中国から「Qwen」や「Doubao」、「DeepSeek」といった有力な大規模言語モデル(LLM)が続々と登場している。ニュースでも、AIエージェントを活用してライフハックを実践する中国人の姿がしばしば話題に上る。ハードウェアの面では中国産GPUも登場しており、国の号令の下、AIデータセンターと発電施設がセットで建設されている。来るべきAI時代に備え、東部沿岸部で処理を依頼し、西部内陸部で実際の処理をする「東数西算」プロジェクトの実現を目指しているのだ。

 しかし、そんな中国でAI人材が不足している。調査にもよるが、数百万人単位で不足しているという。「そんなことはないだろう」と思うかもしれないが、中国政府の2026年の政府工作報告では「ハイテク強国となるべく人材強国戦略をとる」と宣言されている。

 これを分析した中国人民大学重陽金融研究院のレポートでも、「過去1年を反省し、投資した施設にマッチした人材への投資を打ち出した」と間接的に指摘されており、AIを含む新産業における生産力のボトルネックが人材不足にあることを示唆している。

 中国はこれまで、インフラや不動産に偏重した投資をしてきた。米国を中心とした西側社会で生成AIがブームになると中国もこれに追随し、五カ年計画などの政府計画で目標数値を掲げ、各地の地方政府がそれに合わせて動いた。具体的には、GPUサーバーや高密度ラック、電力・冷却設備を備えた「智算中心(AI計算センター)」を競うように建設してきたのだ。

 これまでも、例えばメタバースがそうであったように、米国が新しいトレンドを生み出すたびに中国がそれに追随するというおなじみの構図であった。しかし今回は、米国中心の社会に負けじとAIデータセンターを各地で構築した点が異なる。

 生成AIは膨大な処理能力を必要とし、ひいては大量の電力を消費する。そのため、各地で電力も含めたハードウェアインフラを構築した。そこまではよかったのだが、現在インフラの稼働率は3割前後にとどまっている状況だ。

 業界記事や専門家のコメントによると、中国全土で建設済み、あるいは建設中のAIデータセンターは250を超える。しかし、それらを設計、運営、活用する人材とビジネスモデルが決定的に不足しており、中国全土を見渡しても、人材が十分に足りているAIデータセンターは両手で数えられる程度しかないと言われている。

 中国全土でAIデータセンターの建設が進んでいるものの、AIのスペシャリストは北京、上海、深センなどに集中しており、内陸の中西部や中小都市ではAI人材の層が薄く、問題はより顕著になっている。

 そもそも、中国の国家プロジェクトとして東部沿岸部からデータを送り、西部内陸部で処理する東数西算があるくらいなのだから、「電力や土地のコスト削減を求めて西部にAIデータセンターを建設し、AI企業と人材は沿岸部に残る」というのは、理にかなった行為のはずである。

 その通りに進めていった結果、西部でAI人材不足が顕著になっているというのはおかしな話に聞こえるかもしれない。しかし、西部にも東部と同様に現代的な100万都市が数多く存在し、スマートシティの構築から民間企業のビジネスまで、最新のITソリューションを導入したいという強いニーズがある。

 それにもかかわらず、いざAIを用いて公的機関や民間企業のソリューションを開発しようとしても、有能なAI人材が東部に流出しているため、西部では人材が不足しているというわけだ。この矛盾については、中国メディアでも問題視されている。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

WACOCA: People, Life, Style.