軍事・地政学ナナメ読み

深川 孝行

深川 孝行
ジャーナリスト

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2026.3.14(土)

アメリカ・イスラエルとイランの対立が続く中、ホルムズ海峡の海域を偵察するオマーンの巡視艇(2026年3月12日、写真:ロイター/アフロ)

「海軍はない」と豪語したトランプの誤算、ホルムズ海峡封鎖で崩れた短期決戦シナリオ

 アメリカがイスラエルと仕掛けたイラン攻撃は、ついに3週目に突入したが、アメリカのトランプ大統領が期待した短期決戦とはいかず、長期戦の色が濃くなりつつある。

 想定外の「番狂わせ」の中でも特に悩ましいのが、イランによる、原油・LNG(液化天然ガス)の一大海上輸送路、ホルムズ海峡の「事実上の封鎖」だろう。

 世界最大の産油国アメリカの国内でも、国際市場に引きずられてガソリン価格が急騰。トランプ氏の岩盤支持層であるMAGA(アメリカを再び偉大に)を直撃し、批判の声が渦巻いている。

 事態を早期に収拾しなければ、今年11月の中間選挙で、トランプ氏率いる共和党が惨敗しかねず、まさにオウンゴールそのものだ。

 トランプ氏もイランの海峡封鎖には当初から警戒し、機雷敷設を実行するイラン海軍の完全破壊を最重要ターゲットに挙げる。現に3月2日、ホワイトハウスは今回の作戦の4つの目的として、「ミサイル能力破壊」「核兵器保有阻止」「テロ組織支援阻止」に続き「海軍のせん滅」を掲げている。

 対するイランは中東屈指の艦艇数を誇る。英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)の『ミリタリーバランス(2026年版)』によると、

・(国軍/政府軍の)海軍129隻(潜水艦艇18隻、水上戦闘艦艇70隻、掃海艦1隻、上陸用艦艇23隻、兵站艦艇17隻)

・革命防衛隊海軍144隻(水上戦闘艦艇133隻、上陸用艦艇5隻、兵站艦艇6隻)

・イラン・イスラム共和国治安部隊(LEF)哨戒艇など90隻

 の計約360隻に達する。トランプ氏は3日、「彼ら(イラン)には海軍はない。われわれが破壊した」と豪語し、海峡の機雷封鎖を心配するマーケットや米国内に対し“口先介入”で不安の払拭に努めている。

 だがその甲斐も空しく、イラン革命防衛隊は「(同海峡の)航行はアメリカ、イスラエル、欧州、その他西側同盟国の船舶に対してのみ封鎖する」と畳みかけた(米CNN、3月5日)。事実上の封鎖宣言である。

 その結果、攻撃・撃沈を恐れたタンカーやコンテナ船のほぼ全てが、海峡の航行を控え、足止め状態となり、トランプ氏が描いた楽観シナリオは、あっけなく崩れてしまった。

 そして10日には米CNNが、米情報機関に詳しい情報筋の話として「(イランは)機雷を敷設し始めた。まだ広範囲ではなく、ここ数日で数十個にとどまる」と報道。

 これにトランプ氏は即座に反応し、自身のSNSで、「そのような(イランによる機雷敷設)報告は全く受けていない。仮に何らかの理由で機雷を敷設したのなら、即刻撤去しなければ、イランに対し前例のないレベルの軍事措置を取るだろう」と警告した。

 わずか1週間ほど前に「(イラン)海軍はない」と大見得を切ったにもかかわらず、「仮に機雷を敷設したのなら」と言及するあたりに、トランプ氏お得意の「その場しのぎ」が透けて見える。

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