フランス銀行本部

 フランス銀行(Banque de France)は1800年、ナポレオン・ボナパルトによって創設されました。フランスの中央銀行であり、欧州中央銀行の一員として、欧州中央銀行制度が決めるユーロ圏全体の政策実施機関の役割を担っています。

 パリ1区にある本部の内部を見学できる日はとても限られていますが、毎年9月にある、ヨーロッパ文化遺産の日はその貴重な機会です。建物は、かつてのトゥールーズ邸として知られる歴史的な邸宅で、1808年にフランス銀行がこの邸宅を買収しました。

 フランス銀行の使命や業務についての説明を聞いたり、本物の金塊、会議室などを見たりしましたが、ハイライトは「黄金のギャラリー」です。金箔がふんだんに使われ、ヴェルサイユ宮殿の「鏡の間」にも匹敵する豪華さです。

金塊会議室中庭黄金のギャラリー

 展示で一番興味深かったのは、ドイツ軍のフランス侵攻が迫るなか、1939年から1940年にかけて、フランス銀行が国内外に金の大規模移動をしたという話です。約2400~2700トンもの金を安全な場所に移しましたが、このうち行方不明と海への水没は1%くらいということで、ほとんどが戻って来たことになります。戦後の経済復興において、この金が重要な役割を果たしました。

金塊移動の様子世界中に移動された金塊のマップ1939年、ニューヨークに保管された金塊

 本部の地下深くに金庫室があります。実際に見ることはできませんでしたが、建物の地下8階相当の深さに位置し、厳重かつ多層の防護を備えています。ここに2025年前半時点で世界4位、フランスの約2500トンの金のうち、およそ90%が保管されていると言われています。

地下深くにある金庫室の写真

 フランス銀行に関連した施設として行ったのが、パリ17区にあるCitéco(Cité de l’ Économie、経済博物館の意)。フランス銀行の主導で創設された博物館です。経済の仕組み、金融の役割、通貨の歴史などを学べるようになっています。

CitécoCitécoの模型

 博物館が入っている建物ガイヤール邸は19世紀に銀行家の依頼で作られ、かつてはフランス銀行の支店でした。現在までオリジナルの状態をできるだけ残しており、ホールの壮麗な大階段、繊細な装飾が施された木製の天井、ステンドグラス、あちこちにある浮彫細工など、豪奢な邸宅を見るだけでも行く価値があります。

 展示は「交換」「プレーヤー」「市場」「不安定性」「規制」「通貨」という6つのテーマに沿って構成されています。インタラクティブ展示をふんだんに取り入れているので、見るだけでなく参加することで、経済・金融の基本概念から応用、現在の課題までを、順を追って分かりやすく解説しています。

昔の金庫室。この扉の厚さ!硬貨と紙幣を作った機械国内外のさまざまな通貨・紙幣とその代わりになったものハイパーインフレ時に発行された100兆ジンバブエドル

 私にとって経済・金融は関心のない分野なのですが、大事なことなのは確か。美しい建物を愛でながら、基本の基本を多少なりとも理解できる機会となりました。

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