
寺島実郎(てらしま・じつろう)/日本総合研究所会長。1947年生まれ。米国三井物産ワシントン事務所長、三井物産常務執行役員などを経て2016年6月から現職。多摩大学学長も務める。94年の著書『新経済主義宣言』が石橋湛山賞受賞。近著に『21世紀未来圏 日本再生の構想──全体知と時代認識』『世界認識の再構築──17世紀オランダからの全体知』。ほか、著書多数(撮影:梅谷秀司)
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――「安かろう悪かろう」の製品で経済成長してきた中国が、今やハイテク国家へと変貌しました。
結論から言えば、技術大国、ハイテク国家・中国をつくり出したのは、実はアメリカ自身だ。過去数十年の歴史と、現在進行形で起きている世界構造の変化を交えながら、その意味するところを考えたい。
この3月に予定されていたトランプ大統領の訪中は、イラン情勢への対応から延期になった。日本にとっては「頭越しの米中蜜月」を見せつけられるかもしれないところをいったんは回避できたわけだが、本当に直視しなければならないのはそこではない。歴史を振り返ったときに見えてくる米中関係の実態だ。
例えば1994年という年に注目したい。この年、世界のGDPに占める日本の比重がピークの約18%に達した。ところが、この年を境に日本経済は埋没へと向かい、2010年にはGDPで中国に抜かれた。94年から10年にかけて、いったい何が起きたのか。


日本脅威論と「米中蜜月」の時代
89年に冷戦が終わると、アメリカではIT革命が起こり、ペンタゴン(米国防総省)が開発した技術基盤(アーパネット)が民生用に開放され、インターネットとして爆発的に広がった。この頃を境に、資本主義のパラダイムが変わり、長らく続いてきた産業資本主義に加え、IT、デジタル技術を核としたデジタル資本主義と、マネーゲームを中心とした金融資本主義が台頭する局面に突入した。

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