モデル紹介
2023年5月に発売された「EQS SUV」は3列シートを備えて7人乗りとなるSUVタイプのBEVで、メルセデス・ベンツで初めてBEV専用プラットフォームを使ったSUVとなり、メルセデス・ベンツが長年培ってきたラグジュアリーと快適性を持ち、大人7人が快適に過ごせる質感の高い室内空間とSUVならではの使い勝手のよさを兼ね備えている。
プレミアムなBEVとして与えられた専用プラットフォームを活用する外観デザインは、エンジン搭載車とは大きく異なるキャブフォワードなスタイリングを基本として、機能性やエアロダイナミクスに対する厳しい要求を満たす「目的に沿ったデザイン」を実施。ゆったりとした面構成と継ぎ目の少なさ、そしてシームレスデザインによって「センシュアル ピュリティ(官能的純粋)」という革新的な思想を反映したものとなっている。
フロントマスクでは立体的なスリーポインテッドスターを装着し、左右のヘッドライトとディープブラックのフロントグリルを「ライトバンド」で結ぶ「ブラックパネル」グリルを標準装備。バックライト付きの光モジュールを備える表面構造を持ったブラックパネルは、外観上のデザインに加えて裏側に超音波センサーやカメラ、レーダーなどADAS(先進運転支援システム)で必要となるさまざまなセンサー類のカバーとしての機能性も発揮する。
サイドビューでは丸みを帯びたフロントエンドから立ち上がり、緩やかな傾斜を持つAピラーとルーフの輪郭を躍動的に流れ、リアスポイラーに至るダイナミックなシルエットが優れたエアロダイナミクスを備えていることを物語っている。ブラック塗装されたリアスポイラーは側面から見たときに車高を低く見せる効果も発揮して、Cピラーは後方に配置されて室内空間の広さを示している。
ドアウィンドウには立体的なクロームストリップを設定し、大径ホイールは筋肉を思わせるショルダー部と合わせてスポーティでたくましい印象を与えるデザインアクセントとなっている。純正装着するホイールはエアロダイナミクスの面でも高度な最適化が図られ、空力特性の効率向上に寄与している。
空力特性については意図的に乱流を生み出すタービュレーターやエアロフォルムのランニングボードといった装備を使い、細部にわたって最適化を追求。数多くの工夫を施したアンダーボディが中心的な役割を果たして優れたエアロダイナミクスを実現し、広い車内スペースを持つSUVボディながら、Cd値0.26という優れた空力性能を手に入れている。
「EQS 450 4MATIC SUV」のボディサイズは5130×2035×1725mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは3210mm。「EQS 580 4MATIC SUV Sports」は全長が5135mmとなる
インテリアでは同じくBEV専用プラットフォームを採用する「EQS セダン」と共通性の高いデザインを採用。一貫したデジタル化が図られ、「コックピットディスプレイ」「有機EL メディアディスプレイ」「有機EL フロントディスプレイ(助手席)」の高精細パネル3枚を1枚のガラスパネルで組み合わせ、ダッシュボード全体をワイドスクリーン化した「MBUX ハイパースクリーン」は象徴的なアイテムとなっている。
また、一方でダッシュボードの両サイドにはジェットエンジンのタービンを模したエアアウトレットを設置。複雑な形状を持つタービンブレードはエアコンから出る空気を効率よく配分する機能性を備え、高度な精密技巧とデジタル技術を駆使したMBUX ハイパースクリーンのコントラストを通じて、アナログとデジタルを共存させた豊かな遊び心を演出している。
先進的なデジタル技術では、車両前方の状況を撮影したカメラ映像をナビゲーション画面に表示して、カーナビで案内する右左折などのガイドをカメラ映像の道路上に矢印を重ねて表示する「MBUX ARナビゲーション」、フロントウィンドウの約10m先の景色にカーナビで案内する右左折などのガイドを矢印で重ねて表示する「ARヘッドアップディスプレイ」を標準装備。
それぞれ車両の進行方向が変わるとそれに合わせて矢印も動き、どの方向に進むべきかを常に分かりやすく案内し、カーナビの案内を確認する視線移動を大幅に削減。より直感的にどの方向に進むべきか判断できるようになり、疲労を軽減してリラックスした状態で運転できるようにする。
2列目シートは前後130mmの電動スライド機能を標準装備するほか、バックレストにも前方14度、後方4度の電動リクライニング機能を採用。また、3列目シートに乗車するために、2列目シートにイージーエントリーを標準装備している。
前方に倒したときはラゲッジスペースとフラットに連続する3列目シートも、シートヒーターやドリンクホルダーなどを備え、大人2人が快適に座って移動できるスペースとしている。
ラゲッジスペースは7席すべてを使用するフル乗車のシーンでも、3列目シート後方に195Lのスペースを用意。3列目シートを前方に倒した5人乗車状態では容量が645Lに広がり、2列目シートを前方にスライドさせて最大880Lまで無段階に拡張可能。さらに2列目シートを格納状態にすると最大2100Lまでラゲッジスペースを拡大できる。
「EQS セダン」でも採用する「MBUX ハイパースクリーン」を採用して先進性を強調
3列目シートでもシートヒーターやドリンクホルダーなどを備える
シートアレンジを活用して広大なラゲージスペースを作り出すことも可能となっている
EQS SUVでは電動パワートレーンの「eATS」を前後アクスルに搭載する2モータータイプの4WDを採用。トルクシフト機能によってフロントとリアのモーター間で駆動トルクの連続可変配分を行ない、常に効率的で最適化な前後駆動力配分を実施。定速走行時には最適化プロセスによって最も効率のよい4輪駆動配分を定め、特定の条件の下では1つのモーターを完全に停止してベース負荷が低減する制御も行なわれる。さらに不整地や滑りやすい路面を走るシーンで活躍する「オフロードモード」を標準装備する。
採用するモーターはフロントが「EM0030型」、リアが「EM0027型」となり、「EQS 450 4MATIC SUV」はシステム合計で最高出力265kW(360PS)、最大トルク800Nmを発生。「EQS 580 4MATIC SUV Sports」ではシステム合計で最高出力400kW(544PS)、最大トルク858Nmを発生する。
回生ブレーキではエネルギー回収率を可能な限り最大化して減速しつつ、タイヤのグリップに負担を掛けて走行安定性を損なうことがないようにする適切なトルク配分を実施。これにより、回生発電で得られる電力は最高290kWを実現し、高いエネルギー回収率によって航続距離をさらに延長する。
駆動用バッテリには容量118kWhのリチウムイオンバッテリを採用。アンダーボディの衝突に対して保護されたエリアに配置され、側面にあるアルミニウム押出成型材を使ったボディシェル構造内に組み込まれている。これらの組み合わせにより、WLTCモードの一充電走行距離として最大692kmを達成している。
電動パワートレーンの「eATS」を前後アクスルに搭載する2モータータイプの4WDを採用
一充電走行距離(WLTCモード)は最大692km
サスペンションはフロントが4リンク式、リアがマルチリンク式となり、連続可変ダンピングシステムの「ADS+」とエアサスペンションを組み合わせた「AIRMATIC」を標準装備。AIRMATICでは乗員や荷物の増減に関係なく地上高を一定に保つ「セルフレベリング機構」を備え、必要に応じて車高を変化もさせる。例えば「Comfort」モードと「Sports」モードでは、110km/h以上の高速走行時には車高を10mm、または15mm下げて空気抵抗を低減し、走行安定性を高める。また、60km/h以下で走行しているときはボタン操作で車高を25mm上げることも可能となっている。
足まわりではステアリング操作とブレーキ、サスペンションなどの車両ダイナミクスコントロールで統合制御を行ない、後輪を最大10度操舵する「リア・アクスルステアリング」も標準装備。これによって最小回転半径は5.1mとなり、ロングホイールベースのボディにコンパクトカー並みの扱いやすさを与え、一方で高速走行時には直進安定性を高める効果も発揮する。
このほか、パワートレーンやESP、サスペンション、ステアリングなどの特性をドライバーの好みに合わせて変更できる「ダイナミックセレクト」を採用。メディアディスプレイの下側にあるスイッチで切り替えるドライブモードの標準設定は「Comfort」となり、このほかに「Sports」「ECO」「Individual」「OFFROAD」の計5種類を用意する。
メルセデス・マイバッハブランド初のBEV「Mercedes-Maybach EQS SUV」
EQS SUVをベースとした「Mercedes-Maybach EQS SUV」は、メルセデス・マイバッハブランド初のBEVとして2024年8月に日本市場でリリース。ひと目でマイバッハモデルと分かるラグジュアリーさを強調した外観、3列目シートを廃して乗員の居住スペースを拡大したインテリアを備え、電動パワートレーンでは前後に搭載するモーターを変更してさらにゆとりある動力性能を手にしている。
外観デザインではフロントグリルをクロームメッキ加飾の縦桟を備えるブラックパネルに変更し、シンボルであるスリーポインテッドスターはボンネットマスコットとして装着。ホイールハウスにハイグロスブラック塗装の加飾を施し、ディッシュタイプの専用デザインとなる22インチアルミホイールを装着してSUVのパフォーマンスとエモーショナルな存在感を強調している。このほか、ルーフスポイラー、リアガラス下部、リアエプロンにクロームオーナメントが施されている。
ボディカラーは専用オプションの「ハイテックシルバー/ノーティックブルー」
インテリアではコーヒー豆の殻をなめし材の原料として使用し、なめしで使用される加脂剤も自然由来のものを採用してなめし加工したナッパレザーをシートやダッシュボード、ドアトリム、ルーフトリムなどの表皮として採用。さらになめしの副産物から環境にやさしいアップサイクル製品を作成するなどサステナビリティの推進に向けて取り組んでいる。このほかにも、フロアカーペットは漁網などのリサイクル繊維から得られた再生可能で高品質なナイロン糸で構成され、鋼材やアルミニウムもリユーススチールやリサイクルアルミニウムが使用されているなど多くの省資源材料を採用している。
また、専用オプションである「ファーストクラスパッケージ」(123万6000円高)を選択すると、ウッドトリムを用いたセンターコンソールがフロントシートから連続して左右の席をセパレート。独立したシートでより快適でくつろいだ時間を過ごせるようにする。センターコンソールには温度調整機能を持つカップホルダーと格納式テーブルを備え、センターアームレストヒーターも内蔵。センターコンソール後方のシートバック部分には専用のシャンパングラス収納部と脱着可能な大型クーリングボックスも用意して、贅沢なひとときを演出する。
Mercedes-Maybach EQS 680 SUVのインテリア。内装色は「バラオブラウン/エスプレッソブラウン」
専用オプション「ファーストクラスパッケージ」を選択した場合のインテリア。内装色は「クリスタルホワイト/シルバーグレー」
搭載するモーターはフロントが「EM0031型」、リアが「EM0028型」にそれぞれ変更され、システム出力は最高出力484kW(658PS)、最大トルク955Nmに強化。EQS SUVと同じ容量118kWhの駆動用バッテリを搭載して、一充電走行距離(WLTCモード)は640kmとなる。
また、走行特性を変更する「ダイナミックセレクト」では標準設定の「Comfort」を専用開発となる「MAYBACH」に変更。リアシートの乗員により快適な乗り心地を提供することを目的とした再設定が行なわれている。
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