「いい子はもうやめる」副首相は“自国ファースト”に舵、EU単一市場がもたらした皮肉な事態

松沢 みゆき

松沢 みゆき
在スウェーデンのジャーナリスト

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2026.4.15(水)

ヨーロッパ エネルギー・資源

「いい子はもうやめる」と宣言したスウェーデンのエバ・ブッシュ副首相兼エネルギー産業大臣(写真:ロイター/アフロ)

ホルムズ海峡が緊迫し、「原油が止まったら日本はどうなる」という話が飛び交っている。一方、EUでは別のエネルギー危機も進行している。欧州の「脱炭素の優等生」スウェーデンがEUのエネルギー政策に反旗を翻したからだ。

 スウェーデンの電源構成は、おおまかに言って水力約40%、原子力約30%、風力約20%。化石燃料への依存は極めて低く、国内で消費するより多くの電力を作り出している。いわば、欧州有数の電力輸出国だ。余った電気はドイツやデンマーク、バルト三国へ輸出され、欧州全体の電力需給を支えてきた。

 ところがこの国で今、不思議な現象が起きている。

「電気は足りているはずなのに、なぜ値上がりするのか?」

 その答えが、欧州の電力市場の複雑な構造に隠されている。

「いい子はもうやめる」スウェーデンのEUへの“宣戦布告”

 EUは「電力を国境を越えて自由に売買できる単一市場」を目指してきた。この仕組みのせいで、スウェーデンの電気料金は、ドイツやフランスの電力事情にも影響されるようになってしまった。自国で電気が余っていても、他国の事情で価格が上がる。そんな理不尽な状況がスウェーデンを苦しめているのだ。

 そしてその矛盾が今、スウェーデン政府とEUの全面衝突として表面化した。

 2026年3月16日、スウェーデンのエバ・ブッシュ副首相兼エネルギー産業大臣が、EU提案に対してこう言い放った。

「いい子はもうやめる」

 これはほとんどEUへの“宣戦布告”だった。いったい何がそこまで彼女を怒らせたのか。争点は大きく2つある。

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