ブラジルのアマゾン熱帯雨林で発生した火災=2024年8月(AFP時事)ブラジルのアマゾン熱帯雨林で発生した火災=2024年8月(AFP時事)

 ブラジルのアマゾン地域ベレンで、11月10日から21日まで国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)が開催される。「パリ協定」採択から10年目の節目を迎え、地球温暖化対策に向けて「マイルストーン(節目)」となる会議だ。トランプ米大統領がパリ協定離脱を宣言、中国や欧州連合(EU)による主導権争いと途上国からの要求増大が予想される中で、ブラジルの舵(かじ)取りが注目されそうだ。(サンパウロ綾村 悟)

 南米9カ国にまたがり世界最大の熱帯雨林として知られるアマゾン熱帯雨林は、深刻な危機に直面している。アマゾン全体の6割を占めるブラジル側での森林火災は過去20年で最悪レベルに達し、火災による二酸化炭素の排出量が日本の年間排出量にも匹敵するほど膨張している。

 アマゾンの自然破壊は「空飛ぶ川」とも呼ばれる上空の水蒸気循環を乱し、干ばつをはじめとする気候変動を引き起こしている。森林破壊による気象への影響は、アマゾンに限らず世界各地で起こっている。

 COP30の主な目標は、温室効果ガスの排出削減などパリ協定の実施を加速し、世界の平均気温を産業革命前の1・5度上昇未満に抑えるという目標達成に向けた具体策を固めることだ。ブラジルは、テーマ別に日程を設け、エネルギー移行、森林保全、農業適応、都市インフラなど六つの軸で議論を進めようとしている。

 COP30に向けて各国は、新たに国別貢献を提出し、排出削減目標の達成に向けた方針を示そうとしている。資金面では、昨年のCOP29で合意した年間1兆3000億㌦の気候対策資金の達成が目標で、民間セクターの参加が期待される。

 ただし、課題は山積みだ。途上国は先進国に支援を求めながら負担軽減を主張。先進国間でも削減目標や途上国支援などの温度差は大きい。そうした中で、ブラジルは多国間協力の強化を掲げるが、米国のパリ協定からの離脱宣言が深い影を落としている。

 トランプ政権は今年1月に離脱を宣言、2026年1月に発効する。米国はCOP30にも公式参加せず、資金・技術提供は停止中だ。米国からの資金拠出停止に対して、アフリカ諸国など途上国は不信感を強めており、気候問題を中心とした外交は転換期を迎えている。

 COP30で存在感を強めようとしているのが、 新興・途上国「グローバルサウス」の代表として気候外交の主導権を握りたい中国とブラジルだ。

 中国は、世界最大の二酸化炭素排出国だが、60年までにカーボンニュートラルを目指すとしている。ただし、化石燃料依存が依然として強く、排出総量は増加傾向にあるのが現実だ。

 一方、世界規模で太陽光・風力ビジネスを拡大、再生可能エネルギー市場とその投資で世界的に大きなシェアを握っている。

 ただし、日本では、中国製太陽光パネル輸入がメガソーラー開発を過度に推し進め、森林や景観破壊を引き起こしている。中国依存とも取られかねない再生可能エネルギー事業が、日本や他の諸国でも土壌汚染や廃棄物問題を招いており、環境コストを伴う中国の再生可能エネルギービジネスの負の側面を浮き彫りにしている。

 また、気候対策資金においても、自らを途上国とした上で先進国による資金供与を求めており、途上国支援を中心にリーダーシップを発揮しようとしている。EU諸国は、科学的根拠に基づいた気候対策と資金面の透明性を優先することで中国と一線を引くと同時に、中国に対して石炭削減の明確な目標や資金供与も求めている。

 こうした中、主催国のブラジルは、ルラ政権下で森林破壊を31%削減した実績を「アマゾン保全モデル」として世界に提案、再生可能エネルギー拡大や、農業セクターを巻き込んだ持続可能な食料システムの提案に加え、企業・地方政府による排出目標設定を推進する目論見(もくろみ)だ。

 さらに、米国の公式参加がないCOP30で、途上国と先進国の橋渡し役を務めながら民間セクターを巻き込んだ多国間主義をいかに成功に導くか、ブラジルの舵取りが鍵となる。

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