3月に中国の店舗で客から「寄生虫の卵のようなものが混入していた」と訴えがあったスシローだが、問題がないと判明し、影響は最小限に抑えられた。Reuter
中国の景気低迷が長期化している。デフレを耐え抜いた日本企業にとって、中国のデフレはむしろ「追い風」になるとの分析も多い。実際にスシローでは10時間を超える行列ができるほどの盛況ぶりが報じられているが、「安さの代名詞」だったサイゼリヤには失速の兆しが見える。実際のところはどうなのか。中国で展開する小売・外食企業の最新動向を追った。
次々に現れる「〇〇版サイゼリヤ」
先週、中国市場で利益を稼いできた日本企業の2025年12月~2026年2月期決算が相次いで発表された。その中で、悪い意味で注目を集めたのがサイゼリヤだ。同期間の決算発表に合わせ、2026年8月期の通期業績予想を下方修正。営業利益は190億円から182億円、純利益は124億円から118億円と修正した。先行きへの懸念から株価も10%以上下落した。
下方修正の主な要因は、国内のコメや食材価格の高騰という日本側の事情だが、ここ数年、業績を牽引してきた中国事業も以前ほどの勢いはない。

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コロナ禍が収束した2023年春以降、中国本土のサイゼリヤは、景気低迷による節約志向を追い風に、圧倒的なコストパフォーマンスで爆発的な人気を博した。安さの秘密を解説する動画がSNSで拡散され、値上げしても客足が衰えることはなかった。 同社も「低価格が支持され、既存店が伸びている」と分析していたが、2024年9月~11月期を境に既存店の売上高は伸び悩んでいる。
2025年12月~2026年2月期、上海、広州の営業利益は前年同期比マイナスだった。サイゼリヤ決算資料より
中国本土は既存店売上高が低迷している。サイゼリヤ決算資料より
背景にあるのは、過酷な消耗戦を意味する「内巻(ネイジュアン)」だ。何かが流行れば瞬く間に模倣されるのが中国市場。デフレビジネスも例外ではなかった。
サイゼリヤは「ピザハットの3分の1」という価格設定で支持を広げたが、そのピザハット側も2024年5月、低価格の新業態「ピザハットWOW」を立ち上げて反撃に出た。看板商品のチーズピザは19元(1元=23.3円、約440円)、パスタは15元(約350円)から。運営する「百勝中国(ヤム・チャイナ)」は中国でケンタッキーフライドチキンなどを多数展開しており、規模拡大はお手の物だ。2025年11月時点でWOW店は250店舗まで拡大し、わずか1年半でサイゼリヤの店舗数の半分に迫る勢いを見せている。
マクドナルドも2025年以降、バーガーとドリンクの「9.9元(約230円)セット」を展開し、子どもへのソフトクリーム無料サービスなどで一人客から親子連れまで全方位の取り込みを図っている。 低価格を売りにした飲食店が続々立ち上がり、SNSでも「〇〇版サイゼリヤ」というハッシュタグが頻出し、もはやサイゼリヤが「圧倒的な低価格」とは言い難い状況になっている。
ECにも押される
広州の空港内で営業しているローソン。外資系としては中国で最大の店舗数を誇る。浦上早苗撮影
外食だけでなく、あらゆる業界で同様の事態が起きている。価格競争に加え、「消費のオンライン化」の影響も大きい。
1996年に中国に進出したローソンは、2010年代に店舗を急拡大させ、2021年2月期に中国事業の営業黒字化を達成。2025年11月時点で店舗数は6970店に達し、外資系コンビニでトップを走る。

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しかし、2023年に6000店舗を達成して以降は出店の勢いが鈍化し、掲げていた「2025年末までの1万店舗体制」は未達に終わった。
ローソンは中国で7000店舗近くを展開するが出店ペースは鈍化している。ローソン2025年9~11月期営業概要資料より
現地の競合が低価格商品を拡充して攻勢を仕掛けているほか、中国ではスナック菓子のディスカウント店から一般食品へと品揃えを広げ、コンビニの領域を侵食する「鳴鳴很忙集団」のような新興企業の台頭も著しい。
日本経済新聞の2月14日付記事では、ローソンの竹増貞信社長が「即日配送のEC」が最大のライバルになっていることを示唆している。
ニトリやイケアも、不動産不況による需要低迷と、ECを主戦場とする「工場直送(D2C)」の現地ブランドに押され苦戦が続く。ニトリの中国店舗数は、2026年3月期期初の100店舗から、12月末には78店舗まで減少。似鳥昭雄会長兼CEOは2025年5月の決算説明会で、「中国は不況のため大型店では厳しい。そこを間違えたかなと反省している」と語った。

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2025年に成都の3店舗を閉鎖したイトーヨーカ堂は2026年2月、北京の店舗運営から撤退した。全額出資子会社の株式を現地企業に売却し、今後は成都の6店舗にリソースを集中させる。
中国沿岸部を中心に展開するイオンも、北京・天津で大型店やモールの閉鎖を進め、出店戦略の抜本的な見直しを急いでいる。
ユニクロ、無印は復調
新疆ウイグル自治区ウルムチ市で営業する無印良品浦上早苗撮影
日本ブランドの苦戦については日中関係の影響も取り沙汰されるが、実際には中国の消費全体が低迷しているため、中国企業も同様の状況にある。
現在、日本勢の中で“大盛況”が伝えられるのがスシローだ。スシローは中国本土への進出が2021年と日が浅く、店舗数は100店に満たない。上海1号店のオープンも2025年末であり、現在は「希少性」「新鮮さ」の恩恵を強く受けている。
そのスシローにも「中国版」の足音が忍び寄る。火鍋チェーン最大手の海底撈(ハイディーラオ)が2025年10月、低価格の回転寿司店を杭州市に開店した。価格設定をスシローより安く抑え、2026年中に190店舗まで広げる目標を掲げている。
「デフレを生き抜いた日本企業は不景気に強い」という説は一定の説得力を持つが、早期に中国に進出し先行して成長した企業は、競争の激化にさらされて変化への対応も遅れ、踊り場を迎えているのも事実だ。

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