東京都江戸東京博物館(江戸博)が、約4年にわたる大規模改修を経て、2026年3月31日、リニューアルオープンしました。今回の刷新は単なる設備の更新に留まりません。建築家・重松象平氏の監修による建物内外の空間デザインや、最新のデジタル技術の導入、そして「中に入れる」大型模型の拡充など、江戸・東京の物語を身体全体で楽しむ「没入型ミュージアム」へと進化を遂げています。
東京都江戸東京博物館 リニューアルオープン
会場:東京都江戸東京博物館(東京都墨田区横網1-4-1)
再開館日:2026年3月31日(火)9:30~
休館日:月曜日(祝日・振替休日の場合は開館、翌平日休館)、年末年始
常設展観覧料:一般800円、65歳以上400円、大学生480円、高校生300円
※中学生以下:無料
※特別展の観覧料は別途定められます
アクセス:JR総武線 両国駅西口下車 徒歩3分/都営地下鉄大江戸線 両国駅 A3・A4出口 徒歩1分
詳細は、東京都江戸東京博物館公式サイトへ。
現代から江戸へ、視覚と感覚を揺さぶるタイムトラベル
エントランスを入り、まず目を引くのが、西側アプローチに新設された「鳥居」を想起させるモニュメントです。LEDパネルを内蔵し、現代から明治・大正を経て江戸へと向かう人々の姿が投影され、訪れる人を視覚的に江戸の世界へと引き込みます。3階「江戸東京ひろば」では、約4,000㎡の天井面を使った大規模なプロジェクションマッピングが展開されます。(上映時間は公式サイトへ)
西アプローチ
常設展示入り口6階に行くと中央に実物大で再現した日本橋(北側半分)、天井付近に新設されたスクリーンに江戸と現代の空が交互に映し出されます。左が江戸ゾーン、右が東京ゾーン、その先には「のれん」が新たに設置されました。
「暮らし」のなかに迷い込む、圧倒的なワクワク感
象徴的な「日本橋」を渡った先ののれんの奥に広がるのは、「寛永の町人地」を再現した精巧な模型。活気あふれる町人地や威風堂々とした大名屋敷、そして幕末の「江戸城」までもが目の前に蘇ります。また、将軍家や大名家にゆかりのある貴重な歴史資料も多数展示されています。
魚売りの天秤と屋台
5階の江戸ゾーンでは、江戸時代の「活きた」町並みが再現されています。朝顔売り、揚げたての天ぷらを売る屋台などが配置されました。当時の賑わいや生活の息遣いが聞こえてくるような臨場感が加わりました。
江戸の庶民の住まいを再現した「棟割長屋」では、一室のみ今回のリニューアルで実際に部屋のなかに入ることができるようになりました。四畳半という限られた空間に、どのように家財道具が置かれ、人々が身を寄せていたのか。その狭さや道具の手触りを身体感覚として味わうことで、当時の生活がリアルに立ち上がってきます。
中村座の大型模型
大型展示、江戸の娯楽の象徴である芝居小屋「中村座」も、中に入れるようになりました。当時の人々を熱狂させた芝居の熱気を肌で感じ、江戸の人々と同じ目線で空間を体感できます。
歌舞伎小屋の鳴り物も見られる
近代化のエネルギーを象徴する、新たなランドスケープ
服部時計店の大型模型
東京ゾーンに目を移すと、ひときわ目を引くのは高さ26㍍の大型模型、服部時計店です。それは明治20年代の銀座の繁栄を象徴するものでした。展示室の天井に届きそうなほどの圧倒的なスケール感は、近代都市へと急成長を遂げる東京のエネルギーを象徴しており、その迫力に圧倒されます。
銀座煉瓦街の模型
服部時計店の内部では、銀座煉瓦街やニコライ堂の精巧なジオラマや、当時の華やかな貴族文化を伝える「鹿鳴館」に関する展示なども楽しむことができます。これら三つのジオラマはそれぞれ、1時間に3回ずつ動きます。
ニコライ堂の模型
世代を映し出す「現代の東京」展示
「現代の東京」コーナーでは、1960年代から2010年代までを10年ごとに6つの時代に分けて紹介しています。それぞれの年代で生まれ、そして消えていった都市風景や、注目を集めたモノ・事象をたどることで、巨大都市・東京がいかにして形成されてきたのかを俯瞰できます。展示対象が2010年代まで延伸された点も見逃せません。
「あ、これ懐かしい!」と、どの展示に強く反応するかで、その人の世代が分かってしまうかもしれません。家族や友人と訪れれば、それぞれの記憶を呼び起こしながら会話に花が咲くこと間違いなしの展示空間となっています。
80年代にはボディコンの服、90年代にはルーズソックスやiMacが展示
あらゆる来館者に開かれた、未来の博物館
楽しみ方は、ただ見るだけではありません。スマートフォンでQRコードを読み込めば、13言語対応の音声ガイドが聴けます。また、各所に配置された「触れる模型」や「乗れる模型」など体験できるものや、解説動画は直感的に理解できる工夫が凝らされており、歴史の面白さを肌で感じることができます。
収蔵資料約35万点という膨大な蓄積を背景に、最新の演出と身体的な体験を融合させた新しい江戸博。東京という都市のダイナミズムを五感で楽しむための「エキサイティングな拠点」へと生まれ変わりました。新しくなったこの場所を訪れれば、誰もが自分だけの「江戸東京の物語」をワクワクしながら発見できるでしょう。
現在、期間限定で、所蔵する甲冑11領(~5月10日)と《名所江戸百景》(~4月26日)も展示中。ぜひお出かけください。(ライター・akemi)
甲冑11領の展示風景(~5月10日)
【ライター・akemi】きものでミュージアムめぐりがライフワークのきもの好きライター。きもの文化検定1級。Instagramできものコーディネートや展覧会情報を発信中。展覧会に合わせたコーディネート。今回は、桜の半衿と帯、ピンクの帯締め・帯揚げで春らしい装いにしました。

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