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米国主導の対イラン軍事作戦が精密かつ圧倒的な打撃力をもって展開される中、明白な敗者はイランのイスラム統治体制である。一方で、中国共産党も大きな影響を受けた可能性が指摘されている。
今回の衝突は、イランの軍事インフラを徹底的に破壊したのみならず、中国が描いてきた長期的な世界戦略の脆弱さをも白日の下にさらした。さらに、自らの軍事的実力に対する過大な自信にも痛烈な疑問符を突き付ける結果となった。
トランプ米大統領はこの作戦を「世界で最も強力なリセット」と評した。国際秩序を力で再編する動きの中で、中国共産党は大きく揺さぶられている。
中国とイランの結び付きは、単発的な武器取引にとどまるものではない。カナダの作家で民主活動家の盛雪氏は、中国共産党内部の信頼できる情報源に基づき、同政権による支援は包括的かつ計算されたものであったと指摘している。
イランで実験、戦場で露呈
中国は、イランを米国の資源と関心を消耗させる消耗戦の「代理戦力」と位置付けてきた。これにより、米国の対台湾対応能力を削ぐ狙いがあったとみられる。同時に、実戦経験に乏しい自国兵器の性能を検証する「実験場」としてもイラン戦線を活用していたのである。
こうした「代理戦争による消耗」と「戦場での実証試験」という二重の目的こそが、異例ともいえる広範な支援の背景にある。盛氏は、中国による支援は9つの主要分野に及び、イランを中国の戦略的利益の前線拠点へと変貌させたと指摘する。
具体的には、ステルス機探知を目的とするYLC-8BやJY-27Aといった先進レーダー網のほか、長距離監視や砲兵位置特定に用いられるJY-10E/14、SLC-2などのシステムが供与されたとされる。
ミサイルの展示を観覧する女性たち=2025年12月22日、テヘラン(共同)
さらに、測位衛星「北斗3」による高精度データリンクや、地平線外レーダーの関連技術も共有し、イランは本来の能力を大きく超える広域的な戦略的早期警戒能力を理論上は手にしたとされる。
中国側の宣伝は、これらのシステムが最大5千キロに及ぶ監視能力を有すると誇示してきた。しかし、実戦においては米国やイスラエルの先進技術の前にその実力が試され、期待外れに終わったとの見方が強い。
実際、多くのレーダー資産は戦闘開始当初から機能不全に陥った可能性が指摘されている。関係者の間では「次元的劣化」とも表現される現象により、米イスラエル両軍の攻撃に対抗できず、防空網は盲目化し、極めて脆弱な状態に置かれたとみられる。
ミサイルと精密部材
中国共産党はさらに、固体燃料推進に不可欠な過塩素酸アンモニウム系酸化剤をはじめ、誘導装置、炭素繊維複合材、さらには再突入体やロケットノズルに必要な耐熱材料など、ミサイル技術の中核を成す要素をイランに移転したとされる。
これらの技術は、ミサイルの軽量化や射程延伸を可能にするとともに、高速での大気圏再突入時に弾頭を保護する役割を担う。イランが信頼性ある核抑止力を構築する上で、極めて重要な基盤となるものである。
こうした技術供与は単なる商業取引の域を超える。米国のミサイル防衛網に対抗し得る能力をイランに付与する一方、実戦を通じて兵器性能に関する貴重なデータを収集するという、中国の戦略的意図に基づくものとみられる。

無人機技術の供給
イランの象徴的な自爆型無人機「シャヘド136」は、中国製MD550系のピストンおよびロータリーエンジンに大きく依存していたとされる。これらは民生用の「デュアルユース」ルートを通じて供給され、低コスト攻撃を可能にする中核的動力源となった。
さらに、イランの無人機は衛星測位システム「北斗3」と深く統合されていた。2026年には軍用級の高精度信号B3Aへのアクセスも提供されたとされ、西側の妨害や欺瞞に対して耐性を持つGPSの代替手段として機能したとみられる。
この統合により、イランの無人機群は中国の技術的影響力の延長として機能した側面がある。しかし、電子戦で優位に立たれると、その多くは比較的容易に無力化されたとの指摘が出ている。
露軍がウクライナ首都キーウ攻撃で使ったイラン製無人機「シャヘド136」の残骸=2023年5月(ゲッティ=共同)
一方、中国は、いわゆる「地下の長城」と呼ばれる地下施設構築技術もイランに提供したとされる。ナタンツやフォルドゥといった核施設では、中国人技術者や特殊建設機材が投入され、花崗岩層の深部に司令施設を埋設。高性能の耐貫通素材を重層的に配置し、西側のバンカーバスターに耐える構造が構築されたという。
また、核燃料サイクルに関わるデュアルユース部材として、高性能遠心分離機用の炭素繊維ローターや耐腐食バルブ、五軸CNC工作機械なども、民間用途を装った複雑なダミー企業網を通じて搬入されたとされる。
こうしたモジュール型の支援により、中国側が完成した核弾頭そのものを供与することなく、イランは濃縮ウランの兵器化に必要な「ブレイクアウト時間」を短く維持することが可能となったとみられる。さらに、高解像度の衛星「高分」や北斗システムによるデータ提供は、移動式発射装置の位置把握を困難にし、衛星監視からの隠蔽にも寄与した可能性がある。
イランの首都テヘランで、米イスラエルの攻撃を受けて損壊した住宅=4月7日(ゲッティ=共同)
権威主義的統治モデルの輸出
中国は、イランに対し「ペルシャ・ファイアウォール」とも呼ばれる独自の情報統制網の構築を支援したとされる。これは中国本土の統制型インターネットをモデルとし、国内仕様の暗号アルゴリズム(SM系)を用いた物理的に分離されたネットワークである。
加えて、広域電子戦システムの導入により、GPS妨害や通信遮断能力の強化も図られた。さらに、CM-302(YJ-12E輸出型)に代表される超音速対艦ミサイルや、DF-17に類似する極超音速兵器の供与、あるいは技術模倣も進められたとみられる。
宇宙・戦略通信分野でも支援は及び、衛星測位システム「北斗3」を中核に、中国電子科技集団(CETC)の窒化ガリウム素子を用いたフェーズドアレイ・システムが整備されたとされる。
ハード面にとどまらず、中国は社会統制の手法そのものも輸出した。華為技術(Huawei)を通じた監視インフラの提供に加え、国際決済網SWIFTを迂回する影の金融システムの構築、さらには「一帯一路」構想の名の下での深水港整備も進められた。これらの港湾には潜水艦やミサイルを収容可能な強固な地下施設が付随していたとされる。
こうした中、イランがホルムズ海峡の通航料を人民元で徴収する構想を提示したことは注目に値する。中国の金融的影響力が着実に拡大している現実を示す象徴的な動きといえよう。
戦場が突き付けた現実
しかし、実戦という過酷な環境の中で、こうした大掛かりな支援の多くは崩れ去った。先進レーダーや電子戦システムも、米軍のいわゆる「複数領域の優位性」の前には太刀打ちできなかったとの見方が強い。内部関係者によれば、米軍の初動攻撃はイラン国内に展開していた中国人技術者を直撃したという。
犠牲者には、中国電子科技集団(CETC)第14研究所に所属し、F35戦闘機の探知システムに関与していたレーダー専門家3人のほか、無人機運用を支援していたDJIの技術者7人が含まれるとされる。
イランにはこれまで約500~600人規模の中国の軍需産業関係者が長期滞在していたとみられるが、3月23日時点で70人以上の所在が確認されておらず、死亡した可能性がある。中国側の人的損失は最大で300人規模に達したとの観測も出ている。
さらに屈辱に拍車を掛けたのが、都市監視システムに関する疑惑である。Hikvision製の監視網に仕込まれていたとされる「バックドア」が悪用され、イランの最高指導者ハメネイ師や政府高官の所在特定と排除に利用された可能性が指摘されている。
この問題を受け、同社内部では大規模な調査が行われ、米国側の協力者である疑いを理由に300人以上が拘束されたとの情報もある。中国共産党にとっては、軍事面のみならず情報統制の分野においても重大な打撃となった形である。
米イランの停戦合意後にオマーン沖のホルムズ海峡を通過する船=4月8日(ゲッティ=共同)

連鎖する粛清
対外的には戦争の余波として、中国の軍事・科学分野において大規模な粛清が引き起こされたとの見方が浮上している。3月には、中国工程院などの公式サイトから、航空、ミサイル、核兵器、電子戦分野の著名な院士らの情報が相次いで削除された。
実際、核・レーダー・ミサイル分野の重鎮である趙憲庚氏、呉曼青氏、魏毅寅氏らのプロフィールが突如として掲載から消え、理由は明らかにされていない 。さらに、J20戦闘機の主任設計者として知られる楊偉氏も中国科学院の名簿から姿を消したとされる 。こうした動きは、軍需・科学エリート層に対する統制強化の一環との観測を呼んでいる。
その後、不可解な死も相次いだ。極超音速兵器研究の第一人者とされる方岱寧氏(68)は2026年2月に病死したとされるが、その経緯には不透明な点も指摘されている 。同様に、防衛関連分野の研究者の死亡や失脚が短期間に集中したことは、関係者の間で波紋を広げた。
もっとも、これら一連の動きの背景について、中国当局は公式な説明を行っていない。観測筋の間では、軍需産業や科学界を対象とした汚職摘発や統制強化の延長線上にあるとの見方が一般的である一方、その具体的な理由や因果関係については確認されていない。
いずれにせよ、軍事技術分野の中枢に位置する人材が相次いで表舞台から姿を消した事実は、中国の軍事・科学体制に少なからぬ動揺が生じている可能性を示唆している。
新たな国際秩序の胎動
今回のイラン戦争は、中国に対し、地政学的、経済的、さらには心理的にも深刻な打撃を与えたとされる。これまで誇示してきた軍事力に関する宣伝は大きく揺らぎ、代理戦略の限界も露呈。国内の不安定要因を一層加速させる結果となった可能性がある。
第二次世界大戦後に形成された国際秩序は、いま数十年ぶりともいえる大きな再編局面を迎えている。
こうした激動の中で、米中関係が今後どのように展開していくのか、また新たな国際秩序がいかなる形で構築されるのかは、歴史的にも重大な問いとして残されている。
我々はいま、現代史において極めて重要な転換点の只中にある。幻想や自己検閲にとらわれることなく、厳然たる現実を直視する姿勢が求められているといえよう。
筆者:ジェニファー・ゼン(中国出身の人権活動家)
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