
リンクない鳥取県から28年ぶり全日本選手権出場 永見千代乃が湖遊館から見る夢
リンクのない鳥取県で高校生までを過ごした永見千代乃(22=ノートルダム清心女大)が、昨年末の全日本選手権で初出場を果たしました。県勢の女子では28年ぶりの快挙となった大一番で、フリーに進出するなど躍進。1月30日に閉幕した国民スポーツ大会冬季大会(旧冬季国体=岡山・ヘルスピア倉敷)にも鳥取県代表として出場し、自らの姿で厳しい環境で競技に取り組む後輩たちへエールを送りました。(敬称略)
フィギュア2025.02.06 06:00
「夢みたいな時間でした」
島根県出雲市園町―。しじみの漁獲量日本一で有名な宍道湖に臨む、人口わずか1000人の農業地域に、ひときわ目をひく建物がある。アイススケート場「湖遊館」。山陰地方特有の厚い雲に覆われた低い空と、ドッシリと構える大きな建物のコントラストが、どこか厳かな雰囲気を漂わせていた。

島根県出雲市園町にある湖遊館の外観(撮影・勝部晃多)
「山陰最大規模」を看板に掲げるが、島根県と鳥取県の両県を合わせても、スケートリンクはわずか2つしかない。それも、もう一方の施設は近年、製氷機の故障などによる休止が続いているため、この湖遊館が実質「山陰唯一」のアイスリンクだ。
館内には、校外学習で訪れていた小学生たちの無垢(むく)な笑い声が響いている。近隣には娯楽施設が数えるほどしかなく、この場所が県民の憩いの場にもなっているのだろう。学生のカップルや年配の夫婦など、利用者の層はさまざまだった。

島根県出雲市園町にある湖遊館の内観(撮影・勝部晃多)
そんな、一見“競技”としてのフィギュアスケートとは遠く離れて見える土地から、今季国内最高峰の舞台へ羽ばたいた1人の選手がいる。
鳥取県米子市出身の永見千代乃。昨年末の全日本選手権で、女子では県勢28年ぶりの出場を果たし、総合23位となったノートルダム清心女子大の4年生だ。
「全日本は、自分とは無縁のものだと思っていました。遠すぎて、最近までは『憧れ』とも言えないような場所。夢みたいな時間でした」
そう、夢うつつの中にいた大舞台について回想する。

全日本選手権女子SPで演技する永見(2024年12月20日撮影)
永見が競技を始めたのは、8歳の時。家族で湖遊館へ遊びに通っているうちに夢中になり、気付けばクラブに入会していた。
「スケートって、ただ普通に滑るだけではなくて、ジャンプがあったりスピンがあったり、いろいろな要素をできるので、飽きずに練習できたのかなって思います」
米子市の実家からは、車で往復2時間ほど。他の生徒たちと同じように、早退することなく“普通の”学校生活を送りながら、米子北斗高卒業までの約10年間、母の送迎で欠かすことなく足を運び続けた。
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島根県松江市生まれ。2021年4月入社。高校野球の神奈川担当などを経て、同年10月からスポーツ部に配属。バトル班として新日本プロレスやRIZINなどを担当し、故アントニオ猪木さんへの単独インタビューや武藤敬司氏の引退試合、那須川天心―武尊などを取材した。
23年2月から五輪班に移り、夏季競技はバレーボールを中心に担当。同年秋のW杯や24年夏のVNLなど。冬季競技はフィギュアスケートをメインに務め、全日本選手権は2年連続で取材中。X(旧ツイッター)のアカウントは「@kotakatsube」。

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