日本時間10月26日(日)29時にスタートを迎える2025年F1第20戦メキシコGP。ここでは、スターティング・グリッド、予選結果からの変動、そして予想されるタイヤ戦略や気象条件についてまとめる。

スターティンググリッド:サインツ降格で中団シャッフル

予選7番手のカルロス・サインツ(ウィリアムズ)は、前戦アメリカGPでのアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)との接触により、5グリッド降格ペナルティを受けた。その結果、決勝は12番グリッドからのスタートとなる。

これに伴い、予選11番手の角田裕毅(レッドブル)を含む4名のグリッドが、それぞれ1つずつ繰り上がった。サインツはペース的に上位勢と遜色なく、さらにこのペナルティで闘志に火がついた様子。スタート直後から積極的に前を狙う展開が期待される。

見どころ1:ノリス、首位奪還の絶好機

2025年F1第20戦メキシコGPの予選でポールポジションを獲得し、マシンから降りるランド・ノリス(マクラーレン)、2025年10月25日エルマノス・ロドリゲス・サーキットCourtesy Of McLaren

2025年F1第20戦メキシコGPの予選でポールポジションを獲得し、マシンから降りるランド・ノリス(マクラーレン)、2025年10月25日エルマノス・ロドリゲス・サーキット

圧倒的な速さでポールポジションを掴んだランド・ノリス(マクラーレン)。チームメイトでランキング首位のオスカー・ピアストリとの差はわずか14ポイントだ。もし上位10台がスタートポジションのままチェッカーを受けた場合、ノリスはピアストリを5ポイント上回り、選手権首位の座を奪うことになる。

見どころ2:ターン1までのトウ争い

2021年11月7日F1メキシコGP決勝レース1周目のターン1の様子Courtesy Of Red Bull Content Pool

2021年11月7日F1メキシコGP決勝レース1周目のターン1の様子

予選3番手のルイス・ハミルトン(フェラーリ)は、自身のスタート位置を「完璧なポジション」と表現した。奇数列はレーシングライン上の“クリーンサイド”にあり、歴史が示すように、オープニングラップのターン1で首位を奪う可能性もある。ハミルトンはフェラーリ移籍後初の表彰台を見据え、ノリスに挑戦状を突きつけている。

エルマノス・ロドリゲス・サーキットのターン1までの距離は768メートル。現行カレンダー最長を誇るこの区間では、スリップストリームの奪い合いが熾烈を極める。その攻防が、序盤の順位を大きく揺るがす要因となるだろう。

見どころ3:高地が試す各車の冷却性能と戦略

ルイス・ハミルトン(メルセデスAMGペトロナスF1チーム)をリードするダニエル・リカルド(スクーデリア・アルファタウリ)、2023年10月29日(日) F1メキシコGP(エルマノス・ロドリゲス・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ルイス・ハミルトン(メルセデスAMGペトロナスF1チーム)をリードするダニエル・リカルド(スクーデリア・アルファタウリ)、2023年10月29日(日) F1メキシコGP(エルマノス・ロドリゲス・サーキット)

標高2200メートルを超えるこのサーキットでは、空気が薄いためパワーユニットやブレーキの冷却性能が著しく低下する。その結果、前走車に長時間接近して走行するのが難しくなる。接近すればするほど、PUやブレーキがオーバーヒートしやすくなるのだ。

各チームは冷却効率を高めるため、空力性能と引き換えにボディワークの開口部を拡大するなどの対策を講じているが、その度合いはチームによって異なる。たとえば空力を優先したチームはペース面で優位に立てる一方、追従走行は難しい。つまり、チームごとの戦略の違いが浮かび上がることになる。

以下は暫定スターティンググリッド。正式版との差異が発生した場合は更新される。各ドライバーの予選結果からの変動も併せて記載する。

Pos
No
Driver
Team
Qualifying

1
4
L.ノリス
マクラーレン・メルセデス
1(-)

2
16
C.ルクレール
フェラーリ
2(-)

3
44
L.ハミルトン
フェラーリ
3(-)

4
63
G.ラッセル
メルセデス
4(-)

5
1
M.フェルスタッペン
レッドブル・ホンダRBPT
5(-)

6
12
A.K.アントネッリ
メルセデス
6(-)

7
81
O.ピアストリ
マクラーレン・メルセデス
8(+1)

8
6
I.ハジャー
レーシングブルズ・ホンダRBPT
9(+1)

9
87
O.ベアマン
ハース・フェラーリ
10(+1)

10
22
角田裕毅
レッドブル・ホンダRBPT
11(+1)

11
31
E.オコン
ハース・フェラーリ
12(+1)

12
55
C.サインツ
ウィリアムズ・メルセデス
7(-5)

13
27
N.ヒュルケンベルグ
ザウバー・フェラーリ
13(-)

14
14
F.アロンソ
アストンマーチン・メルセデス
14(-)

15
30
L.ローソン
レーシングブルズ・ホンダRBPT
15(-)

16
5
G.ボルトレート
ザウバー・フェラーリ
16(-)

17
23
A.アルボン
ウィリアムズ・メルセデス
17(-)

18
10
P.ガスリー
アルピーヌ・ルノー
18(-)

19
18
L.ストロール
アストンマーチン・メルセデス
19(-)

20
43
F.コラピント
アルピーヌ・ルノー
20(-)

レースの模様はDAZNとフジテレビNEXTで完全生配信・生中継される。

タイヤ戦略:1ストップ濃厚、初期攻勢の賭けも

2024年大会では、「ミディアム→ハード」を繋ぐ1ストップ戦略が主流となり、「ハード→ミディアム」の逆張り勢でポイントを獲得したドライバーはいなかった。

2024年F1メキシコGPのドライバー別タイヤ戦略表、2024年10月27日エルマノス・ロドリゲス・サーキットCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

2024年F1メキシコGPのドライバー別タイヤ戦略表、2024年10月27日エルマノス・ロドリゲス・サーキット

今回ピレリが持ち込んだのは、“C3飛ばし”という変則的な構成で、C2・C4・C5の3種類。これは1ストップ戦略を牽制する狙いがあるが、C4ミディアムのロングラン性能の高さから、現状では昨年同様、「ミディアム→ハード」の1ストッパーが有力視されている。

ピレリのモータースポーツ部門を率いるマリオ・イゾラは、「今週末のミディアムは最も万能なコンパウンドだ。スタートに使えば、少なくとも2つの戦略的オプションを確保できる」と分析。ミディアムを軸にした1ストップが最も堅実との見方を示している。

ピレリのシミュレーションによると、今年最速の戦略は「ミディアム→ソフト」。最適なピットウインドウは42〜48周目とされる。ソフトに繋ぐためには慎重なマネジメントが不可欠だが、想定より早く摩耗した場合でも、「ミディアム→ハード」に切り替え、26〜32周目でピットすれば十分にリカバリー可能だ。

一方、最大のオーバーテイクチャンスである1周目のターン1で前を狙うため、ソフトをスタートタイヤに選ぶ戦略も考えられる。これはフェラーリが前戦アメリカGPで採用したもので、フェルスタッペンへの援護射撃が求められる角田のように、チーム内で戦略を分ける可能性があるドライバーには一つの選択肢となる可能性がある。

ただし、ソフトはスティントを長く引っ張るには不向きで、序盤に順位を上げられなければ逆に順位を落とすリスクも高い。さらに、路面温度が上昇すれば、一層厳しい状況に置かれることになるだろう。

イゾラは次のように補足する。

「ソフトでスタートすれば初期のグリップ面では優位に立てるが、燃料搭載量が多いためペースマネジメントが重要になる。ミディアムへの交換は23〜29周目、ハードを選ぶなら20〜26周目が目安だ」

気になる天気:降水確率0%、完全ドライの決勝へ

週末前の予報どおり、日曜のメキシコシティは快晴の見込みで、降水確率は0%。ドライコンディションでの決勝が確実視されている。

最高気温は26℃まで上昇する予報で、路面温度は50℃前後に達する可能性が高い。タイヤにとっては過酷な環境となり、サーマル・デグラデーション(熱による摩耗)をいかに抑えるかが勝敗を分ける鍵になりそうだ。

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