シリーズ「旅立ち」です。2回目は、岩手県奥州市で活動する3人組の女子高校生バンドの新たな旅立ちを取材しました。

卒業。多くの人にとって、ひとつの終わりの季節です。けれど、この春。「終わらせない」と決めた3人がいます。

水沢第一高校・軽音楽部。部員たちは、それぞれバンドを組み、現在、4つのバンドが活動しています。

その中で、後輩たちの憧れを集めているのが…

部員
「目標にしているバンドであんなふうに楽しく演奏出来たらいいな」
部員
「千尋さんに憧れて入部した。千尋さんみたいになれたら」

3ピースバンド「女子高生には手を出すな!」。2025年の岩手県の高文祭・軽音楽発表会で最優秀賞を受賞しました。

♪演奏

3月末、愛知で開かれる全国大会に臨みます。

佐々木葵さん(3年)
「リーダーの佐々木葵です。ギターボーカルをやっています。彼女はベースボーカルの岩城智香ちゃんです、あ!ベースコーラスです!彼女はドラムコーラスの佐々木千尋ちゃんっていいます」

高い演奏力と、葵(あおい)さんが手がけるオリジナル曲が魅力の3人。卒業式を終えた3年生2人も、最後の全国大会に臨みます。

佐々木葵さん
「兄が水沢一高の軽音部だったので感化された。両親には反対されたが、どうしても入りたかったので…」

ギターボーカルの葵さんは、部内では数少ない中学からの経験者。オリジナル曲で、バンドを引っ張ります。

一方、ドラムの千尋さんは…

佐々木千尋さん(3年)
「中学の時にドラムの映像がSNSで流れてきた。それから気になっていて。(軽音楽部があったので)いい機会だと思い始めた」

未経験ではあったものの、今は正確で力強い演奏が持ち味です。

そして2年生のベース、岩城さん。

岩城智香さん(2年)
「音楽の才能はないと思う。低音が好きで、ベースの音が入ってきた時の音に厚みが増すのが好き」

のびのびとした演奏で、バンドに厚みを加えています。全国大会を前に、スタジオで音を合わせる3人。軽音楽部として過ごせる時間は、あとわずかです…。

♪演奏

佐々木葵さん
「特別なバンドですね。自分の居場所というか」

佐々木千尋さん
「なくなったらどうしようって思います」

岩城智香さん
「改めて、そんなに大切なんだってわかりました」

なかでも葵さんにとって、軽音楽部は自分を支えてくれた場所でした。

佐々木葵さん
「高校1年の冬ぐらいから学校に来られなくなった時期があった。それでも軽音部だけは本当に好きで。それで部活のために学校も頑張ろうって思えるようになった。自分を支えてくれた場所だった」

そんな3人の変化を、そばで見てきた先生も期待を寄せています。

軽音楽部顧問 鈴木友美 教諭
「とにかくストイックなバンド。ミスができない。ギターボーカルの葵さんは昔から曲を作っていた。(オリジナル曲が)表に出るのは良かった」

全国大会で演奏するという葵さんが手がけたオリジナル曲。そこにはまっすぐな思いが込められていました。

佐々木葵さん
「おじいちゃんが亡くなる前に、自分の歌を聴かせることができなくて。その後悔があるので、ずっと届けばいいなと思いながら歌っています」

佐々木千尋さん
「葵ちゃんが作った曲だけど、自分の表現で演奏できるように」

岩城智香さん
「曲に込められた想いを大事にして演奏して曲に入り込みたい」

そんな3人に、地元のライブハウスから声がかかりました。人気ロックバンドの「G-FREAK FACTORY」(ジー・フリーク・ファクトリー)とのライブ共演のオファーでした。群馬を拠点に日本のロックシーンをけん引する3人にとって大先輩にあたるバンドです。

鈴木友美教諭
「大丈夫かなって。高校生とG-FREAKさんとレベルが違うじゃないですか?(オファーを受け)ドキドキしました」

ライブ当日、大先輩のリハーサルを見つめる3人。緊張の色は隠せません。

佐々木葵さん
「こわいよね。緊張する」

佐々木千尋さん
「久しぶりのライブハウスの圧を感じる」

佐々木葵さん
「そんな身構えなくていい、マジで普通にやれば大丈夫!」

普段とは違う音楽ファンの前での演奏。いよいよ3人のライブが始まります。

♪演奏

だんだんと温まるフロアの雰囲気。3人らしい演奏が鳴り響きます。そしてラストは…あのオリジナル曲です。

♪演奏「眠る前のこと」

佐々木葵さん
「泣いてくれる人もいて、ちゃんと伝わった実感があった」

佐々木千尋さん
「お客さんが腕を上げてくれたり、一緒に歌ってくれたりして、あんな反応は初めてで本当にうれしかった」

歓声と共に無事、ライブが終わりました。

続いて始まったのは、「G-FREAK FACTORY」のステージ。真剣な表情で見つめる3人…。長年ロックシーンを走り続けるバンドの姿から、多くを受け取っていました。

佐々木千尋さん
「メンバー同士が目で会話していた。自分たちも増やしていきたい」

佐々木葵さん
「曲で伝えたいことが、まっすぐ伝わってきた。平和のこととか戦争に反対する思いとか自分の中にもあったものを改めて強く感じました」

ライブ後、楽屋で3人を待っていたのは―「G-FREAK FACTORY」のボーカル、茂木洋晃さんの言葉でした。

茂木さん
「すごい良かったよ!お前らは本当可能性が超あるから!若いし、演奏もうまいし!」

そしてこんな思いも…

茂木さん
「勝手な願望をだけど、やめないでくれ。何とかして続けて。ゆっくりになってもいいから。俺は個人的に、ここで、(水沢で)やってほしいと思う。東京とか盛岡じゃなくて、地元でやってくれって」

佐々木葵さん
「自分たちも地元を盛り上げたい」

茂木さん
「おう!かっこいい!いいね!もちろん、外に出るっていう選択肢もある。でも最後は地元で―。まず頑張ろうぜ!また一緒にやろう」

「ありがとうございます!」

佐々木葵さん
「地元を盛り上げるっていうコンセプトはあったけど、もっともっと地元を盛り上げたいし、大事にしたいと思った。漠然と(このバンドを)続けるんだろうなという感じはあったけど。何かもっとちゃんとみんなで続けていこうっていう強い目標になった」

高校生活には区切りがついても、3人のバンド活動は終わりません。地元でもらったエールを胸に、次はいよいよ全国の舞台です。

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