相互関税を発表したトランプ大統領(2025年4月2日、写真:AP/アフロ)
(英エコノミスト誌 2026年4月4日号)
多くの面で世界貿易は強化された。
米国のドナルド・トランプ大統領の説明では、2025年4月2日は「米国史上最も重要な日の一つ」だった。
そして包括的でばかげた関税を通じた「経済的独立宣言」を発するまで同盟国は米国を「略奪」してきたと非難した。
世界はこれを聞いて飛び上がり、反撃するぞと脅しをかけた。
日本の経済産業大臣は「大胆かつスピーディーな」対応を約束し、カナダのマーク・カーニー首相は「米国に最大限のインパクトをもたらす」報復を誓った。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は欧州に「貿易バズーカ」を用意するよう促した。全面的な貿易戦争に発展しそうな雲行きになった。
トランプ関税は実際にダメージをもたらしている。米国の実効関税率は一時20%を超えた。10.5%に戻った後でさえ、1940年代以来の高水準にある。
この常軌を逸した課税は投資に重くのしかかっている。裕福な国々では2025年、工場の新規建設が4分の1以上減少した。
世界貿易機関(WTO)の推計によれば、世界貿易システムの中核的な原則である「無差別貿易」の条件に則って行われた貿易取引の割合は、この1年間で80%から72%に縮小した。
世界が怯えた「決裂」はなかった
しかし、完全な決裂には至らなかった。いくつかの面で、世界の貿易はむしろ強化されている。2025年の貿易額の伸び率は5%近くに達し、世界経済の成長率を上回った。
一方、米国の関税障壁はトランプ氏の前言撤回のせいで穴だらけになっている。
米国のデータ会社ブルームバーグ・エコノミクスによれば、輸入財のおよそ半分はいまだに無税で米国に入ってきている。
米国の昨年の輸入額は過去最高を更新し、トランプ氏にとって最大の悩みの種だったモノの貿易赤字は1兆2000億ドル超に拡大した。国内総生産(GDP)の4%に相当する規模だ。
トランプ関税の導入を機に変わったのは、米国の輸入の規模ではなく輸入取引の相手だ(図1参照)。
一時は100%を超えた中国に対する懲罰的な関税は超大国同士の直接貿易をほとんど阻止した。2025年5~12月期の中国からの輸入は前年同期実績を40%以上下回った。
図1
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だが、それと同じ時期にタイとベトナムからの輸入は40%以上増加した。ラップトップパソコンなどの品目で、東南アジアのメーカーが中国のシェアの大部分を奪ったからだ。
インドもまた、50%という高い関税をかけられたにもかかわらず、米国への輸出を伸ばした。関税を免除されているスマートフォンの出荷の急増が寄与した。
人工知能(AI)ブーム関連の輸入――とりわけ半導体とデータセンター向け設備――はどの国から持ち込まれても大半が関税を免れ、数量が急増した。
最先端の半導体の製造で世界をリードする台湾は米国向けの輸出を80%以上伸ばした。

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