元日本代表監督フィリップ・トルシエは、日本代表がイングランド相手に歴史的勝利を挙げたウェンブリーでの一戦を現地観戦した。そのトルシエにインタビューした第2回である(全3回)。

 立ち上がりこそイングランドの圧力を受ける形になったが、トルシエはその状況を「知性」で乗り越えたと称賛する。だがトルシエは「世界チャンピオンになれるだけの力を、日本はいまだ獲得してはいない」と言い切る。彼がそう語る根拠はどこにあるのか。日本の長所と短所を客観的に分析したときに、日本が世界のトップになるために何が欠けているのか。そのうえで挙げた“2つの結論”とは――。

トルシエが語る「知性」とは

――日本代表の攻守における戦術面の優位は、昨日・今日確立されたものではなく、W杯をまたいで6~7年チーム構築を続けてきた結果と言えるのでしょうか。

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「そう言えるが、日本にはボールを支配するDNAが存在する。日本はイタリアのように、守備的な戦略に立脚したチームではない。アジアにおいて日本は、自分たちの真価は攻撃にあるとずっと主張し続けてきた。世界に出たときの日本とは、そこには大きな差があった。それが経験不足によるものなのか、あるいは自信のなさによるものなのかはわからないが。

 この試合でも前半のスタートを見る限り、日本はナイーブな弱小チームに逆戻りした印象を受けた。最初の20分間は、選手の態度に脆さを感じた。イングランドの戦いにおけるフィジカルとアスレチックな力に、完全に支配されていた。

 だが、繰り返して言いたいのは、日本は知性で試合をモノにしたことだ。相手を恐れなかったし遠慮もしなかった。リスク管理は徹底していて、予測を存分に働かせた。それが戦術的な支配に繋がり、スペースを支配することができた。そして攻撃では相手を混乱に陥れた。コレクティブかつ組織的なトランジションによるものだが、加えて堂安律や伊東純也、三笘、中村、佐野らの個の力が大きかった。今回は欠場した久保建英や、スコットランド戦でプレーした前田大然も、相手に積極的に仕掛ける。交代で入った鈴木唯人もアグレッシブだった。今の日本には、攻撃で個のインパクトを与えられる選手が多く存在する」

フランスと試合をしたら、日本は互角に戦えない

――相手との力関係を十分に考慮したうえで、対等の戦いを挑んだと。

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