ロシアの石油大手2社に制裁を科すとの米国の発表は、中国石油業界に深い衝撃を与えた。中国の製油会社は国有か民間かを問わず、制裁を回避しつつ供給を確保するという難題に直面している。
中国は今年1-9月で、原油輸入全体の20%に相当する日量約200万バレルをロシアから輸入しており、中国にとってロシアは原油の主要供給国の一つだ。
トランプ政権は22日、ロシア石油大手のロスネフチとルクオイルを制裁対象としたが、米国や欧州連合(EU)、英国はこのところロシア産原油の買い手を標的とする措置を相次いで打ち出し、こうした企業によるロシアの収入への寄与に狙いを定めている。米政府は、ロシア石油大手2社との取引を11月21日までに打ち切るよう求めている。
ロシアにとって最大の顧客であるインドや中国にとってのリスクは、制裁対象企業との取引を継続することで自らが2次制裁の対象になりかねないことだ。2次制裁が科されれば、西側の銀行システムやドルへのアクセスから遮断されるほか、西側の生産者や取引業者、海運や保険会社など世界のコモディティー市場を形作るネットワークから排除されるなど、壊滅的な影響を被る恐れがある。
特に懸念されるのは、中東やアフリカなど主要産油地域で西側企業が投資家やオペレーターの役割を担っていることだと、複数のトレーダーは指摘する。制裁対象企業との取引継続を選ぶ中国やインドの企業は、多くのプロジェクトから締め出されるリスクを負う。
一方で制裁に従えば、大幅な割引価格で供給されていたロシア産原油を失い、エネルギーコストの上昇が企業や消費者を直撃する。また、ルクオイルはイラクのバスラや中央アジアのカスピ海パイプラインのプロジェクトなどにも関与しているため、中国やインド以外の企業にも制裁の影響は広がり得る。
米国の制裁に中国は反発する構えを示した。
中国外務省の郭嘉昆報道官は23日、北京での定例記者会見で米国の制裁について問われ、「国際法上の根拠がなく、国連安保理の承認もない一方的な制裁に、中国は一貫して反対している」と述べた。
ロスネフチとルクオイルに対しては、英政府が先週に制裁対象としていた。英政府は併せて、ロシア産原油の輸入を理由に中国民間製油会社の山東裕龍石化もブラックリストに加え、西側企業はこれ以降、同社への原油供給に慎重になった。
今回の措置以外でも米国は最近、ロシア産やイラン産の原油の中国主要輸入港である日照、董家口を制裁対象としている。
中国とロシアの原油取引の中核は、それぞれ国有企業であるロスネフチと中国石油天然気集団(CNPC)による長期契約で、ロシアの東シベリア・太平洋(ESPO)原油を中国北東部の大慶にある製油所などにパイプライン経由で輸送されている分が含まれる。トレーダーによれば、これらの製油所はロシア産原油への依存度が圧倒的に大きく、供給が途絶すれば特に影響を受けやすい。
ただし、日量約80万バレルの原油を輸送しているこのパイプラインは政府間プロジェクトであり、今回の米国の制裁対象となるのかは不明だ。CNPCに電子メールでコメントを要請したがすぐには回答がなく、電話もつながらなかった。
ロスネフチとルクオイルは、ロシア極東のコズミノ港から山東省など中国沿岸部各地の民間製油所にESPO原油を供給する主要企業でもある。
データ分析会社ケプラーによると、2社は合計で昨年のロシアの中国向け原油輸出全体の約4分の1を占めていた。
原題:US Sanctions Against Russian Oil Trigger Concerns in China (1)(抜粋)
— 取材協力 Serene Cheong, Sarah Chen and Rong Wei Neo

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