創造性豊かで美しいブラジルのフットボールに魅せられ、サンパウロへ渡って30年余り。多くの試合を観戦し、選手、監督にインタビューしてきた沢田啓明が、「王国」の今を伝える。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第27回(通算205回)は、フランスに完敗、クロアチアに快勝で先月の代表ウィークを終えたセレソン(ブラジル代表)の現状と展望について。
レギュラーを欠くと…日本とは対照的
3月末に北米で行われた欧州の強豪2カ国との強化試合で、W杯を2カ月後に控えたセレソンの強みと課題が浮き彫りになった。最大の課題は、連係不足に起因するチームとしての完成度の低さだ。
カルロ・アンチェロッティ監督が就任してからまだ1年足らず。CF、両SBを除いてレギュラーはほぼ固まったものの、攻守両面で連係が物足りない。また、レギュラーが故障などで欠場した場合に、控え選手が同レベルのプレーができない。控え選手やそのまた控え選手が出場してもレギュラーと遜色がないプレーを見せる日本代表とは対照的なのである。
26日のフランス戦では、守備の要であるCBマルキーニョス(パリ・サンジェルマン)が体調不良のため、またCBガブリエウ・マガリャンイス(アーセナル)とボランチのブルーノ・ギマランイス(ニューカッスル)が故障のため欠場。守備陣は、フランスの流れるようなパスワークに翻弄された。
両SBの守備力の弱さも悩みの種だ。W杯では、右SBに本来はCBのエデル・ミリトン(レアル・マドリー)を転用する可能性が高い。
攻撃陣は、エースの役割を果たすべきビニシウス(レアル・マドリー)が技術的、判断面のミスを連発し、ガブリエウ・マルチネッリ(アーセナル)らが数少ない決定機を外した。
右SBウェズレイ(ローマ)が相手CBの退場処分を誘発し、後半のほとんどの時間帯を1人多い状況で戦いながら、1-2で敗れた。数少ない収穫は、後半から右ウイングとしてプレーしたルイス・エンリケ(ゼニト)。パワーとスピードを生かしたドリブル突破で奮闘した。とはいえ、試合全体からすれば、スコア以上の完敗だった。
フランス戦のハイライト動画。32分(ムバッペ)と相手が10人になった後の65分(エキティケ)に失点し、78分にFKからDFブレーメル(ユベントス)が1点を返すのが精一杯だった
5日後のクロアチア戦ではマルキーニョスが復帰。アンチェロッティ監督は、右SBに本来はCBのロジェール・イバニェス(アル・アハリ)を起用して守備を強化した。
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Profile
沢田 啓明
1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。

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