デジタル・メディア・リサーチ・センターのセンター長を務めるダニエル・アンガス氏だ。

「社会全体のためにプラットフォームを改善したいと考えるなら、誰が利用できるかという点だけでなく、その設計や収益モデルにまで踏み込む必要がある」

安易な規制の問題点

アンガス氏はオーストラリアのこの法律について、非常に安直で、オンライン上の危険を生み出す構造的な要因に対処できていないと厳しく評価する。「この法律は、子どもを支援したり教育したりするものではなく、根本的な問題の解決には繋がらない」

同氏によると、問題の本質はプラットフォームのビジネスモデルにある。こうしたサービスはAIアルゴリズムを活用し、利用者を分析して関心を引き付け、利用時間を延ばすことで広告収入を得ている。

また、コンテンツの推薦システムは、仕組みが不透明なまま運用されているケースも多い。同氏は、こうしたシステムの透明性向上を企業に求める規定が含まれていない点も、この法律の課題として指摘する。

さらに、子どもをプラットフォームから排除することで、有害な投稿や広告の規制を求める政治的圧力が弱まる可能性があるとも懸念する。子どもが利用しなければ、投稿内容の監視強化を求める声も上がりにくくなるためだ。

同氏はこう問いかける。「なぜ子どもを締め出すかわりに、プラットフォームを整備しようとしないのか。なぜ有害なコンテンツを排除し、すべての利用者の体験を改善しようとしないのか」

オーストラリア人のこの少年は「この法律のせいで、16歳未満はソーシャルメディアが使えなくなった」と話す。スマートフォンの画面には、ソーシャルメディアへのアクセスが遮断されたことを示すメッセージが表示されている

オーストラリア人のこの少年は「この法律のせいで、16歳未満はソーシャルメディアが使えなくなった」と話す。スマートフォンの画面には、ソーシャルメディアへのアクセスが遮断されたことを示すメッセージが表示されている

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オーストラリア当局は規制を擁護

こうした批判がある一方で、オーストラリア政府は自国の取り組みを擁護している。オーストラリアのオンライン安全規制事務局の広報担当者はスイスインフォの取材に対し、この規制は、より包括的な枠組みの一部にすぎないと説明した。

この枠組みには、オンライン上の不正使用やいじめに加え、ディープフェイクなどのAI生成素材を含む違法コンテンツへの対策も含まれる。また当局は、プラットフォームに対し、AI関連のリスクにどう対処しているかの情報提供を求める権限を持つという。

広報担当者によれば、こうした措置はすでに具体的な効果を上げている。その一例として挙げたのが、イギリス企業の有名な「ヌード化」サービスだ。AIを利用して、主に子どもの性的なフェイク画像を生成するこのサービスは、オーストラリア市場から撤退したという。

初期データが示す効果と限界

規制開始後に初めて公開されたデータは、評価が分かれる内容となった。ソーシャルメディア各社は、子どもと紐付けられた数百万件のアカウント外部リンクを削除したと報告した。また、政府の調査外部リンクに参加した保護者の61%が、対面での交流が増えるなど、子どもに前向きな変化が見られたと回答している。

一方で、いくつかの懸念点も浮かび上がっている。約4分の1の保護者は、子どもが規制対象外の別のプラットフォームへと移動し、他者との交流や創造的な活動が減少したと報告した。

さらに、オーストラリアの複数のメディアは、アカウント規制が容易に回避できる可能性を報じている外部リンク。こうした問題は、UNICEFオーストラリアが規制開始以前に公表したレポート外部リンクでも指摘されていた。2024年に13~17歳のオーストラリア人の若者2000人以上を対象として実施された調査では、約4人に1人がアクセス制限を頻繁に回避していると回答した。同団体で政策・アドボカシーを担当するケイティー・マスキール氏はこの結果を踏まえ、同レポート外部リンクで次のように述べている。「このことは、単なるアクセス制限ではなく、より安全なデジタルプラットフォームの構築が重要であることを示している」

アンガス氏もまた、同様の傾向を認めている。「禁止措置があるにもかかわらず、若者が今もInstagramを使い続けているという話を日常的に耳にする」

スイス法案をめぐる方針の衝突

スイスでは現在、法案をめぐる議論が進んでいるが、すでに意見の対立も生まれている。

この法案はプラットフォームに対し、コンテンツ削除やアカウント停止の理由を利用者に説明すること、またその決定に対する異議申し立てを可能にすることを義務付ける。また、内部の苦情処理システムを通じて、利用者が違法コンテンツを通報できる仕組みの整備も求めている。一方で、企業側が有害コンテンツを未然に防ぐ義務については一切の規定がない。AIやアルゴリズムの監視に取り組むスイスの市民団体AlgorithmWatch CHのシニア政策マネージャー、エステル・パナティエ氏は、「プラットフォームがリスクを把握していたとしても、それに対処する義務はないことになる」と指摘する。

こうした背景から、多くの市民社会団体は、推薦アルゴリズムに対してより厳格な規制を設けるべきだと主張している。利用者を有害コンテンツへと誘導して長時間の利用を促し、センシティブな情報を広告目的で悪用する可能性があるためだ。

さらに、ソーシャルメディアや検索エンジンへの統合が進む生成AIチャットボットについても懸念を示す。通信プラットフォームが個人の意見形成に干渉し、民主的なプロセスに広く影響を及ぼす可能性があるとの見方だ。デジタル社会の消費者保護に取り組む市民団体、デジタル協会の共同ディレクター、ラーエル・エスターマン氏は次のように指摘する。「現在のスイスには、たとえ民主制が脅かされる事態が生じた場合でも、プラットフォームに効果的に介入できる手段が存在しない」

一方、産業界はこれと対照的な立場を取る。スイスIT・情報・運営技術経済連盟(Swico)は、このようなソーシャルメディア規制、とりわけAIを含む規制に反対の姿勢を示している。

同団体の法務・対外政策担当責任者であるシモン・リューシュ氏は次のように述べる。「AIにはすでに、個別の規制プロセスが整備されている。この法律でAIまで規制すれば、整合性を欠いた有害な二重規制のリスクをいたずらに高めるだけになるだろう」

問われる規制の焦点

オーストラリアの事例やスイスでの議論は、デジタルプラットフォーム規制の難しさを浮き彫りにしている。

アンガス氏によれば、年齢を基準とした規制は一般に理解されやすいため、政治的にも打ち出しやすい。一方で、より複雑な問題を見過ごすおそれがあるという。「政策として本当に問うべきなのは、商業分野のロジックや、それらのシステムを支えるアルゴリズムにどう対処するかという点だ」

こうした理由から同氏は、スイスを含む各国に対し、オーストラリアのモデルをそのまま採用する前に、慎重な検討を重ねるよう呼び掛ける。その代替例として挙げるのが、欧州連合(EU)のデジタルサービス法だ。この法律は、透明性やプラットフォームの説明責任を重視し、違反した企業には厳しい制裁を科す。例えば、採用している推薦アルゴリズムの仕組みの説明や、子どもを対象とした広告の制限を義務付け、違反した場合には、全世界売上高の最大6%に相当する制裁金を科すことを定めている。同氏は次のように述べる。「ヨーロッパの法律は完璧ではないが、オーストラリアの法律よりもはるかに踏み込んだ内容となっている」

スイス当局は同法案について、関係各所の立場を検討しながら、年内にも今後の方針を定める見通しだ。

編集:Gabe Bullard/VdV/ds、英語からの翻訳:本田未喜、校正:宇田薫

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