福岡市によるデジタルノマド誘致プログラム「Colive Fukuoka 2025」が、10月1日に開幕した。2024年には45の国と地域から436人が参加し、1.1億円超の経済効果を記録。3年目を迎える「Colive Fukuoka」は、観光だけでなく、地域との共創によって新しい都市のあり方を模索する試みともいえる。
今回は、10月2日に開催されたメインイベント「Colive Fukuoka Summit」の様子を取材した。

デジタルノマドが福岡に集結、Colive Fukuoka 2025が拓く共創都市の可能性

 

“旅する起業家”が集う、福岡発・共創型滞在プログラム「Colive Fukuoka」

福岡市は2021年から、ワーケーションを活用した都市型滞在促進策に取り組んでおり、その一環として全国の自治体初の取り組みである「Colive Fukuoka」を2023年10月に初開催。24の国・地域からインフルエンサー10名を含む49名が福岡に集結した。

「Colive Fukuoka」は、AI時代を生き抜く起業家や投資家、リモートワーカーらが福岡に一定期間滞在し、地域と関わりながらライフスタイルや働き方を模索する“共創型滞在プログラム”である。

翌2024年には、日本政府の「デジタルノマドビザ」導入も後押しとなり、同プログラムは観光にとどまらず、人材・起業家誘致の観点でも注目を集めるようになる。

そして3回目となる2025年は、「社会課題と向き合う未来志向の発信」と「地域ビジネスとの連携強化」をテーマに掲げ、より持続可能な都市滞在モデルの構築を目指している。本プログラムでは、デジタルノマドを「旅する起業家」と再定義しており、スタートアップ・カンファレンスのほか、地域のアート、文化、自然を体験できる多様なプログラムが展開されている。(※参加方法は、本サイトで無料登録の後、各種イベントの有料チケット、または3日間・10日間のバンドルチケットを購入する仕組み)

 

「次の拠点」へ、持続可能なシステムに向けたインフラ構築へ

本プログラムの運営・事務局は、初回からデジタルノマドなどに向けて事業開発・マーケティング支援を行う株式会社遊行が担当している。

同社代表取締役CEOの大瀬良亮氏は、「福岡が“次の拠点”に選ばれるよう、長期的に福岡に滞在する新しい持続可能なシステムを創り出す」ことがプログラムの目的だと語る。

運営・事務局を行う㈱遊行の大瀬良亮氏(右)と日本人デジタルノマドのAkina氏▲運営・事務局を行う㈱遊行の大瀬良亮氏(右)と日本人デジタルノマドのAkina氏

具体的には、「福岡市への新しい来訪動機となるインフラづくり」を目指し、福岡・九州ならではの観光コンテンツの提供に加え、滞在中にビジネスマッチングの機会を創出することで、デジタルノマドを中心とした来訪者の長期滞在を促す仕組みを構築する。

3年目の今年は、2024年より規模が拡大し、ビジネスマッチングと魅力ある観光コンテンツがバランスよく提供されているのを感じる。

 

Ikigaiが共感を呼んだメインセッション、福岡で交差した新しい価値観

オープニングのイベントである「Colive Fukuoka Summit」は、10月2日、3日に福岡市の住吉神社・能楽殿で開催。国内外から集うスピーカーがAI時代を生き抜くためのヒントや日本ならではの「Ikigai(生きがい)」をテーマに発信した。

取材した10月2日のプログラムで特に印象的だったのは、「Grandma Business」と題したトークセッションだった。これは福岡県うきは市を拠点に活動する「うきはの宝」によるもの。同企業は75歳以上の女性が「生きがい」や収入を得られる仕組みを構築しており、代表の大熊充氏と、共に働くおばあちゃんたちが登壇した。

実際に「おばあちゃんカフェ」で働く2人のおばあちゃんはそれぞれ、「誰かに頼られて、笑顔を見ることが生きがい。大変だけど、やった後の充実感は格別」「数十年前に起業したけど、そのころは今のような時代ではないから、世界を自由に行き来して働けるみなさん(デジタルノマド)が羨ましい」などと語った。

参加した多くのデジタルノマドはこれに感動し、拍手を送っていた。特に注目されたのは、「生きがい」という言葉が他国、地域では見られないという点だ。会場からのそうした声に、おばあちゃんたちが驚く一幕も。「生きがい」を図式化したチャートに深くうなずくデジタルノマドも多かった。

デジタルノマドが福岡に集結、Colive Fukuoka 2025が拓く共創都市の可能性

 

日本各地と世界から参加、広がるノマド・ネットワーク

会場にはスポンサーである台湾デジタルノマド協会をはじめ、デジタルノマド誘致を進める五島、下田、沖縄、下関、那智勝浦、白馬、金沢といった日本各地の地域や自治体がブースを設置し、積極的に情報発信を行っていた。

デジタルノマドが福岡に集結、Colive Fukuoka 2025が拓く共創都市の可能性

その中で、デジタルノマドを多く集めているタイ・チェンマイからは、副市長も参加し、チェンマイの「SANPAKOI WATKET」エリアをデジタルノマドにフレンドリーな地区としてプロモーションしていた。チェンマイといえば世界のデジタルノマドから人気の都市であるが、同エリアは観光地ではなく、ローカルの暮らしを体感できるエリアで、新たなコミュニティを築いている。

世界最大のデジタルノマドイベントを開催しているブルガリアのバンスコからは「居場所をどう作っていくか」の発表もあった。

福岡市や日本各地においても、拠点となるコミュニティと住環境が形成されているかが重要なポイントになるといえよう。

 

スタートアップ×デジタルノマドで生まれる新たな共創

続いて、10月6日〜9日には、「スタートアップ・グローバルなビジネス共創」と題して、複数のプログラムが実施された。九州最大級のスタートアップの祭典「RAMEN TECH」(10月5日~12日開催)と連携した地域のコワーキングをめぐるツアーや「RAMEN TECH -Global Summit-」内でのデジタルノマド起業家ピッチやデジタルノマド×スタートアップセッション。また、ライフスタイルに関するプログラム、茶道や書道など日本の精神文化を通じて「生きる力」や自己理解を深める「道(DO)体験」や福岡市近郊のエクスカーションが開催された。

 

“滞在のその先”へ、成果レポートにも注目

「Colive Fukuoka 2025」のメインウィークは10月10日で終了したが、1ヶ月ほど滞在する参加者も少なくないという。3年目を迎え、福岡はデジタルノマドにどのように受け止められているのか。その答えは、今後発表される成果レポートに期待したい。

デジタルノマドが福岡に集結、Colive Fukuoka 2025が拓く共創都市の可能性

 

▼2024年の開催レポートはこちら
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