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【唐鎌大輔の為替から見る日本】今警戒すべきはインフレ期待のジャンプアップ、6月会合での利上げでは遅すぎるのでは

唐鎌 大輔

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2026.4.11(土)

 4月9日、植田日銀総裁は参院財政金融委員会で、現在の金融環境に関し「短中期のゾーンを中心に実質金利は、はっきりとしたマイナスで推移している」と発言。「緩和的な金融環境が維持され、民間の設備投資も緩やかな増加基調が維持されている」との認識を述べた。

 実質金利が「はっきりとしたマイナス」だから追加利上げしても大きな問題はないという意図なのか、「はっきりとしたマイナス」であることが重要なので追加利上げはないという意図なのか、今一つ判然としない。この発言を受けても、金融市場は大きく動いておらず、市場変動を回避できたという意味で総裁の答弁は成功だったと言える。

4月会合で利上げに踏み切るのか、植田総裁は難しい判断を迫られる(写真:つのだよしお/アフロ)

 ただ、昨年来の言動との整合性を取るのであれば、前者の意図、つまり「まだまだ緩和的な金融環境ゆえに利上げの余地がある」と受け止めるのが自然だろう。現下の円安を踏まえれば、尚の事、そのように受け止めるのが妥当に思える。

 そもそも4月28日会合の次は6月16日会合だ。その間、イラン情勢(ひいてはホルムズ海峡情勢)が安定に向かっていないとしたら、円安が加速している恐れは十分考えられる。その時点での利上げ決断はインフレ期待の抑制という観点に照らせば遅過ぎるだろう。遅かれ早かれ「7月までには必ず1回」という織り込みが定着していることも付記しておきたい。

 しかし、金融市場は比較的、安穏と構えているように見える。日銀の「次の一手」を巡る思惑は、少なくとも年度上半期(9月まで)に関し、イラン攻撃直前・3月会合直後・昨日の答弁直後でほとんど変わっていない(図表①)。

【図表①】

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 こと4月会合への利上げ期待で言えば、これら3時点で最も織り込みが進んでいないのが現在である。原油高やこれに伴う円安相場によってインフレ期待が高まったとしても、「交易条件の悪化により基調的な物価の上昇が屈折する恐れがある」という点を重く見る市場参加者が多いということになる。

 確かに、日本における原油価格急騰はインフレ懸念と同時に交易損失拡大を通じてデフレ懸念にも直結するため、いずれの論点に配慮するべきなのかという難題に直面している。

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