23日の米金融市場では、米国株がハイテク株主導で反発。通商協議を巡る米中の緊張緩和の兆しが追い風となった。トランプ政権がロシア石油企業2社に対する制裁を発表したことを受けて原油相場は大幅上昇。原油高に伴うインフレ懸念から国債は下落。来週会合での日銀の利上げ観測後退を背景に、円は対ドルで売られた。
株式終値前営業日比変化率S&P500種株価指数6738.4439.040.58%ダウ工業株30種平均46734.61144.200.31%ナスダック総合指数22941.80201.400.89%
ホワイトハウスは、トランプ米大統領が30日にアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれる韓国で中国の習近平国家主席と首脳会談を行うと発表。S&P500種株価指数は最高値に接近した。市場は24日に公表される9月の米消費者物価指数(CPI)統計に注目している。
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前日引け後に発表したさえない決算で当初売られていたテスラは切り返し、2.3%上昇。原油高を好感してエネルギー株も買われた。
関係者によると、米トランプ政権は中国に対抗するため、量子コンピューター業界への資金支援の可能性について、関連企業と初期段階の協議を進めている。こうした中、量子コンピューター関連銘柄が買いを集めた。
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市場ではこのところ、モメンタム取引の巻き戻しやバリュエーションへの懸念からボラティリティーが再燃。ただ、下値は総じて限定的だった。米企業収益の底堅さを背景に、これを好機ととらえる個人投資家の買いが続いているためだ。
ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「バリュエーションは弱気派にとって今も最大の論拠となっているが、押し目買いが絶え間なく続いていることで、最も悲観的な投資家ですら、自らの見通しに疑問を抱きつつある」と述べた。
S&P500種は6740近辺で終えた。ナスダック100指数は約1%上昇した。
半導体メーカーのインテルは引け後に決算を発表し、10ー12月(第4四半期)の売上高について強気の見通しを示した。これを受けて引け後の時間外取引で同社株価は上昇。
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9月の米CPI統計は、米連邦公開市場委員会(FOMC)会合を28-29日に控え、米連邦準備制度理事会(FRB)高官がインフレ動向を判断する上で重要な手掛かりとなる。
ブルームバーグのエコノミスト調査によると、食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比0.3%上昇と、3カ月連続で同率の伸びの見通し。関税引き上げによる影響が物価に徐々に波及していることが背景にある。前年比では3.1%上昇と見込まれている。
インフレ率は依然として目標を上回っているものの、雇用市場の脆弱(ぜいじゃく)さを考慮し、FRBは来週の会合で今年2回目となる利下げを決める可能性が高い。
バウアーソック・キャピタル・パートナーズの創業パートナー、エミリー・バウアーソック・ヒル氏は「政府機関の閉鎖で発表される経済指標が限られる中で、24日のCPIは数少ない重要データの一つだ」と指摘。
一方で「FRBは労働市場により注目している可能性が高く、今回のCPIが来週の政策決定に大きく影響するとは考えていない。年内は10月と12月の2回、追加利下げが行われる公算が大きい」と述べた。
JPモルガン・チェースのトレーディングデスクでは、CPI発表後にS&P500種が上昇する確率をおよそ65%とみている。CPIは高めの数字に予想されているものの、アンドリュー・タイラー氏を含む同チームは当日の株式相場について「通常よりもボラティリティーが低い」展開を想定。来週の追加利下げ観測がインフレ懸念を相殺していると指摘した。
その上で「当社も市場の見解と一致しており、FRBが利下げを見送るには最大のテールリスクが必要だと考えている」とタイラー氏は述べた。
プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏によると、当初は年末にかけて総合CPI上昇率が3.5%前後まで上昇すると予想されていたが、実際のインフレ波及は予想ほど顕著ではない。企業の利幅縮小や前倒しでの在庫積み上げ、貿易の迂回(うかい)などが要因とみられているという。
米国債
米国債相場は下落。原油価格が急騰し、インフレ加速への懸念が強まった。
国債直近値前営業日比(bp)変化率米30年債利回り4.58%4.91.08%米10年債利回り4.00%5.21.31%米2年債利回り3.49%4.21.22% 米東部時間16時53分
金融政策見通しの変化に最も敏感とされる2年債利回りは約4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇。10年債利回りは節目とされる4%に達した。
インフレ期待を示すブレークイーブン・インフレ率は20日に4カ月ぶりの低水準を付けたが、原油高と歩調を合わせて上昇。今後10年間の平均インフレ率は2.31%と、1週間ぶりの高水準に達した。
金利スワップ市場では、FRBが年内に0.25ポイントの利下げを2回、2026年末までにさらに3回実施するとの見方を織り込んでいる。
ブルームバーグ・ストラテジスト、アリス・アンドレス氏は次のように指摘している。
10年債利回りにとって4%の水準は心理的な節目だ。これを上回る動きはインフレや成長の強さに対する懸念を示唆する一方、下回る場合は成長鈍化や利下げ観測を背景とする安全資産への需要拡大を意味することが多い。
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為替
ニューヨーク外国為替市場では、CPI統計の発表を控え、ブルームバーグ・ドル・スポット指数が小動きとなった。主要10通貨では円のアンダーパフォームが目立つ一方、原油高を受けて資源国通貨のオーストラリア・ドルやノルウェー・クローネが買われた。
為替直近値前営業日比変化率ブルームバーグ・ドル指数1212.770.150.01%ドル/円¥152.58¥0.600.39%ユーロ/ドル$1.1619$0.00080.07% 米東部時間16時53分
ドル指数は何度かマイナス圏に沈む場面もあったが、総じて小幅高で推移。終盤の取引ではほぼ横ばいとなっている。
円は対ドルで売られ、152円台半ばから後半で推移。朝方の取引では、一時0.5%安の1ドル=152円80銭まで売られた。
ブルームバーグのエコノミスト調査によると、日銀の利上げ時期について、来週の会合との予想は10%で、前回9月調査で最多の36%から大きく後退した。
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ジョン・シン氏らバンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト陣は「今年これまで見られたドル安の流れはおおむね続くと見込まれる一方、現時点でドルは依然としてやや過大評価されていると判断している」とリポートで指摘。
その上で「フランスを巡る懸念が後退する中で、ユーロについては円、スイス・フラン、米ドル、ニュージーランド・ドル、カナダ・ドルに対して強気のスタンスを維持している」と述べた。
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原油
ニューヨーク原油相場は3日続伸。約4カ月ぶりの大幅高となった。米国がロシアの大手石油企業に制裁を科すと発表したため、世界有数の産油国であるロシアからの供給が滞るとの懸念が強まり、買いが膨らんだ。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は、6月13日に始まったイスラエルとイランの衝突以降で最大の上昇となった。石油製品の中ではヒーティングオイルが特に上げ、6.8%高となった。
米国がロシアの石油会社ロスネフチとルクオイルに制裁を科したことを受け、インドの主要石油精製会社によるロシア産原油の調達量はほぼゼロまで落ち込む見通しだ。複数の石油精製会社幹部が明らかにした。
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今回の制裁措置は、世界的には供給が潤沢とされるタイミングで講じられた。需要の伸びが鈍化する兆しがあるにもかかわらず、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスは生産量を引き上げている。仮にインドがロシア産原油の購入を大幅に削減すれば、次に問われるのは、もう一方の主要輸入国である中国がその穴を埋める意志があるかどうかだ。
リスタッド・エナジーの地政学分析部門責任者、ホルヘ・レオン氏は「今回の米国によるロシア大手石油企業への制裁は、米政府が進める対ロ圧力において、重大かつ前例のないエスカレーションだ」と指摘。「ロシアの石油インフラを狙った最近の一連の攻撃と相まって、これらの制裁はロシアの原油生産・輸出に大きな混乱をもたらす可能性を高めており、生産の強制停止リスクも一段と高まっている」と述べた。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前日比3.29ドル(5.6%)高の1バレル=61.79ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は5.4%高の65.99ドル。
金
ニューヨーク金相場は反発。今週の大幅な下げの一部を取り戻した。市場では強気ムードから高値警戒感へと雰囲気が変化している。
金スポット価格は直近の2営業日で約6%下落していた。米中間の通商合意によって、ここ数週間で金の需要を押し上げていた地政学的緊張が緩和されるかどうかに引き続き注目が集まっている。
金価格の下落は、金に連動する上場投資信託(ETF)が保有する金の大幅な減少と重なった。ブルームバーグがまとめたデータによれば、22日の保有金の減少量は過去5カ月で最大となった。
バンテージ・グローバル・プライムのアナリスト、ヘベ・チェン氏は「行き過ぎた上昇の後、金相場は引き伸ばされ過ぎた輪ゴムのように、今まさに強く戻ろうとしている」と述べた。「節目の4000ドルをしっかり上回っていることは、本質的な変化というよりも、あくまでテクニカルな調整を示している。安全資産としての需要や『ディベースメント取引(通貨価値切り下げトレード)』という投資テーマは依然として根強い」と語った。

金スポット価格はニューヨーク時間午後2時45分現在、前日比40.93ドル(1%)高の1オンス=4139.35ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、同80.20ドル(2%)高の4145.60ドルで引けた。
原題:Stocks Rise Before CPI as Bonds Fall on Oil Surge: Markets Wrap
Treasuries Snap Three-Day Rally as Oil Prices Surge Ahead of CPI
Dollar Steady Before CPI; Yen Lags on BOJ Timing: Inside G-10
Oil Jumps as Trump Steps Up Pressure on Russia With Sanctions
Spot Gold Advances After Two Days of Heavy Losses(抜粋)

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