ロシア国内で、ガソリン不足が深刻化している。9月までに激化したウクライナのドローン攻撃により、国内38カ所の製油所のうち少なくとも16カ所が損傷。ガソリンの卸売価格は1月比で54%上昇した。暖房用の燃料が欠かせない冬が迫る中、ロシア国民は侵攻の影響を肌で感じている――。


タジキスタンCIS国家元首評議会

写真=SPUTNIK/時事通信フォト

2025年10月10日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、タジキスタンのドゥシャンベへの国賓訪問に続く記者会見で発言する。



「並んでも買えない」ロシアの深刻なガソリン不足

ウクライナによるロシアの石油施設への攻撃が、8月から9月にかけて前例のない規模で行われている。


英BBCによると、8月だけで14カ所、9月も8カ所の製油所が攻撃された。今年1月以降の通算では、ロシア国内にある大規模製油所38カ所のうち21カ所が攻撃を受けており、攻撃に成功した回数は2024年全体をすでに48%上回っている。


ガソリン不足により、ロシア各地で市民生活に打撃が生じている。英ガーディアン紙によると、極東部の都市ダリネゴルスクでは、給油待ちの長い車列が発生。取材に応じた男性は、「何時間も待っているけれど、車に給油できるかどうかなんて誰にも分からない」とこぼす。


BBCは極東地域だけでなく、西部サンクトペテルブルクからモスクワに至る高速道路などにおいても、給油所に長い列ができていると報じた。ロシア占領下のクリミアでは当局がガソリンの配給制を導入しているほか、シベリアの独立系給油所のオーナーたちは、燃料が届かないため店を閉めるしかなかった、と語る。


英テレグラフ紙は、多くの地域で1回につき10~20Lの給油制限が発動していると報道。一部の地域では、もはやディーゼル燃料しか残っていない状況だという。


ガソリン価格は54~70%上昇

価格の高騰も止まらない。ガーディアン紙によれば、ロシアで最も一般的に使われているA-95ガソリン(オクタン価95)の卸売価格は先週、1トン当たり約8万2300ルーブル(約14万7000円)で史上最高値を更新。1月と比べて約54%も値上がりした。


モスクワ・タイムズ紙は、パニック買いを抑えるための措置が導入され始めていると伝えている。一部の給油所において携行缶への給油が禁止となったほか、割安なプリペイド式の給油カードは使用を受け付けていない。


米フォーブス誌は、一部地域で1ガロン換算で4.52ドル(1リットル当たり約176円に相当)まで跳ね上がったと報じている。産油国でありながら、日本並みの価格設定だ。9月初旬に公示された平均価格が1ガロン当たり2.66ドルだったことを踏まえると、およそ70%の高騰となる。


モスクワから東へ440キロほど離れたニジニ・ノヴゴロド地域では、燃料不足のためスクールバスが子供たちの送迎を行えない事態に。にもかかわらず地域当局は、混乱など起きていないと主張している。


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